テラーノベル
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※ここから、当分、いじめ話続く。中学・高校ごちゃ混ぜに。100話くらいまでお付き合い下さい汗
……番外編なのに……?汗
教室に、遥の席はある。だが、それは「誰も座らない」ことを示すための印のようだった。
隣の席の椅子はいつも空いている。机には誰かが書いた黒い落書きが何層にも重なっていて、インクのにじみがまるで血痕のように染みついている。消しても、翌日にはまた書かれる。
「ゴミ」「いらない」「臭い」「死ね」。
誰もそれを不自然だとは思わない。教師さえも、それを避けて見ないふりをする。
給食の配膳では、遥の分だけ配られない。あっても、床に落とされ、誰かの足で踏まれる。食べれば「汚い」、食べなければ「調子に乗ってる」と罵られる。どちらを選んでも地獄だ。
授業中も、遥が何かを答えれば、クスクスと笑いが起こる。正解でも間違いでも、笑われる。
「気持ち悪い声」「生きてる意味あるの?」「答えんなって」。
そんな囁きが、前の席からも、後ろの席からも聞こえてくる。
それらの言葉は、もう遥の皮膚の下に入り込んでいる。耳を塞いでも、心に直接響いてくる。無視もされない。常に見張られ、蔑まれ、玩具にされる。教室の空気が、遥という存在を憎むことで統一されているようだった。
ある日、誰かが遥の鞄をトイレに投げ捨てた。濡れたノートに、他人の吐瀉物がかかっていた。誰の仕業か、遥は尋ねなかった。ただ静かに拾い、洗い場で流す。指先が震えても、涙は流さない。泣けば、「泣いた」「効いてる」と嗤われるから。
遥の存在は、教室の「負」を引き受けるための標本のようだった。誰かの機嫌をとるため、誰かの不満を和らげるために、殴られ、蹴られ、辱められる。その「当たり前」の構造のなかで、遥は今日もただ、存在している。壊れないまま、壊され続けて。
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