月曜日、理紗子は羽田空港へ向かっていた。
いよいよ今日から三泊四日の石垣島への旅だ。
急ぎの仕事は全て終わらせた。
せっかくの石垣島への一人旅、余計な仕事は持って行きたくなかった。
だから昨日まで必死でパソコンに張り付いて全てを片付けてきた。
頑張ったお陰で、石垣島では新作の事だけに集中すればいい。
理紗子は空港へ着くとすぐにカフェに入った。
ここ最近朝カフェにも行けなかったので、今日はカフェでゆっくり朝食を取る事にした。
もちろんカフェは『cafe over the moon』だ。
理紗子は早速注文したコーヒーとサンドイッチの写真を撮る。
このカフェが空港内の店だとわかるようにやんわりと匂わせる。
その写真を、
【行ってきます!】
という言葉と共にSNSにアップした。
この投稿を見た人は、理紗子がこれから飛行機でどこかへ出かけるのだと察しがつくだろう。
カフェを出ると、ちょうど搭乗アナウンスが始まったので理紗子はそのまま搭乗口へ向かった。
九月という事もあり、夏休みのような家族連れの姿はほとんど見られなかった。
その代わりに大学生くらいの若者のグループがちらほらといる。
それ以外は、高齢の夫婦や、スーツを着た出張族。
そして島に帰省する若者や、理紗子のようなフリーランス風の男女の姿が目立った。
飛行機での理紗子の座席は、後方左の窓際だった。
座席に腰を下ろした理紗子はすぐにスマホを取り出すと、窓の外に広がる滑走路を写真に撮った。
この写真はまた後でSNSにアップしようと理紗子は思った。
滑走路を飛行機がゆっくりと動き始めた。
やがて離陸許可がおりると、飛行機は轟音を立てて離陸態勢に入る。
飛行機が離陸する瞬間はいつもワクワクする。
そしてその先にはエメラルドグリーンの海が待っているのだ。
理紗子は美しい島の風景を思い浮かべながら耳にイヤホンをつけた。
そしてお気に入りの音楽を聴きながらそのままそっと目を閉じた。
しばらくすると、飛行機のガタガタと言う振動で目が覚めた。
飛行機が着陸したようだ。
ベルトサインが消えると、周りの乗客が一斉に荷物を取り出し始める。
笑顔のキャビンアテンダントに会釈をして飛行機を出ると、
もわっとした暑さの搭乗ブリッジが出迎える。
通路を渡って行くと、漸く空港内へ到着した。
空港の到着ロビーで荷物を受け取ると、理紗子はすぐにタクシー乗り場へ向かった。
理紗子は免許は持っているが、ペーパードライバーなのでレンタカーは借りていない。
今回の旅は普通の観光のようにあちこちへ行く訳ではないので、
外出の際はその都度タクシーを呼べばなんとかなるだろう。
理紗子は一番先頭のタクシーへ乗り込むと、
「底地シーサイドリゾートホテルまでお願いします」
と運転手に告げた。
運転手は「はいよ」と言ってすぐに車をスタートさせた。
「お客さんは本土からかい?」
「はい、東京からです」
「そりゃあ遠いとこからよくきたさー。楽しんでくぃみそーれ」
60代後半と思われるタクシー運転手は、日に焼けた顔を緩ませながら笑顔で言った。
「ありがとうございます」
タクシーから外を眺めていると、離島らしい緩い景色がゆっくりと流れていく。
街も人もすれ違う車ものんびりしていた。
まさに『島時間』だ。
理紗子はこのゆったりとした島時間が大好きだった。
しばらく進むと、両側にサトウキビ畑が見えてきた。
サトウキビたちは、青空に向かって一糸乱れぬ姿で真っ直ぐに背筋を伸ばしている。
収穫まではまだ少しありそうだ。
こんな景色を見ていると、今自分が離島にいるのだなぁと実感する。
島に着いてからまだ30分も経っていないのに、理紗子はもう既に自分がどっぷりと癒されている事に気づいた。
こんな環境にいたら小説のイメージやアイディアが、次から次へと湧いてきそうだ。
(来て良かった!)
タクシーがホテルに着くまでの間、理紗子は島の優しい風景をじっと見つめていた。
コメント
3件
『島時間』で、アイディアが浮かぶのはとても素敵な事だけど、写真をすぐにSNSにアップするのは現在の自分の行動を晒してるようなものだし危険なのでは⁉️⚠️⚠️
石垣島、楽しみですね....✈️🏝️ 健吾さんは 追いかけて来るかなぁ❓️ワクワク😆🎶
石垣〜✈️スゴく楽しみ🎵健吾は来るかな⁉️(≖ᴗ≖๑)ニヒッ