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重森がそんな思いに囚われている一方、華子の方も久しぶりに会う重森を観察していた。


大学時代の四年間、華子はいつも重森の後を追いかけていた。

あの頃の重森は都会派のイケメンでオシャレで活力に溢れ生き生きとしていた。

しかし今目の前にいる重森はなんだか老けて少しくたびれたような雰囲気だ。

大学時代に女性達を惹きつけていた強いオスとしてのフェロモンはすっかり消え失せていた。


あれほど好きで愛していると思っていた男に5年ぶりに会ったというのに、なぜか華子の胸は全くときめかなかった。


(あれ? 私、重森の事を好きだったのよね?)


華子は戸惑いながらそう自分に問いかける。この感覚はどう表現したらいいのだろうか?


例えて言うなら、子供の頃に憧れていたアイドルが『あの人は今!』的なテレビ番組に久しぶりに登場し思わずがっかりしてしまう…おそらくそんな雰囲気だろう。


もちろん重森は元々はハイスペックのイケメン男子だったのでその名残りは若干残ってはいるが、昔散々女性達に振りまいていた男のセクシーさは微塵の欠片もない。


大学病院での激務が彼を変えてしまったのだろうか? それとも素敵な恋をしていない?


そう思った華子の脳裏に、突然ベッドの上でのセクシーな陸の姿が思い浮かんだ。


(やだっ! なんで今ここで陸が出て来るの?)


華子は慌てて頭の中から陸を追い払うと、あえて落ち着いた口調で重森に言った。


「あなたも元気そうね! 今は慶尚大学病院のお医者様?」

「ああ、そうだよ。内科の医局にいる」

「そうなんだ。あの病院からこのカフェは近いものね」

「ここにはいつから?」

「つい最近よ」

「そっか。だから今まで会わなかったんだな」


その時店のドアが開いて女性三人組が入って来たので華子は重森に注文を聞いた。


「じゃあ俺もブレンドのMとこのベーグルサンドを…」


重森はベーグルサンドを一つカウンターへ置いた。


華子はトレーを二つ用意しそれぞれのパンをトレーに載せる。


「お会計は別々にする?」

「いや、いいよ。俺がまとめて払う」


すると横にいた重森の連れは、


「おっ、ごちそうさーん!」


とニコニコして言った。

華子は軽く頷くと、レジに打ち込み始める。

そして、


「2230円になります」


と言った。

重森は財布からカードを取り出し華子へ渡す。

カードを渡す際、重森は華子の左手の指輪に気づいた。そして指輪をじっと見つめる。

それは見ただけでとても高価な指輪だという事がわかった。


(新しい男が出来たのか? それともまさか結婚しているとか…?)


重森は衝撃を受けていた。

華子は重森と別れた後高価な指輪を贈ってくれるハイスペックな男を見つけたのだ。


その現実を目の当たりにし、重森の胸の中がなんだかもやもやする。

四年も付き合った華子をあっさり捨てておいて今更そんな気持ちになるなんてかなり矛盾している。

別れた時は華子に対する未練などこれっぽっちもなかったのに…

重森は無性に納得のいかない気持ちになる。そこで重森は更に華子の様子を観察する。


華子はあの頃よりも肌艶が良く髪もしっとりと輝き身のこなしもエレガントになっていた。

大人の女性としての魅力に溢れ、その優しい笑顔からは幸せそうな様子が伝わってくる。


(別れた後しつこく電話をしてくる華子が面倒になり携帯の着信拒否までしておきながら、なんで俺はこんなにイライラしているんだ?)


重森は顔は笑顔とは裏腹に心の中は嵐のように乱れていた。



そんな重森には全く気づく様子もなく華子は素早く会計を終えると、美咲が用意したブレンドコーヒーをそれぞれのトレーの上に載せた。


「お待たせいたしました。どうぞごゆっくり」


華子は二人に向かって笑顔で言うとトレーを渡した。


その笑顔があまりにも美しかったので重森の連れはつい華子に見とれてしまう。


重森はそんな連れの腕を肘で突くと軽く会釈をしてから窓際の席へ向かった。



華子はすぐに次の客への対応を始めた。

平静を装いつつ接客を続けていた華子だが、実はその心臓はドキドキと大きな音を立てていた。


(まさか本当にここで重森と再会するなんて…ああ、でも少し痩せておいて良かったわ)


華子はホッと胸を撫でおろす。


実は昨日陸とのセックスの後風呂上がりに体重を量ってみたら最高体重から5キロも痩せていた。

つまり今の華子は重森と付き合っていた時と2キロしか変わらない。


陸との激しいセックスやジム通いで痩せたのはもちろんの事、ここ最近毎日カフェで立ち仕事をしているせいで毎日自然に痩せていったようだ。

銀座のクラブで夜型の生活を送っていた頃とは違い、身体の代謝が確実に上がっている気がする。

やはり朝型の規則正しい生活は華子を美しく、そして健康的に変えてくれていたのだ。


(うん、これなら大丈夫!)


華子は小さく頷くと引き続き接客を続けた。


客の対応が終わり手が空くと、ドリンク係をしていた美咲が華子に近づいて来て言った。


「さっきのお客様とはお知り合いなの?」


美咲を見ると以前の戦闘モードとは違い満面の笑みを浮かべている。

先ほどまでのよそよそしい態度はどこへやら、期待を込めた表情で華子の答えを待っていた。


(そっか、彼女の新しいターゲットは重森なのね…)


華子はすぐにピンときた。


「ええ、大学の時同じサークルだったんです」

「そうなのね! あの人ってお医者様?」

「ええ。慶尚大学病院に勤めているみたい」

「へぇー、前にも何度かこの店に来たのを覚えているけれどお医者様だったんだぁ」


美咲はうっとりした表情で窓際の席にいる重森を見つめていた。

そんな美咲を呆れたように見つめながら、


(フフッ、重森のお陰で私への風当たりが弱まるかもしれないわ。重森に感謝しなくちゃ)


華子は苦笑いをしながらそう思った。

そして手が空いたのでフロアの返却口にあるカップ類を集めに行った。

この作品はいかがでしたか?

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