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向日葵は、夏の光をそのまま形にしたような花だ。
高く伸びた茎の先で、太陽を見つめるように大きな顔を掲げ、ためらいもなく空の明るさを受け止める。
黄色い花びらは、希望を並べた放射線のように広がり、見る者の心まで照らしてしまう。
その姿はいつも前向きで、影ができてもなお光のほうへ向かおうとする強さを秘めている。
けれど近づけば、ざらりとした茎や重たい花盤に、夏を耐え抜くためのたくましさと、静かな忍耐が感じられる。
向日葵は、明るさだけで咲いているのではないことを知っている。
照りつける日差しの重さを引き受けながら、それでも顔を上げ続ける――
そんな、無言の勇気を持つ花である。
そんな姿に魅入ってしまった。
まだまだ暑さは残る、残暑の時期。
9月というのに加減をしらない太陽を睨みつける。
「あっつい〜〜〜〜〜〜」
溶けちゃうよ〜〜……。と、項垂れる”天乃”絵斗。
まだ慣れないそれに、違和感を覚える。
彼の名前は天乃絵斗。中学1年生だ。
もと、戌亥絵斗。戌亥家は代々桃瀬家に仕えている。それと共に、我が猿山家も同じく桃瀬家に仕えていた。
それなりに、関わりのある家系だった。
詳しいことは、あまり分からない。知りたくない。
ただ、戌亥家は離婚した。天乃絵斗は再婚の際の名前である。
これが事実だ。それ以上も以下もない。
本人は、気にする様子なく普段どうりに笑っている。
「暑いな。もう9月なのに」
「ほんとにそれ!!夏いつ終わるんだよ〜〜」
早く秋来てくれないかなぁ、と嘆く絵斗に
「秋ないと思うぞ。どうせすぐ冬だ」
「ひどいっ!!別にいいもん!!冬好きだもん!!!」
きっと単純に今が暑いから言っているだけだろう。今度は「冬いつ終わるんだよ〜!!早く春来てくれないかなぁ」という姿が目に浮かんだ。
「……お前どーせ冬になっても寒い寒い騒ぎ散らかすんだろ」
「それは……そう」
「認めた」
駄菓子屋よってアイス買おーぜ!!と、太陽に負けないほど明るい笑みを彼は浮かべた。
「おいしー!!」
横でガリガリくんにがっつく絵斗を横目に見る。
「天乃はさー、向日葵ってどう思う?」
向日葵?いきなりだね。」
そーだなー。と、意外に真剣に取り合ってくれる絵斗に少し驚く。
「好きだよ。いつも太陽の方向いてて、眩しくないのかなって思う。俺だったら、すぐ下むいちゃう。強いよね。向日葵って」
そうゆうとこが好き!!と明るく答える絵斗。
あまりに説得力があることを言うものだから、無意識に少し目を見開いた。
「おまえ…ちゃんと考えることできんだな」
「は!?いつもちゃんと考えてないとでも?」
「うん」
そう言うと横でぎゃーぎゃーと騒ぎ出す。
そんな彼から視線を外し太陽をみた。
だでさえ日陰で見ているのに、変わらず地を照らし続ける。
眩しくて、目の奥がツンと痛くなってくる。
そのまま下を向いた。
さっきの絵斗の話を聞いてからだと、より自分の弱さを実感した。
向日葵は、背が高い。俺には届きそうもなくて、見上げるしかない。
気が悪いので、残りのアイスを一口で口に入れる。
「あ、当たりだ」
「え゛!?」
えーいいなぁ…譲って?と目を輝かせる絵斗。
その姿をしばらく見てから、アイスの棒を一度見る。
あたり
それをゴミ箱に投げ捨てた。
「え!?ちょ」
「w」
絵斗はゴミ箱と猿山の手を交互に見る。
何回かそれを繰り返した。
「なんで捨てたの!?!?」
「んー…」
ぴったりな言葉が見つからない。
「ただの気分」
駄菓子屋からの帰り道、俺は絵斗の横を歩いていた。
歩幅は違うくても、歩くテンポは同じだ。
チラリと足元を見た。
使い古されたスニーカー。軽い足取り。
「……」
言葉がでなかった。
「呂戊太〜まっててねぇ〜 」
「ほんと好きだよなw」
「呂戊太はかわいいぞ!!仕方ないから今度俺ん家来い」
彼には、呂戊太。という弟がいる。できた。
中学の初めの頃、苗字を変えた絵斗が、写真を見せてきた。
栗色の髪に、つぶらな桃色の瞳。彼はそれを弟だと言った。それからというもの、彼の生活は弟に染まっていった。
口を開ければ呂戊太呂戊太、ブラコンめ。
別に嫌というわけではない。むしろ好きだ。
ただ、羨ましい。
「あ、向日葵」
「ほんとだ!!向日葵いっぱい!!」
初めて通った道だったから、こんなところにひまわり畑があることは知らなかった。
夕日に照らされ、黄色が酷く際立っている。
もうすぐ沈む太陽を、名残惜しそうに見つめている。
「向日葵、いいよなぁ」
「どしたのらだぁ。今日は向日葵ばっかだね」
「…たまたまだろ」
そっかぁ。と絵斗が立ち止まる。俺もその一歩手前で立ち止まった。
「…」
昼間はあんなにうるさかったのに、今はただ、静かにそこにいる絵斗。
橙に照らされ、彼の髪が綺麗に夕日に染まっていく。瞳は太陽を閉じ込めたようだ。
落ち着いて太陽を眺める絵斗と、その横で揺れる向日葵を見た。
ああ、やっぱり似ている。
「きれーだね」
1言ぽつりと呟くと、絵斗はこちらを見た。
太陽と目が合う。
やっぱり眩しくて目を細める。
「そうだな」
「このまま、ずっといたいな」
ぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。
絵斗はこっちを見ると、目を細めた。
「未来を見つめる」
そう、絵斗が呟いた。
「向日葵の花言葉のひとつ」
きっと未来は明るい。そう言って、向日葵のように、笑った。
まわりの向日葵達も、それを見て笑った。
「あーまの」
今では呼び慣れたそれだ。
愛おしそうに、見つめる。
「ら、だ」
ぼとり。と、それが音を立てて落ちた。
「あらら」
知っているかい。天乃。向日葵の最期を。
頭を垂れる姿が「打首」を連想させ 不吉とされてるんだよ。
ほら、天乃にそっくり。
もう枯れてしまったそれを、丁寧に抱きしめた。
前までは背が高くて届かなかったのに、今は俺の手のなかにある。
「やっぱり天乃は、向日葵だね」
end
おはなししよう
私、花言葉が好きなんです(唐突)
花っていいですよね。綺麗で儚くて、最期がある。
私、ぺんさんとか天乃刑事見て思うんです。
向日葵や〜〜んって。
ということで!!書きました笑
向日葵の最期っていうのは咲き終わるころですね。枯れるとなると、カビたり白くなったりするらしいです。
人間もそんな感じですよね。すてき〜
あんま長く話すとあれなんで、このへんで
では!!
NEXT…♡500