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それから二週間が経過した。
今日が彼の誕生日である。
あの買いに行った一週間後にちゃんと取りに行って、プレゼント用に包装して貰い、そのクロスタイはここにある。
よし、完璧だ。後は渡すだけ。
まずいな、緊張する。過去に二回やっているのに。
私が彼への想いを自覚したからだろうか。彼と会う度に想いが募ってしまう。
やっぱりだめだ。手汗も出てきた。
落ち着け。
私は一つ深呼吸をした。
すると、緊張が少し和らぐ。
大丈夫。私ならできる。
と、部屋の扉がコンコン、とノックされた。
「お嬢様。お客様です」
リエルが扉を開き、顔を覗かせて言う。
「わかったわ。お通しして」
承知いたしました、と彼女が顔を引っ込めると、彼が入ってきた。
「いらっしゃいませ、ルウィルク様」
「ああ」
彼は相変わらず無愛想に答える。
私は包装したクロスタイを手に取り、彼に差し出した。
「あの、今日お誕生日でしょう?これプレゼントです」
すると彼は目を見開き、そう言えばそうだったな、とぼそりと呟く。
彼は自分の誕生日を忘れていたらしい。
そのことに少し呆れながら、無事差し出せたことに安堵する。
「お誕生日おめでとうございます」
私は心からの笑みを浮かべた。
「……礼を言う」
彼は、プレゼントをどこか申しわけなさそうに受け取る。
「開けてもいいか?」
「はい、どうぞ」
すると彼は丁寧に包装を外し、中からクロスタイを出した。
彼は少し目を見開いて言う。
「これは……、クロスタイ?」
「はい。普段から使われているので、少しでもお役に立てば、と思いまして」
すると彼は、嬉しそうに顔をほころばせた。
その珍しい表情に、私の顔がだんだん熱くなる。
ああだめだめ。冷めろ。
「……ありがとう」
蚊の鳴くような、でもはっきりと聞こえたそれに、私の鼓動は速くなる。
ああだめだ。静まれ。
私は必死に笑顔をキープしながら言う。
「いえ、喜んで頂けたなら私も嬉しいです」
と言いながら、ふと感傷に浸る。
あの彼がもう十七歳なのか。来年はもう成人だ。時が経つのは早いな。
すっかり背も高くなって、顔も凛々しく……、って、なに赤くなってるの私。
だめだめ。彼が誕生日を迎えたことを祝わなくちゃ。
とにかく、大きくなったな。初めて会ったとき……、彼が九歳の時はあんなに小さかったのに。
あれからもう八年が経つんだな。なんて早い。
と、私は彼に話しかけた。
「こうしているのもなんですし、席にお着きくださいな。ちょうどおいしいハーブティーが入ったのです」
それから私たちは、穏やかな時間を過ごした。