私は鏡を前に、身をくるりと一回転させた。
空色のドレスの裾がふわりと舞う。
よしよし、いい感じである。
私は振り返って、リエルに尋ねた。
「リエル、これで大丈夫かしら」
「ええ、大丈夫ですよ。お嬢様は今日もお美しゅうございます」
彼女は笑顔で頷く。
「あ、ありがとう」
私は照れながらお礼を述べた。
あれから少し日が経ち、暖かくなってきた頃、私は彼にお出かけに誘われた。たまには息抜きでもどうかと。しかも二人っきりである。
もちろん私は頷いた。断る訳がない。
そしてまさに今、そのお出かけの身支度をしているところだった。
今日の私は、比較的風通しのいいドレスを身にまとっている。いつもはリボンやフリルをたっぷりと使われたかわいいものだが、今日はそれらが少なく、チェック柄のドレスだ。色はさっきも述べたように晴れやかな空色。すっきりとした色だ。
と、リエルが私を玄関の方へ促す。
「さ、早く行きましょう。ルウィルク様がお待ちしていますよ」
「え、あっ、ちょっ」
まだ心の準備がっ……、なんて言う暇もなく私は彼女に背中を押され、外に出た。
そこには我が家の馬車と、珍しくループタイを締めた彼がいた。
私は彼に歩み寄り、一礼をとる。
「遅くなってごめんなさい、ルウィルク様」
「いや、大丈夫だ。早く行こう」
「は、はい」
彼に馬車の方に手を引かれながらリエルの方を振り返ると、彼女は手を振りながらぱちんっとウインクをした。
と、馬車の前に着き、私は前を向く。
すると彼は馬車の入り口の隣に立ち、私の前に手の平を差し出した。
「手を」
その瞬間、また顔が熱くなってきた。
そんなさりげなく紳士なところにもときめいてしまうのだから、本当に彼には敵わない。
そう思いながら、私は彼の手の上に自分の手を重ねる。
「ありがとうございます」
そう微笑み、私は馬車の中に入った。
彼も入り、入り口の扉を閉めてから、私の向かい側に座る。
そして、馬車が進み始めた。
リエルに見送られながら、私たちは出発した。
一時間後、どうやら目的地に着いたらしく、私たちは馬車を降りる。
その先に広がっていたのは、一面の花畑だった。
「わあ……」
思わず感嘆を漏らす私に、彼は口を開く。
「ここは王都のはずれだ。田舎だが、自然が豊かだろ?ここの花畑は、前の任務で偶然見つけた」
「そうだったのですね」
私は空気を吸い込み、吐いた。
空気がおいしい。
「少し歩こう」
と、彼の手の平が差し出される。
「はい」
私は彼の手に自分の手を重ね、彼の隣で歩き始めた。