テラーノベル
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そして土曜日、拓と真子は原宿にいた。
若者に人気の店を一通り巡り、昼は拓が奮発してイタリアンの店でパスタをご馳走してくれた。
パスタにはサラダとバゲット、そしてデザートのケーキとドリンクまでついてくる。
お腹がいっぱいになった二人は、原宿を後にして表参道方面へぶらぶら歩き始めた。
「せっかく誕生日に何か買ってやるって言ってるのに、欲しいものがないっていうのはどーなのよ?」
「だって拓に買ってもらうなら本当に欲しい物がいいんだもの」
「そりゃそうだけどさー、こっち界隈は真子が気に入るような店はないぞ?」
大通り沿いには、セレブ御用達のセレクトショップやブランド店ばかりが目に付く。
真子は肩をすくめると、
「見つからなかったらクリスマスまで持ち越すからいいよ」
そう言ってからハッとした。
(もしかしたらクリスマスは拓と過ごせないかも…)
途端に真子の表情が暗くなる。
拓はすぐに真子の表情に気付いた。
しかしそれは真子が気に入った物が見つからないので落ち込んでいるのだと勘違いする。
その時、前方に人だかりが出来ていた。
「おっ、あそこでなんかやってるぞ。覗いてみるか?」
「いいよ」
二人はそこへ歩いて行った。
そこは彫金教室が入っているビルの前で、彫金教室主催のイベントをやっていた。
掲げられた看板には『チャリティーバザー』と書かれている。
どうやら彫金教室の作品を販売していようだ。
「おっ、シルバーのアクセサリーかな? ちょっと見ていい?」
最近拓はシルバーのアクセサリーに興味を持っているようで、
嬉しそうに商品を見始めた。
真子もその後に続く。
そこには、シルバー製の様々なアクセサリーが所狭しと並んでいた。
値札を見るとそれほど高くはない。
中には、小学生のお小遣いで買えるような安価な物もあった。
二人は隅から商品を見て歩く。
その時真子の歩みが止まった。
そこには繊細な三日月のモチーフがついたネックレスが飾られていた。
(うわ……可愛い)
真子はすぐにそれを手に取ってみる。
すると、目の前にいたイベントのスタッフが真子に言った。
「そのネックレスはオススメですよ。それを作ったのはロックバンド『solid earth』のボーカルの奥様なんです」
「『solid earth』?」
その名前を耳にした拓が興奮して言った。
「『solid earth』のボーカルって事は沢田海斗さんですか?」
「そうです。彼の奥様が昔うちで講師をしていたんですよ。それで今回声をかけたらこのチャリティーにいくつか商品を提供し
てくれたんです」
「マジっすか? うわーすげー! 真子! 俺『solid earth』の大ファンなんだ」
「ああ、この前聴かせてくれた曲のバンドね」
真子はすぐにそのバンドの事がわかった。
そして手のひらにある三日月のネックレスをうっとりと眺める。
「それ、気に入ったのか?」
「うん……でもちょっと高いよ」
「いくら?」
拓はそう言ってタグを裏返して見た。
「5800円なら大丈夫だよ。プレゼントはそれにしよう」
「え? いいの?」
「うん。真子が気に入っているならそれにしなさい」
そこで店のスタッフが二人に言った。
「5000円以上お買い上げのお客様には、こちらのシルバーリングを一つ1000円でご提供しております。よろしかったらペアで
いかがですか? イニシャルの刻印も出来ますので」
拓は以前からシルバーリングを身につけたいと言っていたので前のめりになる。
「真子、リングもペアで買わないか? 俺が払うから」
「いいよ。でも拓の分は私が払うね」
「やった! じゃあすみません、リングもペアで」
「ありがとうございます。では、イニシャルの刻印をご希望でしたらこちらの紙に記入をお願いします。『〇to〇』 か 『〇
&〇』のどちらかで」
「真子、どっちにする?」
「『&』がいいな」
「よし!」
拓はそう言うと用紙に『T&M』と記入した。
「指輪は一週間後にこちらに取りに来ていただくか、メール便での発送になりますがいかがいたしましょうか?」
「じゃあメール便でお願いします」
拓はそう答えると用紙に住所を記入した。
三日月のネックレスはすぐその場で受け取る事が出来た。
会計を済ませた拓は、ネックレスを手にすると、
「ほら、つけてやるよ」
と言って真子の首に着けてくれた。
「ありがとう」
真子は嬉しくてニッコリ微笑む。
その繊細な三日月のネックレスは、真子にとても良く似合っていた。
その後二人は鎌倉へ戻り、家に帰る前に海へ寄った。
日没を見ようと沢山の人が集まっている。
拓と真子は手を繋いだまま、波打ち際から日が沈むのを眺めていた。
その時真子が言った。
「拓、素敵なお誕生日をありがとう」
「どういたしまして」
「このネックレス凄く嬉しい。大事にするね」
「ん、気に入ったのが見つかって良かったな」
拓は優しく微笑んだ。
いよいよ日没がクライマックスを迎える。
その瞬間、辺りが段々と薄暗闇に包まれていった。
太陽が水平線に沈む瞬間、拓は真子にキスをした。
優しく触れるようなキスだった。
二人の傍を、犬の散歩のカップルが歩いて行ったが二人は全く気にする様子もなく、
辺りが暗闇に包まれるまで唇を重ね続けていた。
コメント
1件
美月ちゃんの🌙モチーフのネックレス✨とても繊細でステキな感じ😊が真子ちゃんにピッタリ❤️そらにお揃いのペアリング💍まで😉💕 このまま2人の純愛が成就しますように🙏