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ハジメテではないと言っていたけれど、慣れていないことはすぐに分かった。
どこをどう触っても敏感に反応し、何を言っても何をしても恥ずかしがって顔を背け、声を堪える。
その姿がまた可愛いから堪らない。
「ん……っ」
長い黒髪がベッドに広がり、揺れる。
透き通るような白い肌が、火照り、色づく。
「気持ちいい?」
キスの合間に聞くと、椿は涙を浮かべて小さく頷いた。
押さえつけられていた胸もそうだが、大きめのTシャツや、作業服に隠れていた身体は、驚くほど魅惑的。
全身にキスをして、紅い花を散らす。
「椿……」
身体を起こして、彼女の両膝を曲げ、広げ、露わになった秘部に顔を寄せる。
湿ったソコに息を吹きかけると、椿の腰が浮いた。
「やっ――」
大きく口を開けて、食いつく。
「ひゃぁっ!」
悲鳴にも似た声が寝室に響いた。
ゆっくりと下から上へと舌を動かす。
「あ……あぁっ――!」
太腿が震え、腰が強張る。
何度も何度も舌を上下させ、時々吸い付いたりして、柔らかな蕾が色づいて膨らみ、尖っていくのを待つ。
「やっ、や――、あっ――!」
視線を上げると、椿は両手で顔の横のシーツを握り、蕩けた表情で喘いでいる。
こんな彼女を見た男がいる。
ふっとそう思うと、無性に苛立った。
俺にだって過去に女がいて、嫉妬されたってそれは変わらなくて。だから、俺が椿の過去に嫉妬したって、彼女も困るだけだし、そもそも嫉妬できる立場にもない。
ん?
セックスしたら……?
今度は焦りが生まれた。
その焦りを、不安をかき消すように、より激しく舌を動かし、強く吸い付くと、椿の腰が大きく跳ねた。
「ひゃあっ! んんっ――!!」
規則的に腰が緊縮し、達したのだとわかった。
口を離し、自分の唾液と彼女の愛液を指に絡ませて、ゆっくりと入口を撫でてほぐす。
大きく、小さく、強く、弱く。
それから、ゆっくり、ゆっくり、彼女の膣内に指を差し込んだ。
「いっ――」
え――――!?
椿の表情が歪み、それまでとは明らかに違う声色で呻く。
『いい』の『い』じゃないよな……?
久し振りだからではないかと、第二関節の少し手前で指を止め、胸への愛撫と同時に第一関節を曲げてみる。
せま……。
「う……っ」
すぐに指を抜き、椿の顔の位置まで上体を伸ばす。
「ごめん」
椿が首を振る。
「ハジメテ……ではないんだよな?」
椿が頷く。
「久し振り……だから……」
「どのくらい……?」
「……十年……くらい……」
十年!??
椿は明日で二十八歳になる。
明日――!?
ベッド横のチェストの上の時計をバシバシ叩き、ライトをつける。
零時三分。
「誕生日おめでとう!」
「え――?」
椿の瞳がまん丸に見開かれ、美しい碧が輝く。
「やった! 最初に言えた」
言ってから、驚いた。
おめでとうを最初に言えたことが、こんなに嬉しいなんて。
裸で、セックスの最中で、挿入まで辿り着けるかもわからない中途半端な状況での、おめでとう。
かなり格好がつかないことは自覚しているが、それでも、日付が変わったこの瞬間に言えたことが嬉しかった。
「おめでとう」
もう一度、冷静に言う。
椿の碧い瞳が見る見る間に輝きを増し、こぼれた。
「ありがとう……ございます」
無音の寝室で、彼女の涙がシーツに落ちる、ポタッという音が聞こえた。
なぜ、泣いているのか。
もう、酔いは醒めているのか。
この状況を後悔しているのか。
彼女の気持ちは何一つわからないけれど、後悔されているのなら嫌だなと思った。
「キス……していい?」
今更だ。
散々、めちゃくちゃ濃厚なのしたくせに。
だけど、今は、ちゃんと、椿の意思で受け入れて欲しかった。
そうでなければいけない気がした。
受け入れて欲しい……。
聞いた意味があったのか。
願望が見せた幻覚かもしれないとすら思えてしまうほど、俺は彼女を欲していた。
だから、頷いたように見えただけかもしれない。
けれど、そう見えてしまったら、止まれるはずなんてなくて。
「好きだよ、本当に」
椿の唇は、泣きたくなるほど温かかった。