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コメント
1件
うわ……第81話、めちゃくちゃ苦しかったです……。亜紀さんの「息ができない」っていう感覚、すごく伝わってきました。遼さんの冷たい態度と、あの「黙りか」の一言が刺さる。最後に今泉さんの温もりを求めるシーン、切なすぎて胸がぎゅっとなりました。さくらさん、この重くて繊細な空気感、本当に素敵です。次が気になります……!
妻である私の言葉が、夫である遼の価値を表す……
覚悟をしてから口に出せだなんて……狡い人。
『私の友人と関係があるの?』
妻の友人と関係を持つような浅はかで愚かな男だと――
私が口にしようとしている言葉は、私が下す夫への評価。
……遼、あなたはそう言いたいのね。
先手を打ってそんなことを言われたら……
憶測でしかない「彼への評価」を、軽々しく口にできるはずがない。
自分に歯向かおうとする相手には、芽を摘むどころか、芽が出る前に土ごと潰してしまう。
それが、あなたのやり方。
冷酷な彼の視線が、逆らえば私の精神まで握り潰そうと見張っている。
身体ごと地の底へ引きずり込まれ、負の感情に支配されていく心。
苦しい……
息ができない……
首を締め上げられているような感覚に襲われ、喘ぐように大きく息を吸い込んだ。
「酷い……」
悲痛に満ちた声が、喉の奥から絞り出された。
「はっ? 何が酷いんだよ。
……何を言おうとしたのか知らないけど。言葉にできないほど酷いことを頭に巡らせてたのは、亜紀の方だろ?」
「……」
「黙りか……だったら、もういいや。
俺、今日中にこれ読み終えたいんだけど」
遼は深いため息をついたあと、右手の人差し指で開いた本のページを軽く叩いた。
その音が、まるで私を威嚇するように耳へねじ込まれた。
「ごめんなさい……」
私は目を伏せ、弱々しい声を漏らす。
二人の沈黙の間を流れるヴァイオリンの音色。
四本の弦の上を踊る弓毛の軽快な旋律が、まるで私を嘲笑っているように聞こえた。
「風呂、入ってこいよ。雨で体が冷えただろ」
すでに文字を目で追っている夫が、ぽつりと言う。
「うん……」
「ああ、それと今日は俺はここで寝る。あとで毛布持ってきて」
「うん……」
私を二度と見ようともせず、単調な言葉だけを置き去りにする夫。
涙を堪え、掠れた声で返事をすると、私は夫に背を向け、静かにリビングの扉を閉めた。
入浴を終え、バスタオルで髪を拭きながら寝室に入る。
二つ並んだベッドに目をやると、すでに夫のベッドからは毛布が抜かれ、羽毛布団は捲られたままになっていた。
「……本当にリビングで寝るんだ。
煩わしい妻とは、同じ部屋で寝たくもないって?」
皮肉を込めた独り言を呟き、大きなため息とともにベッドへ倒れ込んだ。
静まり返った部屋に身を沈める。
「結局、何も聞けなかった……」
力のない声が、ぽつりと漏れ落ちた。
仰向けになった私は、四肢の力を抜いたまま天井を見つめる。
遼は私に、
『酔っぱらいの友達に聞けばいいだろ!』
と、躊躇なく言った。
それは、本当に何も疚しいことがないから?
遼と楓ちゃんは、本当に無関係なのだろうか……。
私と彼女が友人であることを、遼は以前から知っている。
その友人に手を出す?
確かに、そんな愚かな男だとは思いたくない。
しかし――
どうしても頭から離れない疑惑。
胸の奥をじわりと疼かせる、この胸騒ぎ。
これが、女の第六感というものなのだろうか。
天井から視線を外し、ゆっくりと身体を横へ向ける。
うつ伏せになって目を閉じると、髪の水分を含んだシーツが頬に触れ、ひやりと冷たかった。
濡れたシーツへ顔を埋めたまま、静かに瞼を閉じる。
……こうして目を閉じていれば、苦しまずに済むの?
こうして冷たいものに慣れてしまえば、苦しまずに済むの?
寒い……
寒くて凍えそう……
お願い。
ここへ来て。
ただ私を抱きしめてほしい……
――今泉さん。
ベッドの上で、次第に冷えていく身体。
私は小さく身を丸め、今泉さんが与えてくれた幻のような温もりを求めていた……。