テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#アラスター
8,998
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
5年生の冬が終わるまで、学童までの道は僕たちの「聖域」だった。 匿名A子の歩幅に合わせることも、相談相手B子から彼女の好きなものを聞き出すことも、すべてが春の光の中にあった。
けれど、6年生になった朝、世界の色は塗り替えられた。
クラス替えの掲示板。僕とA子の名前は、別の列に分かれた。 「また後でね」 そう言って笑い合った5年生の終わりの言葉が、最後になってしまった。
6年生の教室は、5年生の時よりもずっと乾燥していて、冷たい。 隣の席ではなくなったB子とは、廊下ですれ違う時に短く目を合わせるだけになった。B子の視線は、以前のような「作戦会議」のワクワク感ではなく、何か言い淀むような、重い色を帯びていた。
ある日の放課後。 僕は習慣のように昇降口でA子を待とうとしたけれど、彼女はすでに別の友達と校門を出ていた。 慌てて追いかけようとして、足が止まる。
「……じゃかさないで」
ふと、そんな幻聴が聞こえた気がした。 いや、それは予感だったのかもしれない。
学童までの道。 一人で歩くと、5年生の時にあんなに長く感じた距離が、驚くほど短く、味気ないものに思えた。 あの日一緒に見た野良猫も、道端の花も、僕一人の視界に入るとただの風景に成り下がってしまう。
僕はポケットの中で、一度も使われなかった「相談メモ」を握りしめた。 6年生という季節は、僕たちが積み上げた「温かな沈黙」を、容赦なく「冷たい拒絶」へと変えていく。
そしてある日、B子が僕の元へやってきた。 その手に、僕の世界を壊すための「伝言」を携えて。