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「――よお」
出来るだけ明るく優しく声をかける。
ビクッと身体を震わせ、怯え切った表情で見上げてくるキミカ。
まだ泣き止んではいなかったが――、その瞳に微かな安堵が生じる。
「あ、ああ、リョウ……う、うちな……」
「隣、座るからな」
返事を待たず、俺はベンチに腰を降ろす。
そして、まだほんのりと温かみの残っているお汁粉ジュースを手渡してやる。
昔からキミカは、このお汁粉ジュースが好きだ。
甘い物が苦手な俺にはちょっと理解しがたい世界観の商品だが。
ゴクゴク、と音を立ててキミカはお汁粉ジュースを飲み干す。
表情はまだ優れなかったが――、とりあえずそれで身体の震えは収まったようだ。
「……あんな、うち自分が情けないねん」
すん、と鼻をすすり、消え入りそうな声でキミカが言った。
「同級生の子らも、崇敬会の人らも、学校の先生たちも――みんな、うちの呼びかけに必死になって応えてくれてんのに言い出しっぺのうちが真っ先に動けなくなって……」
「それはしょうがないだろ。お前はただでさえ他人より体力の消費が激しいんだから」
聞くに堪えなくて俺は思わず声を高くしてしまう。
「ひょっとして――、そのことを誰かに責められでもしたのか?」
「ううん、そんなことない。みんな、優しいから」
せやけど、とキミカは言葉を付け加える。
また新しく涙があふれ出てくる。
「うち、あの子の――ユカリの親友やって思ってたのに。こんな時ぐらい、何で踏ん張られへんのやろ思ったら涙が止まらんようになってもて」
長谷川ユカリ。キミカの友達だ。
キミカが小学生の頃から仲の良い女の子。
彼女の名前は、俺と塚森家の連中の間でもよく出てくる。
実際、生活で辛いことの多いキミカにとっては支えになってくれる友達で俺達にもありがたい存在だからだ。
俺自身とユカリが直接的な繋がりはないに等しいが、あの内気なキミカが親友と呼んで憚らないことを考えれば相当いい子なのだろうと思う。
そんな彼女が姿を消したのは数日前のこと。
そう、文字通り消えた。
失踪したのだ。
#異能
#伝奇