「ねぇサクラ。」
「自分が居なくなったら川の上流に向かって走ってね。」
「もう気づいてると思うけど、川を見ても魚になんてならない。
ただ…ちょっと怖いかも… 」
「…サクラ、生きて。それで」「嫌だ」
ソメイが2人と同じ様な事言うから思わず言ってしまった「嫌だ」の一言。
ソメイも消えちゃうと言う苦しさと
元の場所に戻りたくない。
そんな黒く濁った感情に心が覆われて顔を下に向けた。
そんな私に泣きたくなるほど優しい声色で
「どうして?」
と聞いてきたソメイに、ここに来る前の私の事をゆっくりと話し出した。
私は元々同い年の子よりも物事を覚える事が苦手だった。
その事が分かったのは私に物心が付く少し前、3歳頃だった。
どうやら私は人よりも歩き出すのも声を出すのも遅かったらしい。
それに気づいた両親は酷く悲しみに溺れた。
一時期は祖父母に私を預けてた頃もあったほどに。
そして物心が付き始めた4歳頃には厳しい躾が始まった。
食事などの生活する中での最低限の物を覗いた1日中はずっと同じ言葉を繰り返し言ったり
言葉を書いたり
聞いたり
もし書き間違えたり、言うのをサボったりなんてしたら睡眠を削られ、更に部屋に閉じ込められ
「なんでこんな事も出来ないんだ!?」
と叱られ
「お前はなんにも出来ないバカなんだよ」
と罵られる。
今思い出すと本当に無茶苦茶な躾だった。
当時の私はただそんな両親が怖かった。
恐怖心で元々スラスラと言えない言葉が更に詰まっていた。
むしろ 母の日に頑張って描いたイラストをあげても
「 ありがとう」
なんて言ってはくれなかった。その時から気づいた事があった。
「(この、ひ、と…たち……は…ほ、ほめて、くれ……な、い…んだ……)」
この人達は褒めてくれない。
私は両親に期待する事をやめた。人に期待してはいけないのだと幼いながらに思った。
嫌な事からは自分から逃げなきゃ行けないのだと思った。
だから私は8歳の冬。凍えてしまう様な気温の夜の日。
信号を無視して、親の元に善意で戻そうとする警察官を無視して、ただがむしゃらに走った。
「それで、目が覚めたらここに居た。
さっきも言ったけど私はここに居る時はすごく楽しかったの。だからいや。
なんであんな場所に帰らなくちゃ…」
そこまで言うといつの間にか私の前に立っていたソメイが私の両頬に手を当ててコツンと優しくおでこ同士をぶつけた。
その途端ふわっと私を暖かいサクラの香りが包んだ。
「大丈夫。君はしあわせになれるよ。」
ソメイがそういうと何故かボロボロと大粒の涙が私の目から溢れてきてソメイはそっとおでこ同士を離し優しく微笑みかけると
ぶわぁっとソメイの体が何万枚の桜の花びらへと姿を変え上へと散って舞っていた。
「いや…やめて…」
そんな言葉も虚しく、止まる事も無くソメイの形を崩して行った。
「絶対会おう。だから…」
そんな言葉を最後にソメイの姿は全て桜の花びらに変わった。
座って居たブランコから立ち上がり崩れ落ちる様に覆いかぶさってもソメイの花びら1枚もその場に残る事は無かった。
「嫌だよッ!!なんでよッ!!」
と大粒の涙を零しながら叫んでも何も変わることなんてない。
その事実を知っておきながら幼稚園児の様にワンワンと泣き出した。
その日の夜はただただ私の泣き声だけがアマガイに響いた。
そして泣き疲れた私が見た夢はとても不思議な夢だった。
コメント
9件
だから喋り方拙かったんだ! うわ〜スッキリした〜 スッキリしたけど全然スッキリしてない(?)
タイトル回収が……まさかの形で今息できてないかも。 ソメイ…散っちゃったのか…… 2、3話一気見したけど伏線回収というか今までのいろいろな意味を理解出来て鳥肌えぐいっす。信号を無視して警察官を無視してっていう韻の踏み方?が結構いい。
すっげぇ…鳥肌立ったわ…… この先一体どうなっちゃうんでしょうか……