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翌朝はやはり雨が降っていた。

梅雨の名残りの弱い雨が降る中、優羽は流星を保育園へ送った後いつもの仕事を始める。

この日は少し早めに山荘を出る客が三組いたので、そのチェックアウトを終えてから売店にある土産物の発注を始める。

そこへパートの中山舞子が掃除機を手にしてフロントへやって来た。


「これから夏休みにかけて忙しくなるわね。でももうお仕事にはすっかり慣れたようでバッチリね」

「とりあえず全ての仕事は一通り経験したので、あとはいかにミスなくスムーズに出来るかかしら?」


優羽はそう答えた後舞子に聞いた。


「お母様の具合はいかがですか? 確かリウマチでしたよね」

「ええ。この前新しいお医者様に変わって薬を変えたの。その薬が今は良く効いているみたいでここ最近は楽そうでホッとして

るわ」

「それは良かった。痛みが少しでも取れれば楽になりますからね」


その時山荘のドアが開きカランコロンというベルの音が響いた。

二人が入口の方を振り返ると、そこには兄の裕樹が立っていた。


「お兄ちゃん! どうしたの? こんな朝から」

「仕事でこっちに来たついでに母さんからの預かり物を届けようと思ってさ。ほら、流星が欲しがっていた乗り物図鑑、本屋に

入ってたって」


裕樹は優羽に本が入った袋を渡す。


「流星が喜ぶわ。お母さんにありがとうって伝えてておいてね」


裕樹は笑顔で頷くと、横にいた舞子に気付きペコリとお辞儀をする。


「あ、こちらは仕事仲間の中山舞子さん。私がここに来た時からいつも親切にしてくれているのよ」


優羽が舞子を紹介すると、裕樹はも自己紹介をする。


「あ、優羽の兄の裕樹です。いつも妹がお世話になっております」


裕樹はお辞儀をする。すると舞子も、


「いえこちらこそ、優羽さんにはいつも仲良くしてもらっています」」


そう言いながら、急に何かを思い出したように「あっ!」と叫んだ。

そして裕樹に聞いた。


「もしかしてお兄様は市役所にお勤めですか? 私、前に介護相談で役所に行った時、確か対応していただいたような…」

「あっ、あの時の!」


裕樹も思い出したようだった。


「確か家の中に手すりを設置するご相談でしたよね?」

「はい、その節はありがとうございました。今、母はあの手すりのお陰で家の中でだいぶ動けるようになりました」


舞子は笑顔で礼を言う。すると裕樹も嬉しそうに言った。


「いやーお役に立てて良かったですよ。また何かありましたら、いつでもご相談下さい」

「ありがとうございます」


そこで二人を見ていた優羽が言う。


「なんだ、二人とも知り合いだったのね。そう言えばお兄ちゃん前は介護の部署にいたんだよね」

「そうなの。母の事を相談しに行ったらお兄様がすごく親切にアドバイスをして下さったので助かったの」

「お兄ちゃんも、仕事はちゃんとやっているんだ」

「お前なぁ、俺が仕事をサボってばかりいると思っていたんだろう? ひどいよなぁ」


と裕樹がいじけたように言ったので、優羽と舞子が笑う。


「せっかくだからコーヒーを一杯飲んで行こうかな」


兄の言葉に優羽はからかうように言った。


「ほら、早速サボってる」

「いや、これはサボりではなくてお前の給料に貢献してやろうと思っているだけだ」

「コーヒー一杯くらいじゃ、売り上げにあまり効果はありません!」


そう優羽がきっぱり言うと、横から舞子の笑い声が響く。

二人は思わず舞子を見た。


「いえ、兄弟仲がいいなーって思って。私は一人っ子だから羨ましいです」


舞子がそう言うと、優羽が、


「こんな兄ならいつでもお貸ししますから、どうぞ!」


と言ったので、舞子はまた声を出して笑った。

しばらくフロントには三人の楽しそうな笑い声が響いていた。



午前十時少し前に、出版社の前田と朝倉がフロントへとやって来た。

二人とも荷物まとめている。今日チェックアウトするようだ。


優羽がチェックアウトの手続きをしていると、岳大とアシスタントの井上が部屋から出て来た。

そして前田と朝倉に何やら話しかけている。


「じゃあ佐伯君頼んだよ。いい写真を期待しているよ!」


前田は笑顔で岳大に言った。


「わかりました。ご期待に沿えるように頑張ります」


岳大も笑顔で返す。そして二人の乗った車が駐車場を出て行くのを見送った。


その後、岳大と井上がカフェへ移動したので、優羽は慌ててカフェへ向かった。

二人にお冷を入れて窓際のテーブル席まで行くと、岳大が、


「コーヒーを二つお願いします」


と言ったので、優羽はかしこまりましたと言ってカウンターへ戻った。

コーヒーの準備をしながら二人を見ると、井上がノートパソコンを開いて打ち合わせをしているようだ。


今夜から岳大は撮影のため山に入ると言っていた。

アシスタントの井上を伴っていよいよ本格的な撮影が始まるのだろう。

山荘へは明後日戻ってくる予定となっている。


その日の午後、岳大と井上は大きなリュックと機材を背負って立山へ向かった。


雨上がりの空は、雲一つなくすっきりと澄み切っていた。

雨のお陰で空の塵もすっかりなくなり、今夜はきっと満天の星空が見られるだろう。

きっと良い写真が撮れるに違いない。

優羽はそんな事を思いながら、山荘の玄関から二人が乗った車をそっと見送った。

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