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つな大福
106
#ぐふふふふ
ミケイラ
80
《極楽市・未》は今日も買い物をする妖達で溢れ帰っていた。
様々な屋台が所狭しと並ぶ。
「なんだいアンタ等、《私市誰ソ彼》のこと調べてんのかい?」
果物屋の屋台を営む狸の妖怪が少年の顔をちらりと見る。
「そうなんだよ。僕達《私市誰ソ彼》の行方を追ってんだ。知ってることがあったら何か教えてくれないか?」
銀色の髪に金色の瞳をした少年が友好的に笑う。
少年の頭にピンと生えた1本のアホ毛が犬の尻尾のようにピョコピョコと動いている。
少年が狸の妖怪に名刺を渡す。
名刺には《首斬峠探偵事務所•首斬峠ゼゼ》と書かれていた。
「へぇ、あんた探偵なのかい?どうりでこんなクソ暑い日にオーバーサイズコートを羽織っているわけだ」
「そういうこと。このコートは探偵の誇りなのさ」
ゼゼが胸を張り、鼻をフンスと鳴らす。
「別に探偵だからって年がら年中コート着なくていいんじゃないの?」
ゼゼの隣の、黒いチャイナドレスを着た金髪碧眼の美少女がクールな目でゼゼを見る。
少女の腕はゼゼの腕をしっかりと腕組みしている。
「その子は探偵さんのガールフレンドかい?」
狸の妖怪がケラケラ笑うとシコタンがキッと狸を睨む。
「もしそう見えるのなら今すぐ眼科に行くことをおすすめするわ」
氷のような少女の視線に狸は思わず身震いした。
「この子は弘前シコタン。僕の頼れる相棒さ」
ゼゼが屈託のない笑みでそう紹介すると、シコタンはふんっとそっぽを向いた。
「ふぅん、ゼゼにシコタンねぇ。教えてやってもいいが、その前になんか買ってきなぁ」
屋台で果物を売っている狸の妖怪がゼゼ達に果物を見せる。
「じゃっ、そこのオレンジ色の果物くれよ大将。」
そう言ってゼゼが巾着袋から銀貨を取り出して渡す。
半妖探偵である彼の両手には骨しかなかった。
「あいよ。おまけしとくぜぇ。試しに食ってみな。」
狸の妖怪は果物ナイフでオレンジ色の果物の皮を剥いた後、ゼゼとシコタンに一切れずつ渡した。
「おう、あんがとな大将。………酸っぱ!? なんだこりゃ熟してねぇんじゃねぇか!!?」
ゼゼが思いっきり口をすぼめる。
「がっはっは‼そいつは最近流行りの果物、ラモンだ。飲み物にちょいと一搾りするとうんまいぞ~。」
「ふぅん、そういうもんなのかい。なぁ、シコタンも食ってみろよ!!」
「私はアンドロイドだから別に食事の必要はないのだけど………。」
文句を言いつつシコタンはおそるおそるラモンをひと舐めする。
「すっぱ!!」
シコタンも口をすぼめた。
「そんじゃ、誰ソ彼について知ってることを教えてくれよ大将。」
口をすぼめたままゼゼな狸の妖怪に尋ねる。
「おういいぜぇ。こいつは農民達から又聞きした噂なんだがなぁ………。」
狸の妖怪はゼゼに耳打しようとした時___。
ゼゼの銀髪のアホ毛がビビーンと立った。
「___事件だ」
際ほどまでの温厚そうな表情から一転、ゼゼは真剣な顔付きになってシコタンの方を向く。
「シコタン」
「分かってる」
「悪い大将、また後で話を聞かせてくれ!!」
ゼゼ達が人混みを掻き分けて走り出す。
「おい、急にどうしたんだよ!?」
狸の妖怪はゼゼ達の背中を見て呆気に取られていた。
ゼゼ達の向かった先には路上でギターケースを持った女性がいた。
紫色のレオパード柄のシャツにティアドスカートを着たウルフカットの髪をした垂れ目が印象的だ。
彼女が道行く妖怪達にビラを配っている。
ビラを握る手が震えている。
何度も周囲を見回している。
(ライブの勧誘だろうか?それにしては様子がおかしい。)
「すみませーん。この子見かけませんでしたかー!!」
「どうされたんですか?」
ゼゼはビラを配る女性に話しかけた。
「実は、二日前から一緒にバンドやってる友達が行方不明で探しているんです。連絡しても全然出なくて………」
彼女が俯いたまま涙を流す。
「シコタン、どうやら僕らの出番みたいだ。」
「そうね、ゼゼ。」
「あなた達は?」
まぶたを擦りながら少女が二人の方を見る。
「僕は探偵のゼゼです。こっちは相棒のシコタン。」
「よろしく。」
シコタンがぺこりと頭を下げる。
シコタンの金髪が、柔らかな動作に合わせてさらりと揺れ、元の位置に静かに収まった。
「お友達の捜索、僕達も手伝いますよ。」
ゼゼが柔和な笑みを浮かべた。
◆◇◆
ゼゼはろくろ首の女性ロクから彼女の友人ニロが行方不明になった当時の状況について説明してもらうことにした。
「最後にニロさんと会ったのはいつですか?」
「最後に会ったのは三日前の夜、夕方のライブが終わってバンドメンバーと焼き肉屋さんに打ち上げに行った時のことです。」
「夜九時半に、バンドメンバーの皆と解散しました」
「翌日、私の方にニロちゃんのお母さんからニロちゃんから連絡があったんです」
「『ニロちゃんが帰ってこないんだけどなにか知らないか?』って」
「それで、誰かに攫われたんじゃないかって話になって獄卒衆の方に連絡したんです。ニロちゃんの行きそうなところを皆で探しました。でも___」
ロクがギターケースを開け、何かを取り出す。
「どれだけ探しても、このニロちゃんの持ってたベースのピックしか見つからなくて………。もしかしたら悪い妖に捕まってるのかも……」
「こんなことになるなら、あの時私が一緒に帰ってあげればよかった……」
ロクがぽろぽろと泣き出す。
彼女の話を聞いていたゼゼがベースピックをじっと見つめる。
「すいません、そのピックちょっとお借りしてもいいですか?」
「え?」
きょとんとした顔でロクはゼゼにベースピックを手渡す。
ゼゼは深呼吸をした後、
「《妖骨振動》。」
と、呟いた。
次の瞬間、ゼゼの右腕が蒼い炎で包まれた。
ゼゼの銀色の髪が輝き出す。
ロクがぎょっとした顔で首を伸ばす。
「安心して、あれはゼゼの妖術《妖骨振動》よ。ゼゼはああやって触れたモノの残留思念を読み取ることが出来るの。」
腕組みしながらシコタンが目を閉じて頷く。
ゼゼの頭の中にすさまじい速度で様々な情報が流れ込んでくる。
そこにはゆったりとしたリネンシャツに、緑色のタンクトップ、白のフレアパンツを着た小麦色のボブヘアーの女性の姿が映っていた。
(この人がニロさんか…….?)
ゼゼは集中して残留思念を読み進める。
ぽつぽつと電灯の灯る薄暗い夜道を大量の串焼きをおいしそうに頬張りながらニロ歩く。
酔っぱらっているのか、ニロは千鳥足でどんどん人気のない道へと向かっていく。
「ふっふーん、焼き肉の後の焼き鳥、最高ー!!」
ニロが上機嫌に鼻唄を歌いながらベースピックを夜空に掲げる。
「楽しかったなぁ、今日のライブ。ロクちゃん達とバンド、続けてよかったぁ」
ニロがベースピック越しに月を見上げる。
突然、路地裏から大きなカエルの長い舌が伸びた。
舌が目にも止まらぬスピードでニロを捕える。
悲鳴をあげる間もなくニロは暗闇の中へ引きずり込まれていった。
「これで、ニロちゃんはボクの物ケロォ……見つかる前に早くアジトに帰るケロ」
低く、ニチャっとした声で大蛙がほくそ笑む。
そこで、ブツンッと映像が途絶えた。
◆◇◆
残留思念を読み取ったゼゼは、全身から汗を流し、肩で息をした。
(ニロさんは無事なのだろうか?頼む、無事でいてくれ‼)
「シコタン‼ 」
「分かってる」
シコタンは目を閉じ、ゼゼの額に自分の額を合わせた。
「《妖骨振動》」
ゼゼの額からシコタンの額へ、青い光が流れる。
「……データインプット完了」
シコタンが静かに目を開く。
「ニロちゃんは……ニロちゃんは無事なんですか!?」
ロクが不安そうに二人を見つめる。
ゼゼはロクに青く光るベースピックを見せた。
「彼女はまだ生きています。このベースピックの残留思念を辿っていけば、彼女の元に辿り着きます」
「今から救出に向かいます。必ず助け出すので待っていてください」
「……ニロちゃんをよろしくおねがいします」
深々と頭を下げるロクを横目にゼゼ達はニロ救出へと向かった。
◆◇◆
ニロは薄暗い倉庫の地下で監禁されていた。
彼女の目の前には邪気を放つ巨大な蛙の妖怪がいた。
蛙の頭には禍々しい妖気を放つ札が貼ってある。
「ニロちゃぁぁんかわいいぃぃ‼ かわいいケロねぇぇぇ!!」
ひどく耳障りな声でそう言って、蛙は血走った目でニロのほっぺをベロンッと舐める。
「ひっ………‼」
ニロが小動物のような悲鳴をあげる。
「あの女から貰った妙な札のおかげで今ならなんでもできる気がするケロォォォ‼安心してねニロちゃぁぁん‼ニロちゃんは僕が一生飼ってあげるケロよぉぉぉ‼」
ニロが目をぎゅっと瞑り、心の中で助けを求める。
(誰か____)
その時、地下室の天井に雪の結晶のようなマークが現れた。
派手な音とともにゼゼをおぶったシコタンが地下室の天井を蹴破り現れた。
「な、何者ケロォ!?まさか獄卒衆ケロかぁ!?」
蛙の妖怪が声を裏返して叫ぶ。
蛙の妖怪前に立ち、ゼゼ達が名乗りをあげる。
「半妖探偵のゼゼ」
「その相棒、シコタン」
「「ニロさんを返してもらうぞ(わよ)」」
「おのれぇぇ、ボクのニロちゃんの恋路を邪魔しやがってぇぇぇ!!」
蛙の妖怪が妖術で姿を消す。
「消えた………⁉」
シコタンが周囲を注意深く見回す。
突然、暗闇から蛙鳴の舌が伸び、シコタンの身体に巻き付いた。
蛙鳴の舌がじわじわと力を強めていく。
苦悶の表情を浮かべるシコタン。
「くっ………こんなもの……‼」
(シコタンを助ける方法はないか⁉考えろ……考えろ考えろ‼)
ゼゼの脳内が高速で巡る。
その時、ゼゼは果物屋とのやりとりを思い出した。
(………そうだ、これだ‼)
「これでも食らえ!!」
ゼゼは果物屋で購入したラモンの実を蛙鳴に投げつける。
蛙鳴は反射的にラモンの実を舌で弾く。
ラモンの実が弾け、果汁が飛び散る。
蛙が目を白黒させる。
「すっぺぇぇぇぇ!!?」
拘束が緩んだ瞬間、シコタンは蛙の舌を掴んで蛙鳴を投げ飛ばす。
「ゲゲェッ!!?」
シコタンが高く跳躍し、追撃する。
「《ロケット発頸》!!!」
シコタンの掌底がロケットパンチのように蛙鳴の鳩尾みぞおちに発射される。
蛙のは身体が地面にめりこんだ。
「やったか!?」
「いいえ、まだよゼゼ」
シコタンは蛙から間合いを取り、構えを取る。
「グォォォォォォォォォ!!!」
蛙はむくりと起き上がり、紫色の妖気を纏いながらさらに巨大化する。
炎を纏い、体中から油のようなものがボタッボタッと滴り落ちる。
「このままだとニロさんが危ない‼シコタン、奥の手を使うぞ‼」
「シコタン、リミッター解除。《完封》カンフースタイル。」
シコタンの金色の髪が光を放ち、背中に氷の結晶のような模様が浮かび上がる。
彼女全身から背筋が凍るような冷気が放たれた。
「《妖骨変化》!!!」
ゼゼは骨で出来た無骨な三節根に変身する。
シコタンが無骨な三節根を振り回した後構え、白い息を吐いた。
蛙が舌でシコタンを襲う。
舌は空を切り、視界からシコタンが消える。
蛙の背後を取ったシコタンは、すでに攻撃を終えていた。
「《銀嶺崩し》」
山をも砕くその一撃に蛙鳴は沈んだ。
蛙の身体はしゅるるるると縮まり、元の姿で気絶する。
シコタンが残心の構えを取る。
ふぅ、とため息をつき、戦闘モードを解除する。
ゼゼも元の姿に戻り首の骨をゴキッと鳴らす。
そしてゼゼは蛙の頭に貼ってあるお札を剥がし、回収した。
それからゼゼはニロの拘束を解きながら
「遅くなってすみません。もう大丈夫ですよ」
と屈託のない笑みを浮かべた。
その後、ゼゼ達はニロを待つロクの元へと、ニロを連れて行った。
「「本当に、本当にありがとうございます!!!」」
女の子達二人にお礼を言われたゼゼは露骨にデレデレする。
そんなゼゼを、呆れたようなジト目でシコタンは見た。
「ロクさん達が必死にニロさんを探してくれたおかげで手がかりが分かったんです。それじゃ、僕達はこれで失礼します」
「バンド活動がんばってね。」
ゼゼとシコタンはそう言って二人の元を去った。
ゼゼ達は《極楽街•未》の宿泊施設へと泊まった。
「それにしても、思わぬ所から《私市誰ソ彼》の
手掛かりが見つかったわね」
ベッドに腰かけながらシコタンが呟く。
「うん」
ゼゼが禍々しい妖気を放つ札を見つめる。
「私市誰ソ彼……これ以上被害が増える前に、早く奴を捕まえないと」
ゼゼは深呼吸をし、《妖骨振動》で札の残留思念を読み取った。
コメント
1件
もうね、冒頭から完全に持ってかれたんだけど!!✨ 半妖探偵×アンドロイドのバディものとか、沼確定すぎるでしょ…!? ゼゼのアホ毛ピョコピョコに癒されつつ、シコタンの「眼科行け」のツンデレ具合に悶絶した😭💕 ラモンの実で二人揃って酸っぱい顔するシーン、アンドロイドなのに「すっぱ!!」って言っちゃうのが可愛すぎて反則だよ…そしてそれが後の戦闘で伏線回収される展開、めっちゃおしゃれ! 戦闘シーンも《妖骨振動》とカンフースタイルの連携がかっこよすぎて、脳内で完全にアニメ化してた。続きが気になって仕方ない…トド村さん神!!!