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海斗はマンションに戻るとすぐにシャワーを浴びた。

そして、ジーンズに白シャツ、麻の黒いジャケットに着替えた。


海斗は今、心身ともに満たされていた。

レコーディングは無事に終わり、美月と本当の意味での恋人になれた。

そして改めて美月の素晴らしさに気づき、今まで以上に愛おしく感じていた。

だから今日は最高の一日にしてあげたいと思っていた。


身支度を終えた海斗は地下駐車場へ向かうと、車に乗ってすぐに美月のアパートへ向かった。


美月はアパートの前に立っていた。美月を見た瞬間、思わず目が釘付けになる。

上品なブラウスと身体にフィットしたスカートに着替えた美月は、なんともいえないエレガントな雰囲気を漂わせている。

海斗が初めて見る美月だった。


(俺は美月の全てをわかったつもりでいたが、実はまだわかっていないのかもしれない)


海斗はいい意味でのショックを受けていた。

そして素早く車を停めると、手を伸ばして助手席のドアを開けた。


「お待たせ」


美月は車に乗り込んでから「ありがとう」と微笑む。

美月もシャワーを浴びて来たのだろう。美月からは何ともいえない良い香りが漂ってきた。

美月がシートベルトを締めている間も、海斗は美月に見とれていた。


「どうしたの?」

「いや別に。今日はまた一段と素敵だね」

「フフッ、ありがとう」


美月は嬉しそうに笑った。


車を出す前に、海斗は美月に行きたいジュエリーショップがあるかを聞いた。

しかし美月は特にないと言う。


「それじゃあ俺があらかじめセレクトした店を巡るっていうのでいい?」

「うん」


美月は笑顔で頷く。

そして二人が乗った車は銀座を目指した。


日曜日の銀座は人で溢れていた。


「人が凄く多いけれど大丈夫?」

「別に、悪い事をしている訳じゃないし、堂々としていればいいさ」


海斗は特に気にしていないようだ。


車を降りる際、車のダッシュボードに海斗の変装用メガネを置いたままだったので美月が慌てて言った。


「メガネ忘れてる!」

「今日はしなくていいよ」


海斗は微笑んで言うが、美月は大丈夫なのだろうかと心配そうだった。


それから二人は手を繋いで歩き出した。この辺りにリストアップした一店舗目があるようだ。

メインの大通りに出ると、誰もが知っているハイブランドジュエリーの店があった。


「最初はまず定番のブランド店から見て回ろう」

「え? でもそんな高価なものじゃなくてもっと…だって『付き合って何ヶ月記念』の指輪でしょ?」


美月が焦って言うと、海斗はのんびりとこう答えた。


「うん。付き合って何ヶ月記念+婚約指輪を兼ねた物だな」

「…………」


美月はあまりにもびっくりして言葉を失う。


「プロポーズは後でするから待っててね」


とチャーミングな笑みを浮かべた。

美月の頭の中は真っ白だった。何がどうなっているのかわからずにパニックを起こしている。

しかしそんな美月にはお構いなしに、海斗は一つ目の店へ歩き始めた。


店の前に着くと、入口には黒服を来た男性が立っていて二人が近づくとドアを開けてくれた。

店に入るとスタッフの一人が「いらっしゃいませ」と声をかける。

スタッフは海斗に気付くと、慌てて一番奥にいる上司と思われる男性の所へ行き何かを伝えた。

その男性はすぐに二人の所へやって来て挨拶をする。


「いらっしゃいませ。私店長の前田と申します。よろしければ奥の応接室へご案内いたしますが」


と言って名刺を差し出した。


「ありがとうございます。しかし今日は少し見て回るだけですので」


海斗は案内を丁重に断った。

なぜなら、美月の反応を見てここではないなと感じたからだった。


店内を一周した美月に「どう?」と海斗が聞くと、


「素晴らしい物ばかりなんだけれど、なんか違うかも…」


美月は店のスタッフに聞こえないように海斗に告げた。


「わかった。じゃあ次に行こうか」


二人はスタッフに軽く会釈してから店を後にした。


その後は、ハイブランドの店を二店舗回り、その後は真珠で有名な日本の宝飾店。

そして銀座に昔からある老舗宝飾店にも寄った。


しかし美月がピンとくる指輪はなかなか見つからなかった。


「なかなか見つからなくてごめんなさい。今日はもうこれでおしまいにしましょう」


美月はすれ違う人が海斗に気付いているのを心配して言った。


「ははーん、なんか余計な気を遣っているな?」

「だって、あんまりうろうろしていたらばれちゃうでしょ」

「でもさ、あと一つだけ気になる店があるから、最後にそこに行ってみないか?」


海斗はそう言って美月の手を取ると、その店へ向かって歩き始めた。


すれ違う人達が一瞬、「えっ?」と言って海斗の顔を二度見する。

その度に美月はハラハラした。


(大丈夫かな?)


美月は海斗がもし見つかったらと、ただそれだけを心配していた。



海斗がリストアップした最後の店は、表通りから一本裏に入った通りにあった。

店の名前は「étoiler(エトワレ)」というフランス語で「星を散りばめる」という意味らしい。


店の外観はパリの街角にあるよう洒落た佇まいで、ドアや窓枠にはアンティークの建具が使われている。

海斗は店の外観を見た時の美月の反応がこれまでとは違う事に気づいていた。

美月はこういう店が好きなのだ。


店に入ると、三十代くらいの品の良い男性スタッフが


「いらっしゃいませ」


と声をかける。そして二人に近づくと笑顔で言った。


「何かお探しでしょうか?」

「こちらには月をモチーフにした指輪があるとホームページで見たのですが」

「当店のホームページをご覧いただきありがとうございます。それでしたら、奥のコーナーにございます。どうぞこちらへ」


スタッフは二人を店の奥へ案内してくれた。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

皆さんに激しく同感✨変装せんと堂々と指輪を見て回る海斗さん🥹🍀素敵な指輪が見つかりますように…🌙✨💍🩷🩷🩷

ユーザー

↓お2人のお気持ちと一緒です〜🤩 海斗さんが変装もせず堂々と銀座を歩く…覚悟を決めてますよね🥹 多分初めから最後のお店になるとわかっててあえて「月の指輪」の事を言わなかったのかな🤔 でもあれだけ銀座のど真ん中歩いてたらパパラッチもすっ飛んでくるだろうし… とにかく今は2人で楽しみながら唯一の💍見つけてね💝 あっ!ネックレス渡すんだった〜( ⸝⸝˘͈ ᵕ˘)🎁(˘͈ᵕ ˘͈♡)

ユーザー

海斗さんとの愛に育まれて美しさに磨きがかかった美月ちゃん✨💕 そんな美月ちゃんにときめく海斗さんがモテ男でありながらとても素敵💓 今日は婚約指輪💍+プロポーズで変装もなしの素の海斗さんでチョイスしたお店で運命の"月の指輪"と巡り会えますように✨☆彡 その後は海斗さんからのプロポーズ〜ウーン、ドキドキ🥰👩‍❤️‍💋‍👩👍❤️🌷

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