腫れてしまって重い瞼を開け
「んっ……」
と固まった体を伸ばす。少し目を閉じると目の奥がジーンと痛くなってしまって、泣きすぎたなと少しだけ後悔したのは言うまでも無い。
「ふぅ…」
と息を吐き、まだ半分も顔を出していない太陽を見る。
その時の私はどこか前向きだった。
少しの間太陽を見つめてから
「よし」
と声を発して、立ち上がり夢に出てきたあの川へと1歩づつ近づく。
どこか元気の貰えそうな明るい黄緑色の芝生に、風に吹かれて音を鳴らす木々と甘い花の香り。
全て、あの楽しかった思い出に刻まれている。
だからもうここに未練は無い。
それでもやっぱり、
過去の傷は癒えなかった。
でも何故か逝っちゃダメな気がした。
きっと大丈夫。
ざ〜っと川の流れる音が聞こえ、初めて川を見る。
「ひっ……」
川を見ると私は思わず情けない声を出して、その場に崩れ落ちてしまった。
そんな川に流れていた物は
首に青黒いアザがついていて、目玉と舌が飛び出ている少女の死体。
酷くやせ細り、青白い男性の死体。
腕や足がおかしな方向へと折れ、骨や筋肉が顔を出している女性の死体。
羽が片方付け根から折れている鳥の死体。
後ろの左足が折れ、1cm程度の皮だけで繋がりボロボロに汚れている犬の死体。
腹や背中を何度も何度も、刃物で刺された様な痕のある猫の死体。
流れてくるほとんどは綺麗な状態だからこそ、このような痛々しい物が余計に目立ってしまう。
そして、何故か川に流されているはずなのに、死体は一切濡れていなかった。
不思議ではあるが、同時に気味が悪かった。
この時の私は痛々しい物が目に入る度、夢で見たあの景色が広がってしまい、少し過呼吸になる。
自分を落ち着かせる様に1度目を瞑り、深呼吸をする。
しばらくの間深呼吸をして、落ち着いた頃
川を出来るだけ見ない様にしながら 川と並行に立ち、前を向く。
「大丈夫。」
そう、大きな独り言を呟き大きく息を吸ってから走り出す。
本当にこれでいいのかなんて分からない。
もしかしたら、ここに来たのは神様からのプレゼントなのかも知れない。
綺麗な状態での「死」
そんなプレゼントだったのかも知れない。
人間はいつどんな風に死ぬかなんて分からない。
誰しも老衰で死ぬとは限らない。
もちろん、私も例外では無い。今、帰った所で1週間も生きれないかも知れない。
それでも私は3人に会いたい。
会いたい。
会わなきゃいけない
そう強く想うと私の視界が真っ白な光に包まれた。
そこからの記憶は残っていない。
ピッ…ピッ…
と機械的な音に目が覚める。
「(ここはどこ?)」
と辺りを見渡そうとしても、固まってしまっているのか動かなかった。
仕方なく前を向いて見ると、白い天井があった。
左側に窓があるのか、左側だけ自然光がさしていてどこかアマガイを思い出し、安心する。
香りは消毒された様ななんだか薬品臭い香りがして、鼻の奥の方をツンと刺す。
お世辞でもいい香りとは言えなかった。
ガラガラと右側から聞こえ気持ち目線をそちらにやると、パタパタと足音が聞こえ
「美心さ〜ん。お昼ですよ〜」
と可愛らしい女性の声が聞こえた。
「(美心って誰の事だろう?)」
とぼーっと考えて居ると、 私の視界に声の主だと思われる少しふっくらとした可愛らしい見た目のピンク色の髪を結んだ、看護師さんが視界に入った。
私と目があった事に驚いたのか
「えっ!?」
と少し声を漏らし
「あ、起きたんですね!えっと…先生を呼んで来るので、ちょっと待っててください」
そう言うと次は少し駆け足でまたガラガラとドアを開けどこかへと行ってしまった。
しばらくすると先程の看護師さんと少し厳しそうな黒髪の看護師さんと、優しそうな顔付きの白髪のおじいちゃんの先生が私の視界に入った。
「声出せますか〜?」
「今から心臓の音聞きますよ〜」
と少し検査をして数分経つと少しづつ首を動かせる様になっていて、先生も看護師さんも目を見開いて驚いていた。
するとガラガラっとドアが開き、そちらを見ると
慌てた様に老夫婦がドアを開けていて私を見た途端嬉しそうに目に涙を沢山溜めていた。
「(この人達は…?)」
そんな事を考えながら、黒髪の看護師さんがその老夫婦を落ち着かせるように支えながらこちらへと案内しているのを眺めていた。
老夫婦が私の側にある椅子に座って
「よかった…本当によかった…」
とポロポロと涙を零し、私にこう言う。
「美心、おかえり。」
「(そもそも私は美心では無くサクラなんだけど。)」
そう思いながらなんだか返さないのも気まづくて、思わず老夫婦に
「こ…んにちは…?」
そう返した。
コメント
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一気見してきた すっごいよ、まじで 語彙力なくてごめん。 タヒ生観がリアルで怖かった…サクラが連れ回されてるのはなんで?なんで美心って呼ばれてるの?美心?もうとにかく!ほんとに細く作られてて魅了された!やっばいよ!これ!
突然タイトルで「こんにちは」って言われたからビビり散らかした ちょっと!!!あと1話なの!!?早いって!!!!
ひらがなに漢字でルビ振るのめっちゃ好き 頼むから幸せになってくれ……!