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旅をすることは生きることだ
アンデルセン
彼は今生きている。
というか、生まれたと言うべきであろうか。
彼は自分の有り金全てを持ち去り、歌舞伎町へ出た。
何故歌舞伎町なのかと言えば何故なのかはわからない。
何か自由な雰囲気が彼の背中を押してくれるような気がしたのだ。
とは言っても彼はこの身一つで街を歩くなど初の試みであった。
歌舞伎町に着くとそれはなんともいえない風景であった。
人と人が入り混じり、交差し、不必然的に動くのだ。
「これこそが自由か。」
彼は今感情的になっていた。
それは彼にとっては最も屈辱的だった。
だが今はそんなことを考えてしまっていたらこの場所で埋もれ死んでしまう。
彼は歩いた。
どこの店に入るか、何を食べるか、勉学をすること以外でこんなにも興奮するのか。
これも一つの勉強であると彼の理性は止めなかった。
彼の行為に初めに気づいたのは彼女であった。
彼女は彼が生まれ変わろうとし、彼が家を出ようとしていることに
彼女は最も必然的であると悟ったのである。
だがそのことを彼の母に伝えては彼は一生あの感情を押し殺したのような可愛げのない者に
なってしまうと何も言わないでいた。
まず彼は喫茶店に寄り、コーヒーを飲んだ。それからフレンチトーストも食べた。
美味しいとも不味いとも思わなかった。
だがこうしていると自由の第一歩と思えて楽しくなった。
彼は数百円のコーヒーに一万円を出し、お釣りを受け取らず去った。
これはお金持ちにはあるあるなのであろうか。
それとも彼が海外によく行くのでチップというものなのか。
喫茶店を出ると(彼は喫茶店でフレンチトーストを食べたため少し遅くなり、夜になった)
何やら怪しげな店があるのである。
キャバレーと書いてあるが彼はそんな性欲をあまり知らないため足が動くままに入った。
彼はその店にすんなりと入れた。
それは彼は高校生で平均より背が高く、成人男性だと思われたのである。
彼は店に入るのが汚らしいおっさんばかりなので躊躇うが、店に入ってしまった。