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(ひと気の少ない喫茶店、入り口)
(カメラは店内の様子を撮影しながら奥へと向かう)
(カメラ窓際のテーブルへ)
(席にいたのは未成年と思しき男性。)
トウヤ(オフ):
あの~、Bくん?俺、連絡させてもらった者なんですが……。
(Bくん、椅子から立ち上がり軽く頭を下げ)
Bくん:
あ、塚森トウヤさんですよね?
心霊バカップルの……。
(画面真下テロップ:少年Aの元同級生Bくん)
トウヤ(オフ):
は、ははは……。
そこで切ると本当にバカみたいっすね。
スタジオ・トウヤ:
彼はBくんと言って……。
少年Aの幼馴染で親友なんだって。
スタジオ・マリン:
そうなんだ。
モザイク処理してとは言え、よく出演を決意してくれたよね。
スタジオ・ハル:
ありがとねー!
ハルはBくんが大好きだよー!
(カメラ、席に着き直したBくんの正面に)
トウヤ(オフ);
それじゃあ、早速お話を伺えますか?
Bくん:
わかりました。
じゃ、いきなりこんなことを聞いて申し訳ないですけど――、塚森さんはイジメられたことってあります?
トウヤ(オフ):
えっ?いや、俺はあんまり、そういう目には……。
Bくん:
……そうでしょうね。
だって、塚森さんって見るからに陽キャですもん。
僕やAみたいな人間とは全く違うタイプの人ですよね。
あ、すみません。
初対面の人にこんなこと言うなんて……。
ええ、お察しの通り、僕もAもクラスじゃ浮いてるほうです。
それだけならいいんですけど同学年にはDって言う不良がいて、僕もAもよく絡まれて殴られたりしました。
僕は弱いなりにも噛みき返したり、ネットを使って復讐するタイプだから、
そこまでストレスため込むタイプじゃないんですけど、Aは……。
まあ、大人しくて優しい虫も殺せないタイプですね。
だから、Dも調子に乗ったんでしょうね。
でなければ、あんな美人局まがいなこと、できませんよね。
ええ。Dのやつ、遊び仲間のCって女の子とグルになって、同じクラスだけじゃなく同じ学年のやつらを集められるだけ集めて、Aに恥かかせたんですよ。
偽のラブレターと偽の告白で、普段から女っ気のないAを舞い上がらせてね。
その後のAですか?
そりゃ落ち込んでましたよ。はたから見ていても可哀想なぐらいに。
一週間ぐらいは学校、来なかったかな。でも、その後は割とヘラヘラして毎日過ごしてて――。
幸いDもそれで飽きたらしくて以前ほどちょっかい出してこなくなりました。
もちろん、何の仕返しも終わってないのにって思うとムカムカしましたが、
平穏に生活できるならそっちの方がいいかなって。
で、問題の修学旅行なんですけど――。
旅行先の宿に着いた後、僕らはいくつかのグループに分かれて
オリエンテーションみたいなことをやることになって。
僕とAは地元にある■■民俗学博物館を見学することになりました。
まあDみたいなクズと鉢合わせしなくて済むなら何でもよかったんですけど、
Aはあーゆーのが好きだったみたいで。柳田国男の遠野物語とか、地元の伝説が描かれた絵巻とか、
古い民芸品とかそんなやつですね。
正直、僕は面白くもなんともなかったんですけど。
Aは妙にテンション高くて目なんかキラキラさせていて。
久しぶりに友達の元気な姿をみれて僕も嬉しかったですね。
だけど、とある展示物の前でだんだんAの様子がおかしくなって……。
ええ、例の能面です。「無貌(むぼう)」って開設パネルには題名が付けられていました。
いや、鬼とか天狗じゃないですね。
モチーフは一応人間だと思います。
白面だけど、男か女かもよく分からない感じ。
目は悲しげで伏目勝ち。口を少し開いたボンヤリした表情。
あ、これ亡者を象っているんだなって直感しました。
(画面に能面「無貌」のアップが表示される)
スタジオ・ハル:
ひぇっ!?
スタジオ・マリン:
ちょっ、何これ?怖いよ、これは……。
(マリン、ハルを抱きしめる)
Bくん:
貴族の古い屋敷跡で発見されたらしくて作者不詳。
でも、当時の大衆文化を知るための貴重な文化財とかなんとかってありましたっけ。
それでAのやつ、それをジッと見つめたままピクリとも動かなくなっちゃって。
おいおい、そんなに気に入ったのかよって笑いかけても返事なくて。
それで気がついたんです。Aの顔がそれこそ能面みたいな無表情になってるって。
顔色もどんどん悪くなって。まるで能面に生気を吸われてるみたいでした。
何だか気持ち悪くなって――。
もう行こうぜってAを引きずって、そこから立ち去ったんですよね。
……はい。それから三日後ですね。
修学旅行の最終日、Aが事件を起こしたのは。
それも現地からみんなでバスでさあ帰るぞってタイミングでした。
クラスの連中がバスに乗り込んで、最後にAが姿を見せたんですけど。
……後は報道にあった通りです。
あの能面をかぶったAが音もなくCとDに接近して。
先生が声をかける間もなく、いきなり刃物で、今思い出しても寒気がする、
鋭く長い出刃包丁で斬りかかったんです。
あっという間にバスの中は阿鼻叫喚の地獄ですよ。CとDは身体のあちこち刺されまくっちゃって。
たった二人が切り刻まれただけなのに、バスの床中、血の海みたいになっちゃってました。
それに塚森さんは知ってますか?身体の外に流れ出た血って――、臭いんですよね。
スタジオ・マリン:
うわぁ~……。
Bくん:
それからのことは実はよく覚えていないんですよね。
時間が飛ぶ感覚って言うのかな。まあ、まともな精神状態じゃなかったと自分でも思います。
気がつけばバスの中に機動隊が突入してきて、
刃物を振りましてるAを外にズルズル引きずり出して、
はい終わり、みたいな。
機動隊に連れていかれながらAが「入ってる!入ってる!こいつが入ってる!」とか訳のわからないことを言っていたのはやけに印象的だったんですけど。
これまで僕はホラー小説や怪談なんで絵空事もいいところだって馬鹿にしてたんですけど……。
呪いだか憑依だかはわかりませんけど、とにかく、あいつがいつものAじゃないことは確かでした。
CとDですか?……さあ、知りませんね。
命は助かったけど、二人とも気が触れて失踪したらしいですね。別にどうでもいいですあんなやつら。
そんなことより、Aと会って話がしたいです。
……面会に行きたくても、警察はあいつの行方を教えてくれませんから。
(数秒間の沈黙の後)
トウヤ(オフ):
ありがとう、Bくん。(声がうわずっている)
わ、わざわざ、こんな辛い話をさせてごめんね。
Bくん:
いいえ、大丈夫です。むしろ、この話を聞いてもらえてホッとしてます。
だって、こんな目に遭って、洗いざらい吐き出せない、吐き出しても信じてもらえないじゃ今度は僕が頭壊れますって。
(コーヒーカップを口に運びかけるBくんの手が小刻みに震える)
(カタカタと音を立てて揺れるカップ)
(画面暗転)
(映像は再びスタジオへ切り替わる)
(トウヤとマリンは神妙な表情。ハルはマリンの胸にしがみつき泣いている)
(数秒の沈黙の後)
トウヤ:
これが事件の目撃証言ということになるんですけれども……。
(重いため息をつきながら)
ハル:
Aくん可哀想……。ハル、嫌だよこんなの……。
(ハル、マリンの胸に顔をうずめながら小刻みに震えている)
マリン:
酷い話、だよね。Bくんは事件の後、Aくんと面会もできてないって言ってたけど……。
(数秒の沈黙の後)
マリン:
……結局、A君が被っていた「無貌」って言う能面はどうなったの?
警察に押収されたまま?
トウヤ:
うん。それについても次のコーナーで詳しく見ていこう――。
(画面暗転)