5月17日。
朝の空は、少しだけ夏の匂いを帯びていた。
晴れていたのに、風はどこか冷たかった。
「誕生日おめでとう!!」
楽屋で会ったメンバーの数人が、笑顔で声をかけてくれた。
スケジュールの都合で顔を合わせれなかったメンバーからは、個人でメッセージが届いている。
『今日会えないけど、ちゃんと祝ってるからな〜!』
『終わったら電話するわ!』
その中にあった、愛おしい人のメッセージ。
🖤『照くん、誕生日おめでとう。
今日、行けそうにないかも…ほんとにごめんね。』
💛「そっか……」
スマホの画面を伏せて、カバンにしまった。
もちろん、会えないのはわかってた。
あいつが今めちゃくちゃ忙しいのも、わかってる。
でも、少しだけ。
ほんの少しだけ、どこかで期待していた自分がいた。
仕事が終わって、少し寄り道をしてから家に帰った。
手には、小さなチョコのケーキの入った紙袋。
玄関を開けて
💛「…ただいま」
と小さく呟いたけれど、もちろん誰の返事もない。
薄暗いリビング。カーテン越しの夕焼けが、部屋の端っこだけを赤く染めていた。
服を脱いで、ゆるめのスウェットに着替える。
鍛えた体が心なしか、今日はやけに重く感じた。
俺は一人、リビングのソファにちょこんと座る。
三角座りで、背中を小さく丸め、スマホをじっと見つめる。
朝、めめからのメッセージを返したが、既読にならないままだった。
💛「仕方ねぇよな…」
ぽつりとこぼした声は、思ったより弱々しくて、静かな部屋に消えていった。
めめが忙しいことは分かってる。
あいつのことだ。きっと罪悪感に潰されそ
うになりながら、今も仕事してるんだろう。
そう思えば、強がるのも簡単なはずだった。──なのに。
💛「……」
ソファに寝転び、目を伏せ、ぎゅっと膝を抱えて、眠るように身を丸める。
次第に意識が遠のいていく──
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