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#コメディ時々暗闇
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NGS_ヘビーなしっぽ
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#妖怪
百はな🍑
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二匹の建造物の大蛇がのたうち回り、動けないレイの身体を完全に押し潰そうとしたその刹那。
ワタシは白昼の光を浴びる戦場の中心へと、迷いなくその身を投げ出した。
「ガイア様! 少しお話よろしいでしょうか?」
ワタシの声が響いた瞬間、頭上を覆っていた数万トンのコンクリートの塊が、ピタリと動きを止めた。同時上限の二つの命令枠を維持したまま、女王は不快そうに美しい眉をひそめ、ワタシへと冷徹な瞳を向けた。
「トオル……。貴様の言った通りだったわ。レイの能力の仕組みも、その弱点も、すべてね」
「それは良かった。お役に立てて何よりです」
ワタシは淡々と答えながら、地面に倒れ伏しているレイの元へと真っ直ぐに駆け寄った。全身傷だらけで血を流す少年が、信じられないという目でワタシを見上げてくる。
「……トオル、君……本当に、僕たちを裏切っていたの?」
その悲痛な問いかけに、ワタシは感情を一切見せず、ただ冷徹な事実だけを彼の頭へと突き刺した。
「ワタシの目的は、この戦いの後に訪れる『災厄』を防ぐことです。そのための選択肢として、ワタシは今、ここに立っています」
「ふん……」
背後でガイアが冷たく鼻で笑った。
「しかしまぁ、テレビ塔のバッファはやられたわ。トオル、お前の予知では、バッファが勝つ未来だったんじゃないのかしら?」
その傲慢な問いに対し、不敵に微笑み返した。
「ガイア様、ワタシはバッファが負ける未来を選択しました。あなたには言っていませんでしたが、この戦いの後、大きな災厄がこの国に訪れます」
「……そんな話。なら、何故この国家転覆作戦を最初から私に話した?」
ガイアの美しい瞳に、冷酷な不信のノイズが走る。ワタシはただ淡々と、王の精神性すらも自分の盤面の手札に過ぎなかったことを告げた。
「反逆者がいることを話した方が、ガイア様の性格上、自分に逆らう者たちへ怒りを向け、レイさんたちと全力で戦ってくれるでしょう? ワタシにとっては、その方が都合が良かったんです」
「そうか……」
「じゃあお前は、私を裏切ったということでいいんだな」
「ええ、」
ワタシが淡々と言い放つと、ガイアは静かに怒りを表した。その美しい顔から笑みが完全に消え去り、周囲の空気が一気に凍りつく。
「女王である私を、ただの駒のように弄んだというわけね。……いいわ、ゴミども。二人まとめて、跡形もなく消してあげる」
ガイアは自らの手のひらの傷口から大量の鮮血を絞り出し、再び左右の巨大なビルへと叩きつけた。女王の絶対的な支配欲を吸った鉄骨の塊が、直線の形状のまま、猛烈な軋み声を上げて同時に動き出す。
今度はレイ一人じゃない。ワタシとレイ、二人を同時にこの白昼の街ごと押し潰そうとしているのだ。天を衝くコンクリートの大蛇が、凄まじい風圧を伴って僕たちの頭上へと牙を剥く。
(――間に合いましたね、レイさん)
ワタシは隣で呆然と立ち尽くす少年の背中を見つめ、自らの細い両腕にすべての力を込めた。
――ドンッ。
「えっ……?」
ワタシは、レイの身体をビルの無慈悲な射程から力ずくで引き剥がすように、戦道の外へと強く突き飛ばした。アスファルトの上をごろごろと転がっていく少年の姿が、ワタシの瞳に映る最後の景色となった。直後、頭上から数万トンの容赦ない暗黒が降り注ぐ。
バガァァァァァアンッッ!!!!!
凄まじい衝撃音と共に、コンクリートの巨躯がワタシの五体を、そして覚醒者の絶対的な弱点である『脳(頭部)』を、跡形もなく完全に踏み潰していった。
「チッ……。一人だけ逃げ延びたか」
砂煙の向こうで、ガイアが不快そうに舌打ちを漏らす。瓦礫の隙間で、脳への致命的な致命傷を負ったワタシの元へ、レイが血相を変えて駆け寄ってきた。
「――トオル! なんで、なんで僕を庇ったんだ!?」
「言ったでしょう……。この戦いの後に訪れる、災厄を防ぐため、です……っ」
ワタシは溢れ出る血を吐き捨てながら、視界が急速に狭まっていくのを耐えて微笑んだ。
「嘘だ……! 未来にはたくさんの選択肢があるんだろ!? 君が死なない未来を選ぶことだって、できたはずじゃないか……!」
「それじゃあ、ダメなんです、レイさん。……災厄は、必ずやってくる。それを防ぐ確率が最も高い選択肢が、ワタシがここで死ぬことだったんです」
レイの瞳から大粒の涙が濡れた路面へとこぼれ落ちる。
「そんなの嘘だ……。でも、僕一人じゃガイアの環境操作に勝てない……。僕がここで負けたら、結局、災厄なんて防げない……っ!」
「一人では、無理でしょうね。……あと、覚えていませんか? ワタシは以前、レイさんに『ガイアとの戦いで、君が跪く未来が見える』と、そう言いましたよね」
「……っ。それって、僕が負ける未来ってことでしょ……!?」
「逆ですよ」
ワタシは、遠のいていく意識の糸を必死に繋ぎ止め、確信を込めて告げた。
「ワタシの見た未来では――その跪いた土壇場から、すべてレイさんがガイアに勝っているんですよ。大丈夫、ワタシの選んだ選択を、信じて」
「……分かった。信じてあげる」
レイは濡れた涙を強硬に拭い、ゆっくりと立ち上がった。その瞳に、これまでの冷徹な計算ではなく、ガイアを絶対に引き裂くという本物の『野生の怒り』を宿して、女王を真っ正面から睨みつける。ワタシは薄れゆく視界の中で、最後の遺言をその背中へと遺した。
「最後に、一つ。……ガイアは、災厄を防ぐために必要な存在です。……だから、勝っても、殺しはしないでください」
「うん。……勝つから」
そのブレない答えを聞いて、ワタシの胸の奥の使命感は、静かに、優しく解き放たれていった。
(ああ、やっぱり……)
「レイさん。……合格、です、よ……」
懐中時計の針が、ピタリと止まる。その瞬間から、周りの音が急に聞こえなくなってきた。白昼の戦場の喧騒が遠のき、世界が急速に冷たい静寂に包まれていく。
(ああ、おばちゃん。約束、破ってごめんなさい。……それにワタシは、先生が好きだったこの残酷な世界を、ちゃんと守れたでしょうか。不安です。心配です。彼らに災厄の正体を何も言わずに、一人で抱えて死ぬ選択。……本当は、後悔しかない)
(先生……。ゼス先生……。また、あなたに褒められたかった。よく頑張ったねって、頭を撫でて欲しかった)
世界を一人で背負うという、優しすぎる怪物の、それが最期の不自由な本音だった。意識が完全に闇へと沈みかけたその刹那、冷たい暗闇の向こうから、ずっと聞きたかった懐かしいあの人の声が優しく響いた。
(トオル。ありがとう。ワタシの夢を、継いでくれて。トオルのその選択は――120点満点の合格ですよ)
幻聴だ。もう動かない脳が見せている、都合のいい幻のシステム。だけど、ワタシの魂はその温もりに、子供のように縋り付いていた。
(先生……。俺、もうお酒が飲める年齢になったよ。……あの日、約束したよね……?)
最期の最期で、貼り付けていた「ワタシ」という偽りの仮面が剥がれ落ち、一人の普通の青年としての「俺」の剥き出しの声が、暗闇に溶けていく。
(ええ、ちゃんと覚えていますよ、トオル。――あっちで、一緒に美味しいお酒を飲みましょうね)
(……うん。先生……)
今度こそ、懐中時計のゼンマイが完全に巻き終わる。
コメント
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**寺島あおいです🤍** 第40話、読み終わりました……いやもう、言葉が出ませんでした。トオルがすべてを背負って、一人で選択する覚悟の重さに胸が締め付けられましたね。「120点満点の合格ですよ」というゼス先生の幻聴のシーン、ここで涙が止まらなくなりました。彼女(トオル)はずっと「ワタシ」という仮面をかぶっていたんだなって思うと……切なすぎます。ラストの「あっちで一緒に」に救われたような気持ちになりつつ、この先レイの戦いがどうなるのか、目が離せません。ぽたおさん、本当にありがとうございます。続き、楽しみにしていますね。