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ヤンデレ公爵様は死に戻り令嬢に愛されたい

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ヤンデレ公爵様は死に戻り令嬢に愛されたい

87 - 【番外編】リューゲの生涯・第3話(リューゲ・談)

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2024年12月17日

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結婚後の二人は“大神官”と“聖女”という身にありながら、本当に仲睦まじいものだった。異種族間の友好の証であるとも捉えられ、誰も二人の関係に不満を抱いてる様な様子は無かった。


——ワタシと、幼馴染であるニオスを除いては。


結婚式の辺りからワタシは黒魔術にのめり込んでいったものの、黒魔術に関して書かれた書物はそうそう無く、修得には苦戦を強いられた。代償が大き過ぎたり、役立ちそうなものではなかったりする。ワタシには神力が無く、魔力も少ししか持ち合わせていないのも原因だった。禁忌では無いにしても、発動代償の重たさのせいで生み出した神にすら捨て去られてしまった魔法技術である『黒魔術』。これだけを頼りにこの先の人生を歩む事に難儀し、ワタシは同時並行して正攻法でもじわじわと、いつかワタシが姉と成り代われないかと動いてもみた。

人格者であるアレの悪い噂を流しても無駄なので、太陽の神官達とは接点の少ないナハトの方をどうにか出来まいかと試みる。発言の揚げ足を取ってみたり、妻の妹であるワタシと浮気をしているという噂が流れる様な行動をしてみたり。


だが、二人の間には小さなヒビすら入らない。


例え不穏な噂が少し流れても、彼らの様子を見た者達はすぐに『あの話は誰かの勘違いだな』と思い至ってしまうのだ。

ならば本当に一夜を共にして仕舞えば良いと思い、ナハトの寝室に忍び込んだ事もあった。どうせ私達の顔は同じなのだ。夜の力を借りて髪色の識別が難しければ、アレと勘違いしてワタシを抱くだろう。獣人達はまさに獣の様な性欲を持て余していると聞いているし。ならばと考え、深夜に彼の寝室にワタシはネグリジェ姿で忍び込んだのだが——


朝になってもナハトは来なかった。


後々知った話。どうも彼は、毎夜の様にアレの寝室で共に過ごして、夫婦の営みに勤しんでいるらしいのだ。それはもうこの二柱を祀る神殿で皆が暮らし始めた初日から続く行動だったらしく、それを知らなかったワタシは自分の企みの浅さに恥ずかしさを感じ、全ての苛立ちをナハトの寝室にぶつけて彼の部屋を半裸の状態で飛び出した。

「リューゲ、様?」

部屋を飛び出した時、運悪く若い神官と鉢合わせてしまった。格好が格好だし、ナハトの寝室から飛び出して来たりとでかなり驚かれてしまったが、ワタシは咄嗟に「……彼ったら、激しくって」と口に指を立てながら呟いた。まだ開く扉の奥に見える部屋の中は荒れているし、ワタシの格好も格好だ。この時は流石に、『ナハトが姉妹の両方に手を出しているのではないか』と噂が立ったが、それも長くは続かず、この行動も徒労に終わってしまった。

姉だけを見て、姉の傍を離れず、姉にしか笑いかけないナハトは『浮気者』のレッテルを貼るには難しい相手だったみたいだ。


(……そんな一途な想いを、ワタシに向けて貰えたらどんなに幸せだろうか)


次第にワタシは、そんな考えにも取り憑かれ始めた。

同時期に、ワタシはやっと、アレに成り代わる方法を発見した。思った通り、その方法は黒魔術の中にあったのだ。代償は大きかったが『聖女』の力を得れば跳ね返せるはずだ。アレの力はそれ程までに強大なのだから。

問題はアレの能力の高さだ。聖女のくせに武芸まで達者では簡単には手出しが出来ない。護衛役よりも強いから黒魔術を使うのも困難だ。だが運が良い事に、アレの妊娠が発覚した。


(腹が大きくなれば、抵抗も出来ないわ!)


アレと同レベルにあるナハトさえどうにか出来れば、ワタシの長年の夢が叶う。そう考えたワタシはすぐに周囲の囲い込みを図った。まずは幼馴染であるニオスから。彼は二人の関係を快く思っていないから、言葉に毒を混ぜて耳から流し込むのは本当に容易かった。


『姉を、自分のモノにしたくはない?』

『ワタシは、その方法を知っているわ』

『姉の食らえば、永遠に“聖女・カルム”は貴方のモノになるのよ——』


何度も囁きかけ、黒魔術をも使ってニオスの心を侵食していく。他にも、アレを昔から慕っていた三人の神官も取り込み、ワタシは淡々と機会を伺った。



臨月が近づき、ワタシの心に焦りが出始めた頃、天が味方した。ナハトの親戚の結婚が決まり、大神官である彼に進行を頼みたいと連絡が来たのだ。獣人達の祖国であるフェガリ王国は馬や馬車でも簡単に戻れる距離ではない。だがまだ不安定な転移魔法を使うとなると身重の体では同行は出来ないので、今回アレは留守番をする事に決まった。


——機会は、熟した。


そう確信したワタシは、ナハトが帰省したその日に計画を実行に移した。ワタシを含めた五人の神官と共に、神殿の祭壇で神々に祈りを捧げるアレの細い首を、寝首を掻いてやったのだ。

信頼していた四人の神官と双子の妹に殺される可能性なんて一度も考えた事なんかなかったのだろう。抵抗する間も無く、自分の大きな腹を庇うようにしながらアレは祭壇前の階段の上で倒れ、大量の血を流しながら緩やかに息絶えていった。短剣を持ち、血塗れの神官服姿でアレを見下ろすワタシを見ながら何を思ったのかは知る由もないが、ただ悲しそうな顔をするだけで、恨みつらみを口にはしなかった。


最後までアレは、……姉は、『聖女』だった。


ワタシとアレの間に生まれながらにあった見えない壁をやっと排除出来たはずなのにスッキリしないまま、計画通りにアレの体を五人で捌いでいく。黙々と、淡々と、瞳に闇を宿しながら解体した。四人はアレの腕と脚を分けて食らい、その甲斐あって聖女の力の片鱗を手に入れたが、その代償としてその身に『スティグマ』を神々に刻まれてしまった。大罪人の烙印だが……どうせその事実を知るのは私だけだ。

なので私達はそれを『聖痕』であると、カリスマ性が高くなる能力の持つ“王冠”の能力を得た神官に宣言させた。

そしてワタシに見向きもしなかったナハトには、本人が居ない事をいい事に『浮気者』の烙印を押し、他に愛人がいて此処への帰還の予定なんか実は無く、それを知ったカルムは自害したのだと皆には告げた。当然、月の神官達は激怒したが、邪魔者でしかない彼らは早々に祖国へ強制送還させて徹底的に邪魔者は排除した。


ワタシはと言えば、アレの首から上の皮と頭皮を綺麗に剥ぎ取り、ソレをこの身に被って美しい髪色を手に入れた。黒魔術を使って完全に一体化し——


ワタシは『二代目聖女・リューゲ』となったのだ。


桜色だった美しいあの瞳も抉り出して我が物となったし、アレの部位のおかげで神力も目覚めた。やっと望む通りの体を手に入れた、ワタシはとうとう『姉』を超えたのだ!あとはそう……この美貌で、アレの夫であったナハトを手に入れさえすれば、ワタシは『理想の自分』となれるのだ。

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