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コメント
5件
素敵なご夫妻ですよね~🤩 流星君ものびのび育てる良い環境になりそう🤗
山荘のご夫婦が温かい心で迎えてくれ良かった。流星くんも保育園決まりそう?
うるうるうる🥹🥹🥹✨優しいご夫婦に温かく迎えてもらえて良かったねー😭🍀🍀🍀優羽チャンも流星くんも自然がいっぱいの場所で素敵な方々との新しい生活🥹わくわくだね(*´艸`*)🩷
ドアを開けると、カランコロンというベルの音が響いた。
入口を入ってすぐのところにフロントがあり、その横の扉の向こうには、先ほど駐車場から見えたカフェが続いているようだった。
フロントは吹き抜けになっていて、ソファが三つ並んでいる。
脇には観光案内のチラシを置いた棚やテレビ、貸し出し用と思われる天体望遠鏡や双眼鏡が整然と置かれていた。
隅には薪ストーブがあり、フロント横の小さな売店では土産物が販売されている。
優羽は意を決してフロントまで進み、大きな声で呼びかけた。
「ごめんください。先ほどお電話した者ですが」
奥からすぐに返事が返ってくる。
「は~い。今行きま~す」
高齢の女性の声だった。おそらく、先ほど電話に出た男性の妻だろう。
姿を現したのは、六十歳前後で白髪まじりの髪を上品にまとめた素敵な女性だった。
「あの……先ほど求人のチラシを見てお電話した森村と申します」
優羽が丁寧に頭を下げると、女性はにこやかに言った。
「まあまあ、遠いところをよくいらっしゃいました。どうぞ、そちらのソファに座ってくださいな。今、主人が参りますから」
案内されたソファに腰を下ろすと、女性は嬉しそうに微笑んだ。
「こんな若いお嬢さんが応募してきてくれるなんて……嬉しいわぁ」
そのとき、奥から男性が姿を見せた。
「よくいらっしゃいました。遠いところをありがとうございます」
六十代半ばほどの紳士で、白髪交じりの髪に上品な口ひげをたくわえている。おそらくこの山荘のオーナーなのだろう。
優羽は慌てて立ち上がり、自己紹介をした。
「森村と申します。よろしくお願いいたします」
男性は目を細め、優しく言った。
「まあまあ、そんなに堅苦しくしないで……どうぞ座って楽にしてください」
「失礼いたします」
二人の柔らかな物腰に触れ、優羽は「ここで働きたい」と強く思った。
まだ仕事内容も条件も聞いていないのに、なぜか心が惹かれてしまう。
「私はこの山荘のオーナー、山岸と申します。こちらは妻の紗子です。アルバイトで通ってくる人は何名かおりますが、住み込みでお願いしていた方が急に辞めてしまいましてね。今回の募集は住み込みが条件なのですが、その点は大丈夫でしょうか?」
山岸が尋ねる。
「もちろん大丈夫です。ただ私はシングルマザーで子供が一人います。ちょうどこの近くの保育園への入園が決まったばかりで……それでも問題ないでしょうか?」
優羽はドキドキしつつ、子供がいることを正直に伝えた。
もしかしたら、断られるかもしれないーーそんな不安がよぎる。
しかし山岸は穏やかに頷いた。
「問題ありませんよ。募集にも書いてあったでしょう? 小学校も近いですし、送迎にはうちの車を使ってもらって構いません」
続いて紗子が優しく尋ねた。
「お子さんはおいくつなの?」
「4歳の男の子です」
「まぁ、それじゃあ今が一番かわいい盛りねぇ」
その言葉に優羽は胸が熱くなった。
今までの就職活動では、子連れのシングルマザーだと告げると、ほとんどの会社が嫌な顔をしたり、面接前にやんわりと断られることも多かった。
しかし、この夫婦は優羽の事情をまったく気にしていない。
むしろ歓迎してくれているようだった。
優羽は慌ててバッグから履歴書を取り出し、山岸に差し出した。
山岸は目を通しながら尋ねる。
「以前は東京におられたのですね。こちらに来た理由は?」
「実家が信濃大町駅の近くなんです。母と兄が住んでおります」
「なるほど、元々こちらのご出身なのですね」
山岸は嬉しそうに頷いた。
「で、いつから来ていただけますか?」
思いがけない言葉に、優羽は驚いた。
「あの……私でよろしいのでしょうか?」
「もちろん。だから聞いているんですよ」
山岸はそう言って微笑んだ。
その優しさに、優羽は涙がこぼれそうになった。
「ありがとうございます。いつからでも大丈夫です。よろしくお願いいたします」
勢いよく立ち上がり、深々と頭を下げる。
すると、山岸も立ち上がり、優羽に手を差し出した。
「優羽さん、これからよろしくお願いしますよ」
「はいっ!」
握手を交わした瞬間、山岸の大きな手が、これまでの苦労を包み込んでくれるように感じられた。
そのとき、紗子がふと微笑んで言った。
「優羽さんのお名前、『優しい羽』って書くのね。素敵なお名前。これからは優羽ちゃんって呼ばせてもらうわね」
妻の言葉に、山岸も笑って続けた。
「僕もそう呼ばせてもらおうかな。私たちには子供がいないから、まるで娘ができたみたいで嬉しいなぁ」
「ほんとですねぇ」
夫婦はそう言って、穏やかな笑顔で見つめ合った。
その温かな光景を前に、優羽は込み上げてくる涙を必死にこらえながら、そっと微笑みを返した。