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ルイス王太子殿下の手紙は丁寧な言い回しで表現も美しく、字からも誠実なお人柄が感じられた。
手紙には私が自分の悩みに気がついてくれて嬉しかったことと、小説まで書いて自分を慰めようとしてくれていたことへのお礼が書いてあった。
「珠子様、兄上を主人公とした小説まで書いていたのですね」
これでは、ルイ王子に小説をプレゼントしていないのに兄ルイスに自作の小説を献上したことになってしまう。
それが事実だがルイ王子に恥ずかしい自作の小説をプレゼントする必要はない。
「ルイ王子との物語は、私があなたと現在進行形で紡いでいきたいと思っております。ルイス王太子殿下は話すと強制力により乱暴な口調ですが、書くときは大丈夫なのですね。フローラ様と筆談で交流してはいかがでしょうか?」
ルイ王子は私の想像を超える規格外の人だということが、先ほどの飛び込みで分かった。
私がルイ王子主人公で先ほどのシーンを描くなら、飛び込み展開にはさせない。
ルイ王子がイヤリングを投げようとした私の手首を掴み、驚いた私にキスをして愛を証明する展開にする。
突然、ルイ王子が私の頬にキスをしてきた。
ほっぺにチュッ、でもちょっと恥ずかしいというやつだ。
私が驚きのあまり手を頬にやり、彼をガン見するが彼は普通に微笑んでいるだけだ。
私は心の声を口に出すようなヘマは絶対にしない。
彼は心が読める可能性が出てきた。
ルイ王子は、またもやときめきを恐怖で包んで私に届けてくれた。
「フローラ様の前で、イザベラを求めるような言動をしてしまう可能性があります。シアン男爵令嬢とナイト子爵令息が無事婚約しました。彼らのように文通から初めてみてはいかがでしょうか。そして、兄上が本当の自分を取り戻したらお2人を引き合わせれば良いと思います」
ルイ王子がサラッと縁談をまとめたことを報告してきた。
結婚相談所の従業員が歩合制かどうかは知らないが、彼が転生すれば営業トップだろう。
それにしても「ほっぺにちゅう」がなかったかのように、ルイ王子は淡々と話している。
あれは、私の願望が見せた青春の幻影だったのだろうか。
「ルイス王太子殿下は完全にサクラではなく、結婚相談所の登録会員になりましたね。ルイ王子のアイディアで行きましょう。ルイ王子、流石です。愛しています。それから、明日から授業に出席してはどうでしょうか?7年以上にも及んでルイ王子が王太子殿下を支えてきたことで、欠席してもルイ王子は王太子殿下のことを思って欠席したと周囲は捉えルイ王子の評判が上がるばかりです。やはり、ルイ王子を次期国王にとの声がまたあがってきています。それと明日からは私とも普通に接触して大丈夫だと思います。一緒に授業に出席しましょう。今日から、私のことはイザベラとお呼びください。万が一、珠子様と私を呼んだのを周囲から聞かれてはまずいと思います」
ルイ王子が素敵すぎて私はまさに愛を語るカラクリ人形になっていた。
おそらくルイ王子を次期国王にという話が出てきてしまったのは、婚約者のイザベラがまともになってきたことも影響している。
完璧な王子様ルイ王子が隣にいたら、イザベラは嫉妬をかいやすくなる。
嫉妬によるイジメのような状況を私は解決できた試しがない。
しかし、今この世界には女子みんなが仲良くすることを目指し続けた珠子をモデルにしたフローラ様と珠子本人が入ったイザベラがいる。
1人の珠子が達成できなかったことも、2人の珠子なら実現できるはずだ。
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