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きた、きた!突然キタ! 初めての(* ˘ ³˘)ㄘゅ♡で年越しとは💞デスラーやるなぁ
おっ!やっと大輔さん行動にでたな!遅すぎるよ
🤭ハハハ 参ったな︎💕( ´艸`) 今日、ホントに参りました(*´艸`*)︎💕︎💕︎💕
マンションに戻った瑠璃子は部屋に入ると暖房を入れた。
熱い紅茶を入れ椅子に座るとホッと一息つく。そして椅子の上にあるバッグから今日大輔に買ってもらったスノードームを取り出した。
一度スノードームを逆さまにしてからテーブルの上に置く。するとたちまちスノードームの中が銀世界に輝く。
それを見つめなが瑠璃子は楽しかった今日一日を振り返る。
ふと思い出し胸元のネックレスに触れ首から外した。そして手のひらにあるネックレスをじっと見つめる。
偶然とはいえ誕生石であるアメシストをプレゼントされ瑠璃子は嬉しかった。『誕生石を身に着ける女性は幸せになれる』以前そんな話を聞いた事があるからだ。
瑠璃子は愛おし気にその宝石にそっと撫でた。
その時急にハッとして思い出す。そして瑠璃子は慌ててパソコンの電源を入れると『promessa』のエッセイを開いた。
その時瑠璃子はエッセイの謎が解けた。
大輔が記した『真冬のラベンダー』は、このネックレスの事だったのだ。大輔は札幌に行ったあの日、このネックレスを見つけてエッセイにしたのだ。
それに気付いた瑠璃子は胸の中に熱い思いが広がっていくのを感じていた。
瑠璃子はネックレスをギュッと握り締めると、
(このネックレスは一生大切にしよう)
そう心に誓った。
そして一夜が明けた。
いつものように大輔が迎えに来ると瑠璃子は元気よく車に乗り込み昨日のお礼を言った。
その時大輔の視線が瑠璃子の胸元に釘付けになる。それに気付いた瑠璃子は微笑みながら言った。
「あ、ネックレスですか? これ凄く気に入ったので毎日つけようと思って」
すると大輔は嬉しそうに頬を緩めた。
「なくさないようにね」
「つけっぱなしにするので大丈夫です。仕事中は制服の下に隠れちゃいますし」
「ならいいけど」
大輔は満足気に頷くと車をスタートさせた。
車が病院に到着すると瑠璃子は大輔に弁当を渡しながら言った。
「今日のお弁当はクリスマスメニューにしましたのでお楽しみにー!」
「ありがとう。楽しみにしてるよ」
そして二人はロッカールームの前で別れた。
大輔が医局に入ると早速長谷川が声をかける。
「大輔先生、クリスマスイブはどうでしたか? ちゃんとレディをエスコート出来たかな?」
そこで大輔にしては珍しく真面目な口調で言った。
「イブに休みをありがとうございました。お陰で昨日は楽しめました」
「それはそれは良かった、休みを独身組に譲った甲斐があるよ。で、どこに行ったんだ?」
長谷川が興味津々で聞いて来たので大輔は昨日瑠璃子と巡った場所を話し始めた。
藻岩山の夜景の話になると、長谷川は目を細めて懐かしそうにこう言う。
「僕も結婚前のクリスマスに妻を藻岩山へ連れて行ったよ、懐かしいなー」
それから二人はしばらくの間藻岩山の夜景やレストラン、そして大通り公園の話題で盛り上がった。
その日大輔は午前中から手術だったので、午後二時頃漸く医局へ戻り弁当を取り出す。
瑠璃子が作ったクリスマス弁当は赤と緑の可愛らしい容器に入っていた。
メニューも骨付きのチューリップ唐揚げにパエリア、かぼちゃのサラダに色とりどりの野菜、そしてデザートのフルーツもついている。
大輔はそのクリスマスらしいメニューを見て微笑むと美味しそうに食べ始めた。
そこへ玉木が書類を持ってやって来た。
「あら先生、今日はまた素敵なお弁当だこと」
玉木は大輔の弁当を見て笑顔で言う。そんな玉木に大輔は弁当を持ち上げてこう言った。
「玉木さん、メリークリスマス!」
玉木は一瞬目をぱちくりさせながら驚いた顔をしていたが、
「メリークリスマス!」
そう返事をすると声を出して笑いながら医局を後にした。廊下を歩く玉木は嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
クリスマスが終わると年末まではあっという間だった。
街中のクリスマスムードはガラリと一変し新年を迎える準備へと変わる。
しかし病院の職員達には正月休みなどないので院内の風景はいつもと変わらない。
大晦日、この日大輔と瑠璃子は同じ夜勤のシフトだったので午後から一緒に出勤する。
瑠璃子は今年最後の弁当を渡す際、大輔にこう言った。
「少し早いですがおせち風のお弁当にしてみましたー」
「へぇ、それは楽しみだな、ありがとう」
そして二人はロッカールームの前で別れ、今年最後の勤務を開始した。
病棟での夜勤は特に問題なく静かに過ぎていった。
瑠璃子と同僚二人はナースステーションで雑務をしながらのんびりとお喋りをしていた。話題はもっぱら親戚の子供へのお年玉の相場や初詣の話などこの時期ならではのものが多い。
三人で楽しく会話をしていると同僚の一人が小さな声で言った。
「デスラーが来たわよ」
瑠璃子が廊下を見ると大輔がこちらへ向かってくる。右手には袋を提げているようだ。
大輔は瑠璃子達の前に来ると言った。
「大晦日の夜勤お疲れ! これケーキなんだけど良かったら3人で食べて下さい」
大輔がカウンターにケーキの箱を置いたので、驚いた看護師三人は顔を見合わせる。
「「「ありがとうございまーす」」」
同僚二人が大輔に会釈をしたので瑠璃子もお辞儀をする。
すると大輔はうんと頷いてから医局へ戻って行った。
大輔がいなくなると同僚の一人が言った。
「デスラーが差し入れなんて、きっと明日は霰が降るわ」
「びっくりだよねぇ、でも嬉しい! ね、開けてみようよ」
箱を開けると中には美味しそうなケーキが6つ入っていた。どれも違う種類で美味しそうだ。
「キャーッ! 1人2つずつ!」
「あっ、あたしこれとこれっ!」
それから三人はそれぞれ好きなケーキを選んで美味しそうに食べ始めた。
その頃医局に戻った大輔は瑠璃子が作ってくれた弁当を開ける。
そこには煮物、酢の物、黒豆、そしてローストビーフなど美味しそうな料理が並んでいた。
それを見た大輔は穏やかに微笑むとテレビを見ながら食べ始める。瑠璃子が作った弁当はどれも美味しかった。
ケーキを食べ終えた瑠璃子は担当の病室へ夜の巡回に行った。異常がない事をチェックするとナースステーションへ戻る前にホールの上にある廊下を渡り備蓄庫へ行った。
補充用のガーゼの箱をいくつか手にすると備蓄庫を出た。ちょうどそこへ大輔が向こうから歩いて来た。
「先生、ケーキごちそうさまでした。とっても美味しくてみんな喜んでいましたよ」
「僕もさっき弁当をいただいたよ。おせち、どれも美味しかった」
「お口に合って良かったです」
瑠璃子は「じゃあまた」と言ってその場から立ち去ろうとした。
その時大輔が突然瑠璃子の腕を掴んで引き寄せる。その衝撃で瑠璃子は手にしていた箱を落としてしまった。
しかし大輔はそのまま瑠璃子を強く抱き締めると耳元でこう囁いた。
「あと一分我慢して」
そして大輔は瑠璃子の後頭部に手を添えると、瑠璃子の瞳を見つめながら顔を引き寄せて唇を重ねた。
(!)
瑠璃子は突然の事に衝撃を受けていた。しかし抗うことなくされるがままになっていた。
大輔の唇は瑠璃子の唇を味わい尽くすかのように情熱的に動めく。シーンと静まり返った廊下には二人のリップ音だけが響いていた。
大輔のキスはとても情熱に溢れていた。瑠璃子は今までこんな情熱的なキスは経験した事がなかったのでその勢いに飲み込まれそうになる。
大輔の甘美な唇の動きにすっかり翻弄された瑠璃子は、耐え切れず「ふぅ…ん」と熱い吐息を漏らしてしまう。その切ない吐息を聞き大輔の唇がさらに激しくなる。
(もうどうにかなりそう……)
クラクラしながら瑠璃子がそう思った時、病院の近くにある教会の鐘が一斉に鳴り響いた。
カラーンコローン カラーンコローン カラーンコローン
瑠璃子が大輔に抱き締められキスを受けている間に新しい年が訪れた。