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一方陸も、目の前の美味しそうな食事よりもつい華子方へ目が行ってしまう。


華子はシャワーを浴びた後はスッピンのままだった。


化粧をしていない華子の顔は今まで何度も見ていたが、今目の前にいる華子になぜか陸はつい目を奪われてしまう。

華子の肌は先ほど触れた時よりも艶やかさを増し、薄ピンク色の唇がなんとも言えずセクシーで思わず吸い付きたくなる。

カットソーから見える胸元の白い肌はすぐにでもキスをしたくなるような妖艶さだ。


そしてその身体からはいつもとは違う香りが漂っていた。


おそらく、普段愛用しているボディクリームが荷物と一緒に届いたのだろう。

その香りは上品で優雅で、そしてほんのりセクシーな甘い香りを放ちまるで陸を誘惑しているかのようだった。



(あぁ今すぐにでも押し倒してまたあの胸に顔を埋めたい)



陸はそんな思いに囚われていたが、その思いをなんとかグッと押しとどめる。

この歳になり、まさか自分がこんなに一人の女性を欲するなんて思ってもいなかった。


(自分の欲望を制御出来ないなんて、まるで青いガキと一緒じゃないか)


陸は思わずフッと笑った。


こんな事ばかりを考えているとまともに食事も楽しめないと思った陸は、なんとか料理へ意識を向けようと努力した。

そして一度姿勢を正してから華子に言った。


「どれも美味いな。華子がこんなに料理上手だとは思わなかったよ」


それを聞いた華子は、ほっぺたをぷくっと膨らませて言った。


「それってどういう意味よぉー」

「アハハ、褒めてるんじゃないか」

「そうなの? なんか違って聞こえるわー」

「ハハッ、いや、マジで超美味いよ」

「まあいいわ、素直に受け取る事にしましょう」


華子はフフッと笑って機嫌を直す。

そこから二人は今日一日の出来事を話し始めた。


「それにしても陸ったら私がスーパーへ行っていただけなのに血相を変えて帰って来たから可笑しかったー」

「そりゃあ驚くだろう。家にいるはずだと思ったらいないんだから。おまけに電話も繋がらない。普通は心配するのは当たり前だろう?」

「えっ? 電話かけてくれたの?」

「ああ。メッセージも送ったぞ」

「うそっ! そんなの知らないわ…」


華子は慌ててソファーに置いてあったバッグからスマホを取り出して見る。


「あ、ほんとだ! この時はちょうどスーパーにいたのよ。着信音を消したままだったみたいで気づかなかったわ」

「何かあったかと心配したじゃないか」


陸が真剣に言ったので華子は不思議な感覚に捉われる。


(まさか陸がこんなに心配してくれるなんて)


華子のその不思議な感覚は、実は心地良い感覚であるという事に気づいた。

自分の事をこんなに心配してくれる人がいる。

それが嬉しいような、くすぐったいような…そんな不思議な感覚だった。


しかしその気持ちを隠しながら言った。


「子供じゃないんだから大丈夫よ」


そこで華子はスーパーでの出来事を話し始める。


「今日スーパーに行ったらね、三歳くらいの女の子が迷子になっていたの。で、店員さんの所へ連れて行ってあげようその子と手を繋ごうとしたら、その子どうしたと思う?」


突然質問された陸は、少し考えてから答えた。


「嫌がって手を繋がなかったとか?」

「違うの、その逆よ! 私にギュって抱き着いてきたの! 超可愛かったぁー」


華子はニコニコしながら嬉しそうに言うとワインを一口飲んだ。


「華子は子供好きなのか?」

「うん! 実はね、その時ずっと忘れていた事を急に思い出したのよ。私の小さい頃の夢は保育園の先生だったなって」


華子はそう言ってフフッと笑った。

その笑顔は、まだ夢や希望を持っていた時の華子の笑顔と同じだったのかもしれない。

一点の曇りもない爽やかな笑顔だった。


(彼女はこんな表情もするのか)


陸は驚いていた。

しかしそんな陸に気づく様子もなく華子は続けた。


「でね、その子を店員さんの所へ連れて行った時に母親が慌てて走って来たの。その途端その子泣き出しちゃってね。心細くてじっと我慢していたんでしょうね。フフッ、その子には悪いけれど泣いている顔を見て思わずキュンとしちゃったわ」


華子はニコニコと当時の状況を説明した。


陸はその時自衛官時代の事を思い出していた。

まだ結婚したての同期の嫁が、通信教育で保育士の資格を取ったという話を聞いた。

彼女は既に妊娠していたので、資格を取ってもすぐに保育士として働くつもりはなかったようだ。

将来子供が成長した後に働けるようにと、暇な妊娠期間中に資格を取っておこうと考えていたようだ。


保育士は国家資格なので、資格を持っていればいつか役立つ時が必ず来る。

陸はその事を華子に伝えてみようと思い口を開いた。


「保育士なら今からでもなれるんじゃないか?」

「えっ?」

「保育士の資格は通信教育で取れるらしいぞ。もしまだ興味があるようなら勉強してみたらどうだ?」

「え? 陸何でそんなに詳しいの? あっ、まさか元カノが保育園の先生だったとか?」


華子は茶化すように言った。

しかし陸は真面目な顔をしたまま続けた。


「自衛官時代の同期の奥さんが、結婚してすぐに通信教育で保育士の資格を取ったんだよ」

「へぇそうなんだ」


華子はそれを聞いて何かを考えている様子だった。


「ちゃんと頑張るなら費用は出してやってもいいぞ」


陸の言葉に華子は「まさかとんでもない!」という顔をした。


「ううん、そこまで甘える気はないわ。でもありがとう。ちょっと自分なりに考えてみるわ」


華子は笑顔で答えた。

答えながら、華子は自分の中で何かが確実に変化していくのを感じていた。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

素直にサポートを受けよう❣️お金だけではなくて陸さんは華子のことを真剣に心配してくれて他の誰にも話せないことを真剣に話せる唯一の存在✨お願いだから自分の気持ちも陸さんに対する気持ちも茶化さないで‼️ 華子も陸さんもお互いの中に互いへの愛情が芽生えててこれからもっと深く愛し合ってもっと素敵な華子になってね👩‍🦰💞

ユーザー

華子が素直になるにつれて陸さんも華子に惹かれ愛が深くなっていってる🥰❤️ 華子の昔の夢を伝えてそれに協力するという陸さん😊👍💕お金だけでなく協力は仰いで迷う前に^_^

ユーザー

穏やかで幸せそうな華子チャン🍀✨ いなくなったら本気で心配してくれたり、将来の夢について 真剣に相談にのってくれたりする大切な人の存在.👩‍❤️‍👨💖 大事にされ 愛し 愛される喜びを知り、さらに魅力的な女性へと変わっていけそうな予感....✨

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