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外へ飛び出すと、雨上がり公園の脇の空き地で、ピットマンが腕を広げて立っていた。向かい合うのは、光沢のある靴を履いた立ち退き担当の男二人。公園の隅では、小学生たちがバットとグローブを抱えたまま固まっている。
「ここは安全上の都合で立ち入りを制限します」
「昨日まで使えてた場所だろ」
「今後の整備計画がありまして」
「整備計画って、柵一本立てて終わりのやつか!」
ピットマンは配達用の帽子を後ろへずらし、完全に臨戦態勢だった。
トルードも駆けつけ、立てかけられた簡易柵を見て顔をしかめる。
「これ、夜のうちに雑に打ち込んでる。ちゃんとした許可札がない」
リボルが遅れて現れ、柵を一瞥した。
「書式が違う。正式な閉鎖表示ではない」
立ち退き担当の男たちは一瞬だけ表情をこわばらせたが、すぐに営業用の笑顔へ戻る。
「皆さまの未来のためですよ。再開発は希望です」
「希望って、誰の」
エリアがぴしゃりと返す。
その時、キオノフが店の前から出てきた。手には紙コップをいくつも抱えている。
「どうぞ、熱いの。怒鳴る前にやけどしない程度に」
「今それ出す?」
エリアが目を丸くすると、キオノフは穏やかに笑った。
「出すよ。怒ってる時ほど、こぼしやすいから」
妙な間ができて、子どもたちの何人かが吹き出した。緊張が少しだけゆるむ。
サペはその隙に、簡易柵の支柱を見た。打ち込みが浅い。昨日の夜に急いで設置したのは明らかだった。
「これ、正式なものじゃない」
サペが言う。
「撤去しても問題ない」
リボルが続ける。
ピットマンの顔が明るくなった。
「よし、じゃあ――」
「待って」
マイナが止めた。
「今ここで力任せにやると、向こうが被害者ぶる」
彼女は書類を握り直す。
「だから順番を決める。まず一軒助ける。キオノフさんの店を守る。そこができれば、みんな黙って飲まれなくなる」
「一軒か」
サペがつぶやく。
「一軒。目の前の人を助けられないなら、町なんて守れない」
その言葉に、サペはうなずいた。
遠くで、黒いスーツの男がこちらを見ていた。
顔は見えない。
けれど、見張られている感じだけは、はっきりあった。
#勧善懲悪
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