「私も、やっと蜜蝋《みつろう》が使えるようになった」
くつくつと笑いながら、グソンは横たわる華奢な体に指を這《は》わす。
「よかった……あなた様の側にいられて……」
四柱式の豪奢な寝台でリンが主人の愛撫を受けていた。
時折、体をくねらせグソンをなめるように眺めると、吐息と共にゆるりと煙管《きせる》をふかす。
その姿からは幼さが消え、娼婦のごとくの妖しさが溢《あふ》れていた。
「グソン様。蜜蝋の香りは、いいものですね」
「そうだろう?」
――揺ら揺らと炎が揺れていた。
夢にまで見た生活があった。
横たわる愛妾《リン》の姿は、身震いするほどなまめかしい。
グソンはリンの体を撫で回し、手触りを確かめる。
「とても、心地いい」
言って、リンは大きく呻《うめ》くが、手から煙管を放そうとはせず、恍惚の表情を浮かべている。
「阿片とは……恐ろしいものですね」
リンは笑った。
「そうさ。お前も、ほどほどにしておかないと。自分を見失ってしまわないように」
「香西の妃のように、ですか?」
リンの問いに、グソンは苦笑う。
「ああ、おしいことをした」
「あんなに、利発だったお方が……」
「あのお方のように、阿片で命を落とすことのないようにな」
「ええ、わかっています。あなた様と、こうしていたいですから。で、どこで、これを?」
「わかりきった事を聞くな」
言って、グソンは、リンから煙管を取り上げると、紅く熟れた果実のような唇に口づけた。
そう……今では、宮殿中、この危険な甘い誘惑に犯されていた……。
と──。
リンは、やんわりと、グソンの胸を押し返した。
「……グソン様、そろそろ後宮の蜜を食しに行かねば……」
「やれやれ、さみしいものだな。で、リン。どうだ?初めてが、異国の女だから、とまどっているだろう?」
「いえ、よくして頂いてます。何しろ、かの方は、まだお手がついておりませんからね。身をもて余しているようで」
「そうか。リンお前なら、あの異国の娘に気に入られると思っていたよ。よくやった。しかし、お前も大変だな。一度に、何人も女を相手にしなければならないとは」
「ええ、あちらの国では、まずお付きの女官から、そうして主《あるじ》と……。それが常識なのだとか」
「はっ、お毒味か。ただの淫乱どもが」
リンは衣をはおると、そっと、グソンの肩に頭をもたせかける。
グソンは、リンから受け取った煙管を吹かしながら、王妃の部屋へ向かう愛妾《リン》を見送った。
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