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与太郎が石藤の拳を正面から受け、バタリと倒れ伏したその瞬間。
謎の女がまとっていた薄衣が、夜風に煽られるようにふわりと舞い上がった。
そこにあったのは、人間のものではない。
透き通るような白い肌、切れ長の瞳からは黄金の光が漏れ、背後には後光のような円い光が浮かんでいる。
石藤: 「ひっ……!? な、なんだい、その化け物染みたツラは! 驚かせやがって!」
石 藤は恐怖を打ち消すように叫ぶが、彼女の背後にべったりと張り付いていた「ガリガリの貧乏神」が、女の神々しさに耐えきれず、石藤の首を締め上げながら悲鳴を上げる。
謎の女: 「……哀れな。己の器量を汚し、人の情けを土足で踏みにじる者よ。お前が欲した『美』も『富』も、これからはその醜い心に見合った姿へと変わるがよい」
女がそっと指を差すと、石藤の着ていた極彩色の着物が、瞬く間にドブネズミのような色のボロ布に変わり、その豊かな黒髪はバサバサと抜け落ちていった。
石藤: 「あぁっ!? あたいの髪が! あたいの着物が! 徳兵衛、なんとかしておくれよ!」
徳兵衛: 「知るか! 俺だって、さっきから体が動かねぇんだ!」
徳兵衛の体からは、今まで奪ってきた金銀の重みが「鉛」となってのしかかり、地面にめり込んでいく。
謎の女: 「去れ。お前たちの居場所は、ここにはない」
女が袖をひと振りすると、激しい突風が二人を巻き込み、竹林の外へと放り出しました。
石藤と徳兵衛が目を覚ますと、そこは与太郎を追い出したあのボロ長屋の路地裏でした。
石藤: 「……痛てて……。あぁ、なんて夢を見てたんだい。……えっ? 徳兵衛、お前、その顔はどうしたんだい!?」
徳兵衛: 「なんだと? お前こそ……うわぁ! 化け物だ!」
鏡もいらない。お互いの顔を見れば分かる。
石藤は、あれほど自慢だった美女の面影はどこへやら、「意地の悪さがそのまま顔に出たような、歪んだ老婆」のような顔に。
徳兵衛は、金持ちの威厳など欠片もない、「ただの薄汚れた、ネズミのような男」に成り果てていた。
二人はお互いの醜さを罵り合いながら、また血みどろの喧嘩を始める。しかし、彼らがどんなに怒鳴っても、周囲の人は「汚い浮浪者が騒いでるよ」と、石を投げて避けて通るだけだった。
竹林の家で目を覚ました与太郎。頬の腫れは、女がそっと指で触れると、不思議と消えていました。
与太郎: 「……あぁ。お姉さん、無事だったんだね。良かった……。あたい、てっきりお姉さんが消えちゃうんじゃないかって怖かったよ」
謎の女: 「……与太郎様。私は消えませぬ。……ですが、これからは少し、形を変えて貴方様のお側にいましょう」
女がそう言うと、彼女の姿はみるみる小さくなり、与太郎がいつも「内職」で触れていた一反の「真っ白な布」へと吸い込まれていきました。
与太郎: 「えっ? お姉さん!? ……あぁ、布になっちゃった。……でも、不思議だ。この布、お姉さんの匂いがするや」
与太郎は、その布を大切に抱え、町へと歩き出した。
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