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ソファーでうとうとしていた凪子の耳に、


『ピンポーン』


突然インターフォンの音が聞こえた。


時刻は午前一時近く。こんな時間に誰だろう?


凪子はゆっくりと起き上がる。

つけっぱなしのテレビからは、沖縄の地震速報が続いていた。

津波警報もまだ解除されていないようだ。


するともう一度インターフォンが鳴った。


(こんな時間に一体誰?)


凪子が注意深くインターフォンのディスプレイを覗いてみると、そこには信也が立っていた。


「えっ? 嘘っ!」


凪子はびっくりして、慌てて玄関へ行く。

そして鍵を開けると同時にすぐドアが開いた。


「信也っ? どうして?」


凪子が言い終わらないうちに信也は凪子を強く抱き締めた。

そして抱き締めながら言った。


「誤解はすぐに解かないとね」

「誤解?」


凪子はそう聞き返すと同時にその意味がわかった。


信也は一度身体を離すと、凪子の目を覗き込みながら話し始めた。


「ついうっかり鍵をかけ忘れてシャワーを浴びていたら、部屋にアシスタントの子が入って来て凪子の電話に勝手に出た。その後彼女は下着姿になりベッドに入って俺を待つ。何も知らずにバスルームから出た俺は彼女に抱いてと懇願される。しかし俺はそれを断りすぐに空港へ向かった。そして今ここだ。わかるな?」


その必死な様子を見て、凪子は思わずクスクスと笑った。


「誤解を解く為だけにわざわざ東京へ戻って来るなんて馬鹿じゃないの?」

「いや、俺は凪子を不安にさせたままにはしたくないんだ」


その言葉を聞き凪子の目頭が熱くなる。

そして今度は凪子の方から信也に抱き着いた。信也の首に手を回して信也の喉元に顔を押し付ける。

そして泣いている事を気付かれないように言った。


「ふーん…で、そのアシスタントはきっとあなたに夢中なのね。そんな人とあなたがこれからも同じ事務所で働くの? そんなの私耐えられない」


凪子は芝居じみた声で大袈裟に言った。しかしこれは決して芝居なんかではない。

もうあんな思いは懲り懲りだ。良輔の件で凪子はかなり辛い思いをしたからだ。


「それについては飛行機の中でよく考えたよ。ちょうど知り合いの事務所がアシスタントを探していてね…彼女にはそこへ移ってもらう。彼女の代わりは新たなスタッフを雇うよ。男限定でな」


信也の説明に凪子は心底ホッとした。

そして嬉しくて笑顔で顔を上げると、その唇を信也が奪った。


二人は熱い口づけを交わす。


その時テレビからアナウンサーの緊迫した声が響いて来たので、

二人は唇を離し、とりあえずリビングへ移動した。


信也はテレビに映し出された沖縄の様子をじっと見ている。

そこには、沖縄の繁華街のビルが倒壊した様子が映し出されていた。


「スタッフの人達は大丈夫なの?」

「東京に戻ってタクシーから電話をしたら繋がってね、泊まっている部屋が最上階だったからそのまま部屋で待機した方がいいと言われたそうだ。だから無事の確認はとれている」

「良かった。でも余震と津波が心配ね…」

「だな…ちょっとニュースを見せて貰ってもいいか?」

「うん…何か飲む?」

「コーヒーを貰おうかな」

「了解」


凪子はコーヒーの準備を始めた。


それから信也は、電話をかけたりパソコンを開いてメールを送ったりとしばらくバタバタしていた。


その時、ニュースで津波が到達したとの速報が流れた。

津波は最大で3メートル。

テレビ画面には、小さな漁港に津波が到達するライブカメラの映像が映っていた。

二人はしばらく息を呑んで成り行きを見守る。


3メートル級の津波が二度ほど押し寄せた後は、徐々に津波のサイズは小さくなりもう心配なさそうだ。

明け方近くの気象庁の記者会見では、今後津波の心配はないと発表され津波警報も解除された。


二人は漸くホッとした。


凪子はコーヒーを淹れ直してソファーの前のテーブルに置く。

信也はそれを美味しそうに一口飲んでから言った。


「凪子のスッピンを見たのは、あのファッションショーの時以来だな」

「あんまり見ないで…あの頃は若くてピチピチだったけれど今はかなり老けたわ」


「いや、あの頃と全然変わらないよ。綺麗だ」


信也はそう言って凪子をじっと見つめる。

思わず凪子の心臓が高鳴る。


信也は凪子を見つめたまま徐々に顔を近づけていく。

そしてそっと凪子に唇を重ねた。


「んっ……」


思わず凪子の声が漏れる。

始まりは優しかったけれど、徐々に激しいキスに変わる。


信也は一度唇を離すと聞いた。


「離婚は? ちゃんと離婚出来た? 電話はその報告だったんだろう?」


「うん、晴れて独身に戻りました」


凪子が笑顔で答えると信也も嬉しそうに微笑む。


「良かった…これで凪子を抱ける」


信也はそう言うと、凪子の唇を再び奪う。そしてソファーに凪子を押し倒した。


「ちょっ、ちょっと待って、まだ沖縄から連絡が来るかもしれないわよ」


「無事の確認は取れたから問題ない」


信也はキスをしながらテレビの電源を切った。その途端静寂に包まれる。

そして二人のリップ音だけが響き渡った。


「んっ…はぁっ…」


あまりにも激しい信也の情熱に、凪子はキスを受けとめるだけで精一杯だった。

激しいキスを受けながら凪子は思った。20代前半の頃、この光景を何度夢見ていた事か。


『この人にキスをされたらどんな感じ?』

『この人に抱かれたらどういう感覚?』


何度もそんな妄想をしていた。それが今現実となる。


凪子は閉じていた目をうっすらと開けてみる。

そこには、愛おしそうに凪子の唇を味わう信也の顔があった。


閉じている信也の目尻にはうっすらと皺があった。

その皺は二人を隔てた年月でもあり歴史でもあった。

そしてその皺は、若い頃にはなかった信也の新たな魅力だ。


(この人はいつから私の事を大切に思ってくれていたの?)


あの日病院へひまわりの花束を持って来てくれた時から?

そう思うと凪子の胸がキュンと疼いた。

そして今信也から受けている情熱に満ちたキスが、その信憑性を高めていた。


そんな信也の事が、凪子は愛おしくて仕方がなかった。

【ショートドラマ原作】マウントリベンジ

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