コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
俺は自分にそう言い聞かせながら、肉をしゃぶしゃぶする。
ゴマダレにくぐらせて口に入れる。
「美味いな」
「はい」
「椿はしゃぶしゃぶとすき焼きならどっちが好き?」
「甲乙つけがたいですね……」
レンズの奥がきらりと光る。
「鍋も比較対象に入れていいのかな」
「どうでしょう。しゃぶしゃぶもすき焼きも鍋の一種とも言えなくはないですが、やはりちょっと違うような気もします」
「しゃぶ鍋とも言うもんな」
「じゃあ、違うのはすき焼きですかね?」
「そうだな。すき焼きは煮ると言うよりはタレを絡めて焼く、だからな」
「そうですね……」
椿は少し難しい顔で灰汁が浮いた鍋を見つめる。
この会話から、彼女が社食のメニューにすき焼きを追加するのはひと月ほど経ってから。
二人でしゃぶしゃぶを堪能して、それぞれ風呂に入ってさあ寝ようかという時、椿は当然のように言った。
「では、おやすみなさい」
なんとなくわかってはいたが、もしかしたらという期待を込めて返事をした。
「……おやすみ」
そして、椿は当然のようにリビングを出て、自分の部屋に向かう。
「ちょっと待った」
「はい?」
「なんでそっち?」
「え?」
「一緒に寝ないの?」
「……」
ほう。
椿にしては珍しく、反応が早い。
いつもなら『明日も仕事ですし』とかあっさり言うだろうに、唇を噛んで俯いた。
これはもしかして?
俺の中のSっ気がムクムクと湧き上がる。
ついでに下半身も勃ち上がる。
俺は彼女に歩み寄り、頬に手を添えて顔を上げた。
「結婚を前提の恋人なのに、寝室が別?」
我ながらうまく甘い口調で言えた。
椿が俺の言葉に動揺しているのは一目瞭然。
眼鏡の奥の碧い瞳が揺れる。
「あ……明日も、仕事が――」
「――一人じゃ眠れないのは俺だけ?」
彼女の腰をグイッと抱き寄せ、否が応でも俺の興奮が伝わるように押し付ける。
じっと見つめる中、彼女の頬が赤く染まり、熱を持つ。瞳には涙の膜が張る。
ヤバい。
この反応、堪んない。
出会った時からそうだが、椿の反応は良くも悪くもいちいち俺を刺激する。
今は、性的にがっつり刺激を受けている。
「だ、男性の……身体的な、その、事情がよくわからないので、大まかにでもそう言った……行為が必要な頻度と言いますか――」
「――必要かどうかじゃなくて、素直な欲求で言えば、余程体調が悪くない限り、毎晩でもシたいんだけど?」
「まっ! 毎晩――!?」
手技口技がどうとか言っていた椿はどこへやら。
「椿にも事情があるだろうし、本気で毎晩とは思ってないけど、気持ちが通じて舞い上がってる今は、毎晩でもシたいのが本音」
「ひょ、彪さんは、絶倫ですか!?」
必死の形相で聞く椿。
俺はその表情に、思わず笑ってしまう。
「まさか。並みだと思うけど? 毎晩、何度もは無理かな。ご希望があれば、二回はできるけど、三回となると経験がないからなぁ。試してみる?」
「無理です!」
両手で俺のスウェットの胸のとこをキュッと握り、涙目で見上げる椿に、ゴクッと喉が鳴る。風呂上がりで髪も身体もいい匂いがするし、緩く編んだ髪が色っぽい。
椿を動揺させる程度だった熱は、既にガッチガチに膨れ上がっていた。
頬に添えた手で彼女の眼鏡を外す。
「一回にしとくから」
そう言って顔を寄せると、彼女が目を閉じた。
俺のキスを受け入れてくれる自然な動きに、嬉しくなる。
チュッと口づけて、離す。
彼女もパッと目を開ける。
「シない日も一緒に寝よう」
「は……い」
もうっ、ホンット、可愛すぎ!
力いっぱい抱き締めて、息もつけないほど激しいキスをした。
風呂上がりなのに、汗をかいた。
愛しい女の隅々まで口づけ、舐め回し、撫で回した。
「ひょ……さ――」
シーツまで蜜が滴るほど感じさせた。
感じすぎてじっとしていられず、身を捩る椿を組み敷き、さらに追い詰める。
「だめぇ……」
顔の横でシーツを握り、快感に耐える彼女は、思考回路がショートしたらしく、いつまなら絶対に聞けない甘い声で俺を呼ぶ。
「彪……さ――」
「――彪、って呼んで?」
「んっ。あ――んっ」
「椿」
「ひょ……お……」
「椿」
「彪……」
腰を打ちつけるたびに激しく揺れる両胸に顔を埋め、果てた。
目が覚めて、椿は俺を「彪さん」と呼んだが、俺は返事をしなかった。
今にも泣きだしそうな困った表情で「彪」と呼ばれた時には、会社を休んで抱き潰してやろうかと思うほど嬉しかった。