TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する


ところが、ウォルはいつも趣味の良い色あわせの衣を着こなしている。


腰には金と玉の飾りが付いた、豪華な剣を差しているから、武人なのだろう……か。


しかし、体つきはとても華奢《きゃしゃ》で、上背《うわぜい》があることを除けば女のミヒとそう変わらない。


面差《おめざ》しも、傷一つ見られず、たたえる眼差しには雄々しさもない。


歳もミヒと近い気がする……。


「来月、お邪魔していいかな?しばらく、ミヒの側にいたいんだ」


言いながら、ウォルは身震いした。


まだまだ、朝は花冷えが厳しい。


来月、王は妃を迎える。そうなれば、しばらくジオンはここへ通うことはないだろう。


ウォルは、そう言っているのだ。


「心配しているの?私は、大丈夫よ」


「たぶん。でしょ?だから、側にいてあげる」


ジオンとは違う、まるで兄のような眼差しをミヒは感じた。


「おい、私のミヒを口説いているのは、どこのどいつだ?」


吉祥模様の桟《さん》が渡る、明かり障子を開けるジオンの姿。


「これはご機嫌よろしゅう」


「ウォル、ミヒを口説くとはどういう了見だ?」


「男なら、ミヒを見て口説かないはずがないでしょう?」


ふんと鼻であしらいながら、ジオンは頭を垂れるウォルを促した。


ウォルは、ジオンの美郎兵として、長年側に仕えていた。


このあたりでは、小姓と呼ぶようだが、ジオンが元々治めていた土地には、幼少の時より自分が育てあげた青年を、側に置く習慣があった。


王の威厳を際だたせる為の役目であるが、往々にして、情が加わり、王の寵妾となる運命をたどる。


もちろん、ウォルもジオンにすべてを捧げていた。それが、誉れであり、ウォル達にとっては、特に驚くことではない。


ただ、この地では、男色家と色眼鏡で見られるため、ウォルの素性は伏せられていた。


「すまない、ミヒ。ウォルにも朝餉の用意をしてやれないだろうか?」


ジオンの言葉に、ミヒは小さく頷いた。


わかっている。これは人払いだ。


侍女がちゃんと手配する。何も、ミヒが動く必要などなかった。


言われたままに部屋を出て、ミヒはつかつかと廊下を進んで行った。


歩む歩幅は、ミヒの胸のうちを表しているようだった。


向かいの棟を繋ぐ回廊の突き当たりを左へ曲がり、ミヒは引き戸の前で立ち止まる。


人払いにあった時、決まって逃げ込む部屋だ。

朱(あけ)の花びら

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

77

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚