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一週間の休暇…… という名の監禁生活が終わった翌日。第一の来訪者として、神子のライジャが来たとの知らせをカイルは受けた。深紫の髪と瞳を持ち、蛇のような眼と舌をした神子・ライサの双子の兄だ。
正直カイルはライジャに会いたくはなかった。昔から得意な相手ではないし、仲が良かった時期もない。彼の妹・ライサとは過去に一悶着あったから、余計に。
それでも正式に来訪者として来た者を追い返すことも出来ず、カイルは深いため息をついた。
「面倒くさい…… 。会いたくない。好きじゃないんだ、話が通じないし」
廊下を歩きながらカイルがひたすら文句を垂れる。それを、水色の質素なドレスに身を包んだイレイラが、隣に付き添い宥めた。
「そう言わずに。快気祝いとして来てくれたんでしょう?」
「絶対に違う。『快気祝いだ』と言えば、追い返せないからってだけだよ。何を言われる事か…… 」
カイルは不快感を隠す事なくぼやき、前髪を搔き上げる。ライジャの待つ玄関ホールはもう目前だが、彼の足取りは今尚重かった。
「そもそも、あそこに君を連れて行きたくはないんだ。なのにイレイラにも会いたいだなんて。謁見の間ででも待って居てくれたらいいのに」
覗き見るカイルの端正な顔には、眉間にシワがよっている。本当に嫌そうな顔だ。 それを見てイレイラが苦笑する。カイルの反応は仕方がない事なのだが、心配し過ぎだとイレイラは思った。
「私はもう平気ですよ。それに、すぐ帰るから玄関ホールで待つと言っていたそうだし、渡りに船なんじゃ?」
「まぁ…… そうなんだけど。…… キツイと思ったら言ってね?すぐに誰かに迎えに来させるから」
今から少し前。イレイラは玄関ホールで倒れ、昏睡状態になった。その事で酷く動揺したカイルが、のちに目覚めたイレイラと交代するように寝込むという流れがあった為、カイルが過剰に心配してしまうのは当然の事かとイレイラも思う。 でも、いつまでも引き摺られては玄関ホールに入れない生活を送る事になるので、それはそれでちょっと変だろう。 なのでイレイラは、なんとかカイルの機嫌を持ち直させる事が出来ないかと考えた。
「何かあっても、カイルが守ってくれるでしょう?」
少し体を前に倒し、イレイラがカイルの顔を下から覗き見る。笑顔を浮かべて問うた姿に、カイルは当然破顔した。プルプル震え、高揚していく様が有り有りとわかる。
「帰ろう!もう部屋に戻って、ベッドに行こう。うん、そうだ、それがいいって。ライジャなんて放置でいいよ、会いたくない」
ピタッと立ち止まると、カイルはイレイラに向かい必死に懇願した。
「そう言わずに。嫌なことはすぐに済ませてしまいましょう?」
昼間だというのに、恥ずかしい提案をしてくるカイルの背中を押し、イレイラは渋る彼を玄関ホールまで連れて行った。