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そして私はリンヤン語を勉強し始め、あっという間に冬になった。
私は、あることに悩んでいた。
彼の誕生日が二週間後に迫っているのだが、そのプレゼントを何にしようかということだった。
一昨年は羽ペン、去年はハンカチを渡した。
今年はどうしよう。
前世で誕生日プレゼントを渡したことがなかったから、私はこういうのが非常に苦手である。
私は髪を櫛で梳いてくれているリエルに話しかけた。
「ねえリエル」
「はい、何でしょう?」
「男性へのプレゼントって何がいいのかしら?」
すると彼女は、うーん、と何か考えるような顔をする。
「でしたら、アスコットタイなどはいかがでしょう?」
アスコットタイか……。
でも彼がつけているところは見たことないな。
……待って。クロスタイなら彼がいつも身につけているじゃないか。魔搭で指定されている黒い外套の下に。
よし、クロスタイにしよう。
「ありがとう、リエル」
「いえ、参考になったなら良かったです」
彼女は微笑み、私の髪の毛を結ってくれる。
よし、善は急げだ。
明日にでも買いに行こう。
……と、決めたのはいいものの。
彼の好みがわからないことに、お店に着いてから気づいた。
現在、私の前には、いろいろな色のクロスタイが並んでいる。
赤、橙、黄、黄緑、緑、水色、青、紫、黒の九色である。
どうしよう。彼は何色が好きなのだろうか。
暖色は以前苦手だと言ってたから、寒色系がいいな。
緑はあまり似合わないし、水色は明るいし、紫もいいけどピンと来ないし、黒はいつも付けているし……。
青が一番無難だな。
でも、そのまま青だとシンプルすぎる……。何か柄を入れようかな。
私は女店主に話しかけた。
「あの。何か入れられる模様とかありますか?」
すると彼女は、掛けている眼鏡の縁をくいっと持ち上げた。
「はい、ありますよ。チェック、ボーダー、ドット、アラベスク、ハウンドトゥース、プレイドがあります」
と、彼女は、それぞれの柄が入った布地を並べてくれる。
一瞬悩んだが、個人的にピンと来る柄があった。
「じゃあ、このアラベスク柄の入った、青いクロスタイをください」
私は、アラベスク柄が入った布地を指差す。
すると彼女は、にっこりと笑った。
「承知いたしました。柄の刺繍糸の色はどうなさいますか?」
「黒でお願いいたします」
私は即答した。特に決めていた訳でもないけど。
「かしこまりました。一週間ほどお時間を頂きますが……」
「大丈夫です」
私は微笑む。
すると彼女も笑った。
「ありがとうございます。では、一週間後、お取りに来てくださいませ」
そして私はお金を払い、お店を後にした。