テラーノベル
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舌先で唇をなめて、アキミチ君が口をつぐんだ。その顔には相も変わらず、ニヤニヤとした軽薄な笑みを貼り付かせながら。だけど、その目はちっとも笑ってなくて――。
そう感じた瞬間、ぞわり、と肌が泡立つのを覚えた。筋肉という筋肉が強張り、全身が石のように固まっていくのを感じながら、何とか視線をそらす。
教室は先ほどまでとは明らかに違う雰囲気が漂っていた。エアコンもないのにいつの間にか温度が冷たいものに一変している。それも心地よいものではなく、思わず身震いしてしまうような、突き刺すような冷たさだ。
カーテンの隙間から射し込む夕陽に照らしつけられ、教室の天井や隅の陰影はますます濃くなっていた。そのベッタリとしたグラデーションはどことなく、自分の耳を切り落としたという画家の描いたひまわりの油絵を彷彿とさせた。
あかん、これはガチであかんやつや。頭の中で警報がガンガンと鳴り響き始めるのをうちは感じていた。
「ええっとぉ、今のお話のオチなんだけど……」
声を発したのはユカリだった。申し訳なさそうにユカリは眉間に皺を寄せながら言う。
「この話を知った人のところに■■■■くんがやって来るって最後のオチ。これって聞いたら呪われる話だよね? ……あまり野暮なことは言いたくないけれど、聞き手を脅す系の話って学級新聞には載せられないんだよね。怪談として面白い、面白くない以前の問題として本当のことだと思って気に病んじゃう子もいるから」
違う。そう言うことやない。そう声をあげたかったができなかった。強烈な違和感と吐き気に喉の奥が詰まって。
「ふーん。最近は怪談にもコンプライアンスが求められるんだね」
「だから、その、申し訳ないんだけど、できれば他の話を……」
「他の話? おいおい、そりゃないだろ?」心外だというようにアキミチ君が肩をすくめる。「パンザマストの怪談はまだ、終わってないよ。むしろ、本番はここからなんだからさ。新聞に載せられないのは残念だけど、せめて最後まで堪能していってよ」
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