TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


「私も、やっと蜜蝋《みつろう》が使えるようになった」


くつくつと笑いながら、グソンは横たわる華奢な体に指を這《は》わす。


「よかった……あなた様の側にいられて……」


四柱式の豪奢な寝台でリンが主人の愛撫を受けていた。


時折、体をくねらせグソンをなめるように眺めると、吐息と共にゆるりと煙管《きせる》をふかす。


その姿からは幼さが消え、娼婦のごとくの妖しさが溢《あふ》れていた。


「グソン様。蜜蝋の香りは、いいものですね」


「そうだろう?」


――揺ら揺らと炎が揺れていた。


夢にまで見た生活があった。


横たわる愛妾《リン》の姿は、身震いするほどなまめかしい。


グソンはリンの体を撫で回し、手触りを確かめる。


「とても、心地いい」


言って、リンは大きく呻《うめ》くが、手から煙管を放そうとはせず、恍惚の表情を浮かべている。


「阿片とは……恐ろしいものですね」


リンは笑った。


「そうさ。お前も、ほどほどにしておかないと。自分を見失ってしまわないように」


「香西の妃のように、ですか?」


リンの問いに、グソンは苦笑う。


「ああ、おしいことをした」


「あんなに、利発だったお方が……」


「あのお方のように、阿片で命を落とすことのないようにな」


「ええ、わかっています。あなた様と、こうしていたいですから。で、どこで、これを?」


「わかりきった事を聞くな」


言って、グソンは、リンから煙管を取り上げると、紅く熟れた果実のような唇に口づけた。


そう……今では、宮殿中、この危険な甘い誘惑に犯されていた……。


と──。


リンは、やんわりと、グソンの胸を押し返した。


「……グソン様、そろそろ後宮の蜜を食しに行かねば……」


「やれやれ、さみしいものだな。で、リン。どうだ?初めてが、異国の女だから、とまどっているだろう?」


「いえ、よくして頂いてます。何しろ、かの方は、まだお手がついておりませんからね。身をもて余しているようで」


「そうか。リンお前なら、あの異国の娘に気に入られると思っていたよ。よくやった。しかし、お前も大変だな。一度に、何人も女を相手にしなければならないとは」


「ええ、あちらの国では、まずお付きの女官から、そうして主《あるじ》と……。それが常識なのだとか」


「はっ、お毒味か。ただの淫乱どもが」


リンは衣をはおると、そっと、グソンの肩に頭をもたせかける。


グソンは、リンから受け取った煙管を吹かしながら、王妃の部屋へ向かう愛妾《リン》を見送った。

loading

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚