TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

美宇はすぐに行動を始めた。

この一週間、いくつもの窯元のホームページを見て、スタッフ募集の有無を調べている。


北関東にはスタッフを募集している窯元が2~3件あったが、どれも魅力を感じなかった。

どうせ働くなら、自分の目指す作風を手掛ける窯元がいいと、美宇は思っていた。


(どうしよう……この調子じゃ、すぐに見つからないかも……)


一日も早く今の職場を辞めたいが、次の行き先が決まらないままでは辞められない。

失業保険をもらいながら探す方法もあるが、それでは決断を先延ばしにしてしまいそうだ。

とはいえ、このままのんびりしていると、圭と二人きりになる機会ができてしまうかもしれない。

今のところはうまく避けているが、できればこのまま逃げ切りたいと美宇は思っていた。


そのとき、テーブルの端から何かが落ちた。


(?)


美宇は不思議に思い、それを拾った。


(あ……あの女性の名刺……)


高校生の頃、ギャラリーでもらった名刺が机の上にあったことなど、すっかり忘れていた美宇は驚いた。


(そっか……この前作品展を見たとき、懐かしくて引き出しから出したんだった……)


この女性に電話して窯元を紹介してもらうのも一つの手だと思ったが、さすがにそれは図々しい気がして、美宇はためらっていた。

しかし次の瞬間、美宇はハッとひらめく。


(そうだ! この作家のホームページを見てみよう)


さっそく検索すると、すぐに彼のホームページが見つかった。

トップページには、作品展で見た陶器と同じ雰囲気の作品が並んでいた。


(間違いない、この人だ)


美宇はすぐに詳細を読み進めた。


青野朔也のプロフィール欄には『陶芸を始めて35年』とあるが、年齢の記載も写真もなかった。


(大学時代に陶芸を始めたとすれば、今は55歳くらい? お父さんと同じ世代かな?)


さらに読み進めると、これまでの受賞歴がずらりと並んでいた。

どれも一流陶芸家の登竜門とされるコンペばかりで、彼は最優秀賞を何度も受賞している。


(すごい……)


美宇は思わず感嘆の息を漏らし、さらに経歴を読み進めた。


彼が卒業したのは、日本で最も難関とされる国立の芸術大学で、大学院まで進んでいる。

その後、益子焼や織部焼など全国の窯元を渡り歩き、最終的に北海道に自らの窯を築いた。


(出身地に戻って築窯したのね)


そこで彼は、作品の特徴とも言える釉薬『オホーツクブルー』を生み出したようだ。


(北海道の土を使っているって書いてあるけど、どこの土なんだろう?)


美宇は、彼の技法にどんどん引き込まれる自分に気づいた。


(一人で運営している工房みたいだから、スタッフ募集なんてないだろうな……。あったとしても、すでにお弟子さんが何人もいそうだし……)


そう思いながらホームページの目次を見ていると、『スタッフ募集』の欄があることに気づいた。


(えっ? あるの?)


美宇は興奮しながら、すぐにクリックした。

すると、こう書かれていた。


『急募! アシスタント兼陶芸教室の講師を募集しています。斜里町に住める方限定』


(本当に募集してる……)


信じられない気持ちで、美宇はその文字をもう一度なぞった。

青野朔也がスタッフを募集しているのは、間違いなさそうだ。


その瞬間、美宇は運命を感じた。


高鳴る鼓動を抑えながら、すぐに応募欄を開き、必要事項をすべて記入する。

書き終えると、内容を丁寧に確認し、祈るような気持ちで送信ボタンを押した。


(お願いします……どうか採用されますように!)


美宇は心の中で強く願った。



翌日、仕事を終えた美宇は、スクールの出口へ向かった。

ふと前を見ると、圭が立っていた。誰かを待っているようだ。


(え? もしかして、私?)


そう思った美宇は、慌てて踵を返した。ちょうどそのとき、こちらへ向かってきた麻友とぶつかる。


「美宇、どうしたの?」

「出口に沢渡先生がいるの」

「えっ、嘘!」

「だから、裏口から出ようと思って」

「う、うん……じゃあ、私も一緒に行くよ」


麻友は出口をちらりと見ながら、美宇の後を追った。


外に出ると、美宇は「ふーっ」とため息をついた。


「で、その後どうなったの? パーティーの日に家に押しかけてきてから、何かあった?」

「ううん、避けてるからセーフ」

「そっか……でも、ずっとこのままっていうわけにもいかないよね」

「うん。だから、転職しようと思ってる」

「嘘! 本当に? あんな奴のせいで辞めるなんて、もったいないよ」

「それはそうなんだけど、実は前から少し考えてたんだ」

「考えてたって、何を?」

「もう一度、一から陶芸と向き合いたいなって……」

「えっ、そうだったんだ」

「うん」


そこで麻友が立ち止まり、美宇に向かって言った。


「歩きながら話すのもなんだし、ご飯食べながら話そう」

「うん、そうだね」

「じゃあ、いつものとこでいい?」

「うん」


そう言って、二人は駅の反対側にあるイタリアンのファミリーレストランへ向かった。

オホーツクブルーの恋風

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1,333

コメント

77

ユーザー

スタッフ募集中だなんてチャンス到来。新天地で再スタートに相応しいよねー北海道は🫶🏻

ユーザー

スタッフ募集!これはもう運命✨オホーツクブルーが呼んでる🩵採用されますよーに🙏 陶芸始めて35年、55歳くらいのオジサン??朔也さんどんな人なのか気になるー🤩

ユーザー

どうか採用されますように🙏 新天地で自分の可能性と幸せを掴もう!!✈️💙

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚