テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ruruha
1,769
眠狂四郎
1,430
榎本くもり
10,136
――翌日
俺は、いつも通り高校に向かっていた。
足取りは重い。
今日は、俺以外の家族が全員体調を崩したために 一人で学校に行っていた。
なぜだか分からないが、嫌な予感がよぎっていた。
頭痛がする。
吐き気もする。
俺、大丈夫か…?
あ、でも、今日はしんどい日なのかも知れないな。
俺はそう思い、特に気にしてはいなかった。
だが、明らかに俺がおかしい事を確信したのは、高校に着いてからだった。
「おはようございます。」
俺は門の前に立っていた先生に、いつものように挨拶した。
すると、毎回笑顔で返してくれていたのに、今日は恐ろしい顔をして俺の顔を覗いたんだ。
そして、戸惑う俺にこう告げた。
「君、誰だ?うちの生徒じゃないな?」
「へ…?」
「その制服、春川高校だろう?ここは夏海高校だぞ。どうしたんだ?何か用か?」
「え、ここ、夏海高校?そんな…、馬鹿な!」
俺はいつも通り登校したはずなのに、どうして別の高校にたどり着いたんだ?
おかしい、おかしいだろ?
道は迷わないはずだろ?
どうして?
どうして____?
俺の精神は、しだいにおかしくなっていく。
何かが壊れていく気がした。
崩れる、ダメだ…
もう間に合わない……っ
目が自然と閉じていく。
だんだん視界が歪んでいく。
昨日と同じだ。
俺、一体―――
どうな―――る―――
―――俺が目を覚ますと、どこかで見た光景が目に飛び込んできた。
同じ感覚だ。
なぜか落ち着く。
周りには、家に居るはずの那子と海青が居た。
「お、お兄ちゃんっ!!目、覚ました…?分かる?私だよ?」
「え?分かるけど…」
一体何を聞いているんだ?
当たり前じゃないか。
「よ、良かった……私の名前、言ってみてくれる?」
「那子。」
「即答だ――良かった!本当に良かったっ!」
那子の事が分からないはずが無い。
何故名前を呼んだだけで、そんなに喜んでいるんだろう――
「じゃ、じゃあ俺も分かるよな…?」
「海青。」
「当たりだ!やった、忘れられてなかった…」
「は…?」
俺が混乱していると、医者らしき人がやって来て、俺に現在の状況を話してくれた。
「……つまり、俺は頭を強打したから、記憶が一部無くなっている可能性があるって事ですか?」
「そうなりますね。意識が遠のいた時、後ろに転倒してしまったんでしょう。」
「そのため、頭に重症を負っています。幸い、命に別状はありませんでしたが。本当に良かったです。
亡くなっていてもおかしくなかった状況ではあります。」
その言葉に、俺は何も返せなかった。
奇跡的に助かって、俺は今ここに居る。
最後まで人生を全うできる資格があるんだ___!
“神様、ありがとうございます。”
“一生この恩を忘れません。”
俺は涙を流しながら、心の中でそう感謝を伝えた。
だけど、まだ問題はある。
「ですが翔太さん、先程言いました通り、一部の記憶が喪失している可能性があるんです。」
「試しにテストをしてみようと思います。ご家族の事から問題を出しますね。」
そして医者は、次々と俺の家族についての問題を出した。
好きな食べ物、旅行先、朝食に飲んだ物、普段の生活習慣―――
などなど、俺が知ってるはずの内容ばかりだった。
だけど、その多くは思い出せなかった。
考えても考えても、出てこない。
家族の事のはずなのに―――
那子達の名前は出てきたのに―――
悩みに悩んでいる所で、悔しくも時間切れとなった。
「……残念ですが、記憶が喪失していると見て間違いないです。」
「っ…!」
泣きそうになっている俺に、医者は優しく俺に話してくれた。
「ですが、覚えていらっしゃる事も沢山あります。全て失った訳ではありません。」
「希望を持ちましょう、翔太さん。前を向いて生きていれば、きっと良いことは起きます。」
「思い出を作りましょう。」
俺は何度も何度も 首を縦に振り、溢れた涙を拭き取った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!