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「こんにちは、塚森キミカちゃん」
「あっ……」
うちと目が合い、にこっとお姉さんが微笑む。
小さいけれど、まるで花が咲いたみたいな笑顔に思わずうちも表情を緩ませていた。
「今、学校から帰るところですか? いいなぁ、私、学校って小学校しか行ったことがないから制服って憧れ強くて……。あ、ごめんなさい。私、姫宮です。――覚えててくれてました?」
「は、はい。もちろん……」
首を何度も縦に振りながらうちは答える。
声は裏返っていた。
「姫宮アンナさん、ですよね? その節は大変お世話に――」
「わー、覚えててくれたー! 嬉しー!」
目をグルグルさせながらこれ以上ないテンプレな回答するうちとは対照的に、姫宮さんのテンションは高かった。明るく朗らかな笑顔でパチパチ手を叩いている。
……お世話になった人だし、好意を示してくれるのは嬉しいんだけど、成人女性にしてはちょっと天真爛漫過ぎるような気がする。
「あの、それで今日はうちに何か……?」
「あ、そうでしたね!私ったら一人ではしゃいじゃってごめんなさい」
ズイ、と顔を寄せ姫宮さんはうちの耳元でヒソヒソ囁きかけてくる。
まるで他の誰かに聞かれでもしたら一大事とでも言うように。
「――実はですね、今日はキミカちゃん是非見せてあげたいものがありまして。ここからそう遠くないところに私達、白虎機関の研究施設があるんですよ。ゼナ博士もいらっしゃいますし、私と一緒に行きましょう」
「……見せたいもの?」
「はい! ちょっとしたイベントと言いますか、セレモニーがありまして――。何が見れるかは着いてからのお楽しみ! です!」
何を言うてるんやろ、この人……?
ますます困惑して、うちは姫宮さんの顔を凝視してしまう。
相変わらず姫宮さんはニコニコしていた。とても綺麗で、年上の人に使うのも変だけど――可愛くて、無垢な笑顔だった。
「え、ええっと……。お誘いは嬉しいんやけど……」
言葉を選びながら言った。
「今日はうち、久しぶりの登校日やったから……早く帰っておいでって言われてて……」
「あ、大丈夫ですよ。お父様には私から連絡しました。終わったらちゃんとご自宅までお送りしますし。後で叱られたりしませんから」
お父さんにも通達済みってこと?
なんで、そこまで?
「あの、こんな事を言ったら失礼かもしれないんですけど――、初めてキミカちゃんと病院で会った時からすごくかわいい女の子だなぁって思ってたんですよね」
と、姫宮さんの手が伸びて二の腕をつかむ。
#異能
#伝奇
「だから、もしよければ私、キミカちゃんと仲良くしたいなあって」
その手つきは柔らかく優しかったけれど――、思いのほか、しっかりつかんでいて絶対に逃がさないという意思を感じさせた。
正直、気は進まないけど知らない人達じゃないし、何よりうちにとって命の恩人だし。あまり感じの悪いことはしたくない。
内心、ため息をつきながらうちは頷いていた。
「わかりました。そこまで言うてくれるんやったら――、行きます」