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そして、結婚式当日を迎えた。
二人の挙式は、思い出深い鎌倉のホテルで執り行われる。
栞の誕生日に二人で泊まったあのホテルだ。
この日ホテルには、二人の親族や友人、職場の同僚たちが集まり、賑やかな雰囲気に包まれていた。
栞は、美しいブライダルメイクを施された後、直也からプレゼントされたウエディングドレスに身を包む。
純白のドレスのトップは上品なオフショルダーで、繊細なレースがふんだんに使われている。
ドレス部分は流れるようなAラインで、そのエレガントなデザインはスリムな栞にとてもよく似合っていた。
お腹はまだそれほど目立っていないので、サイズ的にも問題はなかった。
支度を終えた栞は、鏡の前でじっと自分を見つめていた。
このウエディングドレスを纏い、今日、直也の妻となる。
鏡に映る栞の顔は、幸福感に満ち溢れていた。
その時、愛花、綾香、瑠衣の三人が控室に姿を現した。
「「「栞、すっごく綺麗~!!!」」」
「みんな、今日は来てくれてありがとう!」
「素敵なホテルだね~! 海が近くて最高のロケーションじゃない!」
愛花が興奮気味に言うと、今度は綾香が言った。
「私も気合を入れておめかししてきたのよ~!」
「そうそう! 愛花の結婚式の時は歯科医ゲットならずだったから、今日は医者狙いで頑張るんだもんね~」
綾香に続いて、瑠衣がニヤニヤしながら言った。
すると、栞が口を開いた。
「そういえば、先生の同期が出会いを探してるんだって! 後で紹介しようか?」
「ぜひぜひお願いしまーす!」
「わかった!」
「キャーッ、やったね綾香!」
「うん、私、頑張る~!」
「ところで、瑠衣は来月いよいよアメリカだよね?」
「うん。会社は先月いっぱいで退職した~」
「そっかぁ、いよいよアメリカに行っちゃうんだ~、なんか寂しい~」
愛花がしみじみ言うと、瑠衣が笑顔で答えた。
「だったら、みんなでアメリカへ遊びにおいでよ!」
「それ、いいねぇ! 女子旅行っちゃう?」
「行く行く!」
「あ、航空券は栞に頼もう!」
「オッケー、任せて!」
「それより、栞は体調大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「まさか、赤ちゃんは栞が一番とはね……予想外だったわ!」
「ほんとほんと、先越された~!」
四人の会話は盛り上がっていたが、挙式の時間が近づいてきたので、三人は先にチャペルへ向かうことにした。
「じゃあ栞、後でね!」
「挙式、頑張って!」
「緊張して転ばないようにね!」
「うん、ありがとう」
三人は控室を後にした。
その後、再びノックの音が響いた。
「どうぞ」
栞が返事をすると、直也が入ってきた。
「わお! 栞、なんて綺麗なんだ! 僕はこんなにも美しい女性を奥さんにもらうのか?」
「プッ! 先生、ちょっとわざとらしい!」
栞はクスクスと笑いながら、新郎姿の直也を見つめる。
今日の直也は、まるで王子様のように素敵だった。
緩くウェーブのかかった髪は綺麗にセットされ、額にかかる前髪がなんともセクシーだ。
きちんと手入れされた髭は、ワイルドなのに清潔感があり、思わず栞はうっとりと見とれてしまう。
その時栞は、心の中でお腹にいる我が子にそっと呟く。
(ほら、あなたのパパは、こんなに素敵な人なのよ)
その瞬間、お腹の中で何かがピクッと動いたような気がした。
驚いた表情の栞を見て、直也が心配そうに聞いた。
「どうした? 大丈夫?」
「なんか今、お腹の赤ちゃんが動いたような気がする……」
「えっ? 大丈夫か? それって病院に行った方がいいんじゃ……」
慌てる直也を見て、栞は思わず微笑む。
「大丈夫よ。きっと家族三人で結婚式に出られるから喜んでいるのかも」
「いやいや、冗談じゃなくて、本当に大丈夫なの?」
「平気よ、心配ないわ」
「それならいいけど、もし少しでも体調が変だったらすぐに言えよ。子供の命が一番だからな!」
直也が真剣な表情で言ったので、栞は再びお腹の子にそっと呟いた。
(あなたのパパは、世界一超過保護なパパになるわよ!)
そして穏やかな笑みを漏らす。
挙式の時間が近付いてきたので、二人はスタッフと共にホテルのチャペルへ向かった。
チャペルの前に到着すると、直也は先に中へ入り、栞はその場で待機する。
そこへ、栞の父・剛がやってきた。
銀行の支店長まで経験した剛は、緊張とは無縁のはずなのに、今日はなんだかソワソワしている。
その様子がおかしくて、栞はつい笑いそうになる。
やがて、チャペルの中から荘厳なパイプオルガンの音色が響いてきた。
「それでは入場です」
「栞、リラックスしていこう」
「うん」
チャペルのドアが静かに開かれると、二人は並んでバージンロードを歩き始めた。
歩きながら、栞の脳裏には父との思い出が走馬灯のように流れる。溢れそうになる涙をこらえながら、栞は父の腕をギュッと掴んだ。
バージンロードの両側には、職場の同僚や友人たちが笑顔を浮かべ二人を見つめていた。
この日のために、たくさんの人たちがお祝いに駆け付けてくれた。
(この人たちに支えてもらったから、私はここまで来られたのね……)
そう思いながら、胸には感謝が溢れてくる。
栞は参列者たちに微笑みを返しながら、ゆっくりと前へ一歩ずつ進んでいった。
バージンロードの先では、直也が優しい瞳で栞を見守っている。
(私のことをずっと守ってくれた人……もう二度と離れない……)
そう誓うと、栞は笑みを浮かべ直也を見つめ返す。
新郎の前まで行くと、剛は娘を直也に託し、うんと頷いてから言った。
「娘をよろしく頼みます」
「お預かりします」
直也は栞の手を取り、二人並んで祭壇の前まで進んでいった。
そして、二人の挙式が始まった。
『Protect Love』とは、真の愛を守り抜き、愛しい人をいつまでも見守り続けること。
さらには、これから生まれてくる新しい命を守り、大切に育むことも意味している。
二人の長い愛の旅は、まだ始まったばかりだ……
<了>
本日、無事完結いたしました。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございましたm(__)m✨
尚、この物語のサイドストーリーに、『華子の初恋』があります。
意地悪な栞の元義理の姉・華子が、真実の愛にめぐり逢い、生まれ変わっていく姿を描いた作品です。
ご興味があるようでしたら、ぜひ読んでいただければ嬉しいです🎵 瑠璃マリコ
コメント
70件
最初に発表された時からずっと大好きな小説です♥ 先生との恋を周りに隠す状況で過ごした1年間の二人のハラハラはどんなだったのかな?とか、いつか番外編読めるといいなあ、と妄想炸裂😁✨✨ 直也先生の著作の名言に感銘を受けました☺️ 皆さまの深いコメントも楽しかったです😉 マリコ先生、皆さま、ありがとうございました♪
瑠璃マリコ先生💖 完結おめでとうございます🙌 そして、毎日幸せをありがとうございました🥹💗 華子ちゃんの物語へレッツゴーしてきまぁす😆💖💖💖
マリコ先生完結おめでとうございます♡続き気になると思いながら、次回作品もたのしみにしています😍綾香ちゃん、愛花ちゃん、瑠衣ちゃんに紹介するお医者様も気になるしー。赤ちゃんの性別や父と直也との関係とか妄想止まりません🤣🤣