*当短編はあえてside aとside bの順番を反転させてます。side bから読むと読みにくく感じるかもしれませんが、演出を兼ねてますのでご了承ください。
“テレビの前のそこのあなた!こんなことを考えたことはありませんか?
「今朝見た夢が現実に起こればいいのに」
「現実の世界より、夢の世界に居たい」
そんなあなたに、MDC社が提供する新サービス![あなたの夢を正夢に!]
利用は簡単!我が社が提供するヘッドギアをつけて夢を見るだけ!お客様が現実にしたいと思った夢がありましたら、その夢を我が社の社員が現実で再現します!
今ならなんと、寝る前に飲んだら幸せな夢を見ることができるサプリメントもお付けします!
ぜひ新サービス・あなたの夢を正夢に!をご利用ください!
*続けてのご利用は一日間に限ります。”
side b 清水春樹(36)・make dreams come true corporation(MDC社)社員
おっと、データが送られてきたな。今回はどんな夢なんだ?なになに?クライアントはシマダタカシ27歳会社員。
はぁ、これはまた再現するのが大変そうな夢だな。
我が社MDC社は旅行代理を主に行なっている会社だが、某ウイルスが広がっている昨今において営業成績が落ち込んでいた。そこで新しく始めたサービスが[あなたのサービスを正夢に!]である。
旅行代理を通して様々なサービス業と連携をとってきたからこそ行えるサービスなのだ。まぁ、主に働かされるのは私たちなのだが。
私は現在このサービスのチームリーダー、つまりは主任をやっており、クライアントの情報、送られてきた夢のデータを確認して適切なサービスのプランを考え、実行する仕事をやっている。
まだ始めて半年程度のサービスではあるが、クライアントからは好評で、我が社の未来を担うサービスと言っても良いだろう。
我が社が提供するサービスを通じて、クライアントが見た幸せな夢を現実のものにし、クライアントに一日限りの夢を味わってもらう。それが我々の行っている仕事なのだ。
早速プランを立てないとだな。準備期間は一日。まったく忙しい仕事である。
私がプランを立てていると、新人の三原くんがやってきた。彼はまだこのチームに配属されてから日が浅く、いろいろと仕事を教えている最中である。彼は私にこう聞いてきた。
「清水主任、このヘッドギアと一緒に送っているサプリメントを飲んで寝たら良い夢が見れるんですよね。僕も貰っていいですか?」
やれやれ、仕事に集中できてないな。私はこう返す。
「仕事に集中しろ。そもそもそのサプリはただの味のしないラムネだから。」
俺がこう言うと三原くんは「マジですか?」と言い驚いた表情を見せた。
私の言った通り、このサプリはただのラムネである。人は思い込みの激しい生き物だから、良い夢が見れるサプリと言われて飲めば良い夢が見えてしまうらしい。あくまでこのサプリはサービス品であるからこんな物でも許される。
それにちゃんと同封されている注意書きには、”このサプリメントは必ず効果でると保証された物ではありません。あらがじめご了承ください。”と書いてあるしな。
今回のプランは4人組のチームで行うことにした。チームのなかには三原くんも含まれているので、いろいろと教えるために私も実行役として参加する。
~夜~
私は今回のクライアントである島田隆が住むアパートへ来ている。クライアントとサービスのプランの確認をするためだ。
夜の9時前、クライアントが帰ってきたので、近づいていきこう言った。
「初めまして島田様。私MDC社の清水と申します。この度は当社のサービス、[あなたの夢を正夢に!]をご利用いただきまして誠にありがとうございます。本日は明日のサービスに関しまして、いくつかの確認事項がありますので、ご自宅にお伺いさせていただいております。」
まぁいわゆるテンプレというやつだ。私は資料を渡してプランを説明すると、クライアントはこう聞いてきた。
「その、今回のサービスの料金っておいくらになるのでしょうか?」
はぁ、この様子だと注意書きをまともに見てないな。私はこう伝える。
「今のところ確定している金額は150万円になります。分割払いもできますがどうなされますか?」
クライアントは顔をしかめる。こりゃ確定だな。私はこう続ける。
「ヘッドギアに同封していた注意書きに大体の目安の値段を記載していたはずですが。お読みになっていませんでしたか?申し訳ありませんが今からのキャンセルですと、キャンセル料として80万円をいただくことになっていまして…。」
こう言えばクライアントも無駄に80万なんて払いたくないから、契約するしかない。今回のクライアントはすでに確定している150万を25回払いで契約してくれた。
そして朝食を作るためにはアパートに入らなければならないため、クライアントから部屋の鍵を預かり、最後にテンプレの言葉をクライアントに伝えた。
「島田様の夢を実現するために、我々スタッフ一同全力で取り組みさせていただきます。島田様にとって忘れることのない素晴らしい一日になりますよう、明日はどうかよろしくお願いいたします。」
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