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13 - 第11話 善意の旗

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2025年09月10日

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第11話 善意の旗




配信


「こんばんは〜、“はごろもまごころ”です!」


画面に登場したまひろは、今日は黄色いトレーナーにカーキ色のハーフパンツ。首元から小さなキーホルダーをぶら下げ、まだ幼さの残る小柄な体をカメラに向けて座っていた。前髪はつやつやのぱっつん、瞳は無垢に光っている。


隣のミウは、ブラウスにグレーのロングカーディガン、淡いピンクのスカート。髪はふんわり巻いて肩にかかり、耳には小さな雫形のイヤリング。落ち着いた微笑みで画面を見守っていた。


まひろが袖をいじりながら、少し困ったように言う。

「ねぇミウおねえちゃん。あるユーチューバーさんが、良いことのために活動してるって人気なんだけど……ぼく、ちょっと心配になっちゃった」


コメント欄に「知ってる!」「あの人正義感あるよね」と書き込みが流れる。


「だって……善意って言うけど、人によっては“排除されてる”って感じる人もいるんじゃないかなぁって」





疑惑の芽生え


ミウが頬に手を当て、ふんわりと首をかしげる。

「え〜♡ いいことをしてるはずなのに、誰かを苦しめてたらちょっと悲しいよねぇ。

旗を振るのは素敵だけどぉ……もしかしたら、その旗で誰かを叩いちゃってるかも?」


まひろは小さくうなずき、無垢な声で続ける。

「ぼくはただ、“ほんとにみんなが幸せになれるのかな”って考えてほしいだけなんだ」


コメント欄には「確かに正しさって怖いときある」「いや、あの人は正しい!」と意見が割れた。





レイNews記事化


翌日、「レイNews」には記事が並んだ。


  1. 社会運動系ユーチューバーA氏 “善意”の活動に賛否



  1. SNSで拡散『正義の裏で排除された人々』



  1. 専門家コメント「正しさの強要は分断を生む」



  1. 過去の発言を検証 “味方じゃないなら敵”の真意



  1. 支持者の中にも動揺「方向性が見えない」




記事は一見冷静だが、ユーチューバーの言葉を切り取り、「善意=排除」という構図を強調していた。





群衆の暴走


SNSでは「正義の暴走」という言葉が飛び交い始めた。

「助けられた人もいるけど、置いてけぼりにされた人もいる」

「味方にならなきゃ敵って考え方が怖い」


まとめサイトは「正義に疲れる人々」と見出しを打ち、ワイドショーは過去の演説映像をスローで流しながら「圧が強い」とコメント。


結果、支持者同士の衝突が始まり、コミュニティは分断。寄付金も急減し、活動基盤は揺らぎ始めた。





クライマックス


数日後、ユーチューバーA氏は「誰も排除するつもりはない」と動画で否定した。

だが、その言葉はまた切り取られ、翌朝の記事になった。


「排除を否定=やはり排除を意識していた?」





結末


夜の配信。

まひろは黄色いトレーナーの袖をつまみながら、無垢な瞳でカメラに向かって言う。

「ぼく……ただ“みんな幸せかな”って思っただけなのに」


ミウはやさしく微笑み、両手を胸の前で合わせる。

「え〜♡ でも、考えるきっかけになったんだから素敵だよね。

ほんとの正義って、やっぱり難しいんだもん♡」


コメント欄は「気づかせてくれてありがとう」「大事な学びだ」で溢れた。


その裏で、ミウのPCには“次に揺さぶる社会運動”のリストが表示されていた。

見出しはすでに用意され、ターゲットを待つだけだった。






無垢な問いとふんわり同意、その裏で“善意”は分断を生む刃へと変えられていた。

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