テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
車は県道206号線をひたすら真っ直ぐ進んでいた。
途中、白砂とエメラルドグリーンの海が見渡せる場所があった。
何度見てもその美しい海は飽きる事がない。
しばらく進むと今度は放牧地が見えて来た。
雄大に広がる牧場の間を通り過ぎてしばらく進むと、緩い上り坂があった。
その坂を上ってカーブを曲がった先に目指す灯台があった。
車は本日三つ目の灯台の平久保崎灯台へ到着した。
駐車場へ車を停めると、二人はすぐに灯台へ向かった。
灯台入口と表示されている坂道を上って行くと、右手に美しい海が見えてきた。
その海は、様々な色味が混ざり合い宝石のオパールのような色をしていた。
海を眺めながら歩いていると平久保崎灯台へ到着した。
石垣島最北端の地であるこの灯台から眺める景色は壮大だった。
海の色は二種類の色で構成されている。
眼下に広がるサンゴ礁の海はセルリアンブルーに煌めき、
そこから奥は鮮やかなマリンブルーをしていた。
「綺麗…….」
理紗子はあまりの美しさに、それ以上言葉が出ないようだった。
「右が太平洋で左が東シナ海か、ダイナミックだな」
健吾はそう呟くと、目の前に広がる景色をじっと見つめた。
二人は今、同じ感動を共有していた。
そしてしばらくの間無言で目の前に広がる絶景を見つめ続けた。
平久保崎灯台を後にした二人は、最後の目的地へと向かう。
それは石垣島観光でも人気スポットの上位に入る『川平湾』だった。
理紗子が石垣島に来る際は必ず川平湾へ立ち寄る。
それくらい理紗子にとって好きな場所だった。
渋滞とは無縁の道を走り続けると、やがて川平湾へ到着した。
駐車場に車を停めると、二人はすぐにその有名な景勝地へ向かって歩き始めた。
途中、何軒もの土産物屋が並んでいた。
店ではグラスボート遊覧船のチケットを販売している。
健吾はその看板を見て、
「グラスボートにも乗ってみる?」
と聞いたので理紗子は嬉しそうに頷いた。
そしていよいよ川平湾へ到着した。
浜へ降りると、真っ白な砂浜が二人を迎えてくれた。
フワフワとした感触の歩き心地を楽しみながらしばらく歩き続けると、目の前に美しい光景が現れた。
「全然変わってないわ! 前に見た時と同じ美しさ! まるで時が止まっていたかのよう…」
理紗子は笑顔で叫ぶ。
「俺もここは久しぶりだな。前に来たのは五年前くらいかな? 相変わらず綺麗だね」
「五年前は誰と来たのかなぁ?」
理紗子が意地の悪い質問をすると、
「投資家仲間のヤロー達とだよ。嘘だと思うなら今度パーティーで聞いてごらん。その時は石垣島に初めて来た奴がいて、一通りの観光地を皆で回ったんだよ」
健吾は自信あり気にドヤ顔で言った。
そこまで言うのなら本当の事なのだろう。
二人が波打ち際に近づくと、日真っ黒に日焼けした愛嬌のある笑顔のおじさんがニッコリと笑って言った。
「グラスボート乗り場はこっちだよぉー」
健吾がチケットを差し出すと、おじさんは再び笑顔で言う。
「次の船はアンタたちの為に特別仕様の豪華客船だからサー! 楽しんでおいでー!」
思わずそのチャーミングなジョークに二人で笑う。
それから早速船内に入って行った。
船の中ではガラス張りの船底が見える席へ並んで座った。
そのガラス窓には、既にエメラルドグリーンの海中が映り込んでいる。
透明度はかなり高いようだ。
そこを、時折小さな魚が横切って行く。
理紗子の瞳は、期待でキラキラと輝いた。
その後数名の乗客が乗り込んでから船は出発した。
船はゴーッという轟音を立て進んで行った。
ウォッチングポイントがあると船は停まり、また次を目指して進み始める。
船内ではガイドがマイクを手に持ち、今何の魚がいるのかを瞬時に教えてくれた。
次に船が停まった瞬間、理紗子が健吾の腕を掴んで叫んだ。
「ニモっ! ニモがいる!」
理紗子が興奮して大声で叫ぶと、ガイドの男性が笑顔で言った。
「今あそこのお姉さんが言った通りこれはカクレクマノミですねー。あの映画のニモのモデルになった魚ですよー」
乗客達が一斉に理紗子の方を見たので、理紗子は恥ずかしくて顔が真っ赤になった。
そんな無邪気な理紗子に健吾の顔が綻ぶ。
ここでもまた理紗子の新たな一面を発見したような気がした。
彼女の事を知れば知るほど、もっと知りたいと思ってしまう欲望が湧き上がってくる。
そんな思い戸惑いながらも、健吾は理紗子と一緒の時間を心から楽しもうと思った。
その後も、鮮やかなブルーのスズメダイやチョウチョウウオ、そしてたまにしか出会えないとういウミガメにも遭遇し、理紗子は大興奮していた。
グラスボート見学を終えた二人は、しばらく浜辺で美しい海を眺めていた。
理紗子はスマホを取り出すと、川平湾の写真を撮り始める。
そこで健吾もスマホをポケットから出すと、カメラモードに設定して叫んだ。
「理紗子!」
波打ち際にいた理紗子が声に気づき後ろを振り返ると、健吾がシャッターを押した。
急に写真を撮られた理紗子は、
「もうっ!」
と怒っていたが、その後すぐに笑顔に戻る。
それをまた健吾が数枚写真に収める。
その時健吾はハッとした。
健吾が連れの写真を撮るのは初めてだった。
いつも女と旅行に来ると、大抵女達の方が勝手に写真を撮っている。
しかし健吾は今、自分から写真を撮っていた。
それも無意識にだ。
健吾はこの旅で、理紗子の新しい一面を発見するのと同時に自分の新しい一面も発見している事に気づいた。
彼女と一緒にいると、今まで健吾の中に隠されていたものが一つ一つ引き出されていくような気がした。
自分でも知らなかった一面が知らず知らずのうちに表に出てくる。
健吾はその事実に気づき驚いていた。
ふと見ると、理紗子がグラスボートの案内のおじさんを捕まえて何やら話している。
「一緒に撮ってもらおうよ」
理紗子が叫んだので、健吾は理紗子の傍まで行きツーショット写真を何枚か撮ってもらった。
二人がおじさんにお礼を言うと、
「いつまでもラブラブでなあ! また二人でいらっしゃい!」
おじさんは優しい笑みを浮かべて二人に言った。
コメント
5件
自分の知らなかった自分に出会えるなんて感動ですよね✨それを引き出してくれる杏樹ちゃんは健吾さんの特別な人になるのかな💓🤭 二人の今後が楽しみです❣️
健吾さん、理紗子ちゃんとの写真嬉しいでしょうね〜🤭こっちまでニマニマしちゃう!
健吾さん、もう~♥️🤭ウフフ 理紗子ちゃんに夢中ですねぇ....😍♥️♥️♥️