またパチッと目を開くと次は少し古い家の銀色のステンレスがボヤけている台所へと来た。
そこでは少しカールのかかった黒髪の30代前半の女性がトントンと野菜を切っていた。
コンロ近くにある窓からオレンジ色の光が入って来ているからきっとこの女性は夜ご飯の準備をしているのだろう。
すると
ピーンポーン
と少し遠くから音割れしたガビガビのインターホンの音が聞こえた。
「は〜い」
と女性はその場で返事をして1度手を水で洗ってから玄関へと向かう。
この時はいつも私の意思とは関係無しに人を追う私の体はここから動かなかった。
少し遠くでさっきの女性と訪ねてきたであろう男性の口論が聞こえた。
少しすると女性の「入らないで!!帰って!!」と言う言葉が聞こえズカズカと中に入って来た男性は私の居る台所へと姿を出した。
その男性は私もびっくりするくらいにガタイが良くそして、背も高い。
慌てて後を追って来た女性は食器棚とはまた別の男性の前にある細い木製のタンスを背に守る様に立った。
「そこにあるならさっさと出せ。」
そう威圧的に男性が右手を女性に差し出すと女性はその手をバチン!と叩いて震える声でも相手の目を見て強く言った。
「もうお前なんかにお金は貸さない…!!」
女性は手も足も震えていてこちらまで息を飲んでしまう。
そんな私に対して男性はチッと舌打ちをすると差し出していた手を引いて「はぁ〜」と大きいため息と共に女性が料理に使っていた包丁を手に取った。
そして目線を女性にやると
「金をくれねぇならお前はもう用済みだ。」
と包丁を女性へと向ける。
「ダメ!!やめて!!」
と出た私の声は虚しく男性は震える女性の胸へと包丁を突き刺し「生きられると困る」と言いたげに包丁を何度も何度も女性へと突き刺した。
女性は崩れ落ちる様にバタンと倒れるとピクリともうごかなくなる。
私はもはや息も出来なくなるくらいに精神的にダメージを負い、手足がガクガクと震える。
そしてやっと胸からいつもの白いもやがふわふわと浮いて来て
私を後ろに引っ張りその殺人現場から目を逸らす事が出来た。
ゆっくりと目を開きいつもの川の場所だと確認してから1度大きく深呼吸をした。
2度人がぐちゃぐちゃになるのを見た私は少しフラっとしていたが深呼吸で少しマシになった様な気がする。
そしてまたどこからか人が歩いて来る音が聞こえた。
きっとさっきの女性だろう。
また刺されてぐちゃぐちゃになっている人を見なくていけないのかと思うとまた少し過呼吸になりかける。
でもハッとした。もしかしたら目を瞑れば悲惨な姿を見ずに済むのでは…?と。
バカでも分かる様な答えに辿りつき思わず乾いた笑いが「ははっ」と出る。
そしてグッと目を瞑りながら待つと女性は何も言わずに入ったのか終始無音のまま私は後ろへと引っ張られた。
パチッと目を開けると次は気持ちの良い青空の日だった。目の前にはまだ20代前半の綺麗な黒髪ロングヘアーの女性が都会の人通りの多い道を散歩していた。
大きい横断歩道。
この時点は私は察した。
「(あぁ…また交通事故なんだ。)」
と。私はグッと目を瞑り終わるのを待った。
ドンッ!
と鈍い音が聞こえ人々の悲鳴と救急車のサイレンの音。
様々な音が1度に聞こえ ドクン、ドクン と心臓の音がいつもより大きくなった。
そんな統一性の無い音の中でも目立って聞こえたのは
ボキッ、グチャ、ブチッ
と人の体の破損を連続させる音だった。
どんな状況か見れない分様々な想像が出来てしまう。
腕が取れたのか、皮が破けたのか、骨が折れたのか、臓器が潰れたのか、顔の原型が無くなったのか。
そう思うだけでぼんやりと頭の中にイメージされてしまって吐きそう。
「ウッ…」
と思わず口に手を当てた瞬間私は後ろに引っ張られた。
吐き気が落ち着き手を離してからゆっくりと目を開くといつもの川の場所。
「ふぅ…」
と息を吐きながら胸に手を置いて心を落ち着かせる。
すると後ろからいつもと違う何かを引きづる様な音が聞こえた。
「私の…下半身は…?」
そう震えるか細い声が聞こえ、見てはいけないと思った。
でもなぜか見なくてはならない気がした。
1度深呼吸をしてゆっくり声のする方を見ると見覚えがあった。
「(どこかで…?)」
上半身を手だけで支えている黒いロングヘアーの女性。
「私の下半身はどこに行った…許さない許さないゆるさないユルサナイユルサナイ…!」
と声を荒らげる女性と共に伸びて行く髪の毛。
顔が完全に隠れた時、女性は理性を失った様に
「あ”あ”う”!!!」
と叫んで川の反対へと向かっていった。
私の体が勝手に女性を追って行くなか私は
「(この声も見た目も聞いた事ある…なんだっけ…)」
と必死に思い出そうとしていた。
少しすると雰囲気が一変した。
どうやら森に入ったようだった。辺りを見渡しすと
少し腐った木に深緑色の葉っぱ。風が吹くと葉っぱがざ〜っと揺れ、まるで何かを話している様で気味が悪い。
あ…そうだ。思い出した。ここはソメイ達と一緒にお化け退治に来た森。
3人は余裕そうに雑談なんかしていて私だけがビクビクと怯えていた森。
そう。つまり私がさっき目を瞑り乗り越えた交通事故は私たちが退治した幽霊の人間時代の死に方だったのだ。
1度知って要る場所だと安心して幽霊の様子を見ていると電気1つ無い暗いアマガイの森から聞き馴染みがあって懐かしい。 そんな声がした。
ソメイ、ヤエ、シダレ。そして私。
その4人の会話だった。
ここからは昔の私が体験した流れで事が進んで行った。
「あ”ぁ”う”!!!!」
と声を出して襲おうとした幽霊はソメイとヤエによって阻止されてしまい。
そのまま無言のソメイに蹴られていた。
「えぇぇ!?物理攻撃だったの!?」
と思わず声を出してしまっが相手には聞こえない事を思い出し肩を撫で下ろした。
シダレに目を隠され困惑している私をよそに
ソメイとヤエはしっかりと痛そうな力加減で幽霊に物理攻撃攻撃をしていた。
「いたい…いたいよぉ…」
「2人ともサクラが居るんだから早くしろよな〜」
「わかってるよ〜」
と1度聞いた事のあるセリフを聞いてこんな状況だったのか…と苦笑いをした。
「つぎは…かわ、さわるから…やめてぇ…」
と幽霊が言うとキラキラとした白いラメの様になり上へと上がって行った。
それに合わせて私はまた後ろへと引っ張られた。
パチッと目を開けると幽霊は川の近くまで来ていて
「ふぅー…」
と息を吐いてから意を決して川に両手を入れそのまま川へと倒れて優しく運ばれて行った。
これで終わりかと油断しているとまた私は後ろへと引っ張られてしまった。
コメント
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グロい……深い……面白い……… いろんな感情がゴッチャゴチャになって爆発しそう
やべぇよ〜やべぇよ〜…… やべぇけど読む手が止まらないよ〜
あぁ〜・・・そこに繋がるのか・・・ どんどんサクラちゃんの心が崩壊して行ってるのが見て分かる 一周まわって冷静になったんだろうな・・・ ま、まだ終わりじゃないんですか