テラーノベル
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のり
パレスの裏にある薄暗い楽屋。ハルは愛用のサンプラーを叩きながら、リコが買ってきた「超特大の揚げパン(きな粉増し増し)」の袋を開ける音を録っていた。
「……で、作者さん。物語を動かす手が止まってると思ったら、自分自身の恋愛相談かよ」
ハルはぶっきらぼうに言いながらも、あなたのためのパイプ椅子を蹴り出した。リコは口の周りをきな粉だらけにして、「魔法使いのローブ(夏用)」の裾で雑に顔を拭きながら、身を乗り出してくる。
「いいよいいよ、話しなよ! 私たちのこと、こんなにハチャメチャに書いてくれてるんだもん。あんたの心の『ノイズ』、私たちが全部サンプリングして、最高のラブソングに変えてあげるから!」「なんだ、そんなこと? 案外可愛い悩み持ってるじゃん、作者さん!」
リコは揚げパンを豪快に一口齧りました。 ――サクッ、モフッ。 その音をハルが素早くフェーダーを上げて増幅させ、楽屋に重低音として響かせます。
「いい? 告白なんてのはね、綺麗なメロディを奏でようとするから緊張するんだよ。相手に完璧な『正解』を届けようなんて思わなくていいの」
リコは口の周りを真っ白にしながら、あなたを指差しました。
「ハルを見てよ。この人、私の食べる音を最初に聴いた時、『最悪なノイズだ』って言ったんだから。でも今はどう? そのノイズがないと生きていけない体になってる。 告白も同じ! あんたの気持ちが相手にとって最初は『ノイズ』かもしれない。でも、それを伝えないことには、相手の人生のプレイリストに、あんたっていう曲は一生追加されないんだよ」
ハルが珍しく口を開きました。ヘッドホンを片方外して、あなたの胸のあたりに指を向けます。
「……今、心臓がバクバク言ってるだろ。その『怖い』って音、悪くないぞ。 俺たちは子供を作らないって決めてるし、未来の保証なんて何もない。でも、今この瞬間に『お前が必要だ』って伝える勇気だけが、現実っていう静寂をぶち壊せるんだ。 失敗して不協和音になったら、その時はその時だ。俺がその失恋の音をサンプリングして、最高にエモいトラップ・ミュージックに仕上げてやるよ」
リコが残りの揚げパンをあなたの口元に差し出しました。
「ほら、これを食べて元気出しな! 告白なんてさ、この揚げパンを食べる時みたいに『えいっ!』って口を開けるしかないの。きな粉が飛び散っても、口の周りが汚れても、食べた後の『美味しかったー!』っていう満足感は、口を開けた人にしか来ないんだから!」
リコの最終アドバイス: 「明日、その人に会いに行きなよ。 かっこいい言葉じゃなくていい。『あんたの隣にいると、私の心拍数がBPM160になっちゃうんだよ!』って、そのままのノイズをぶつけてきな!」
ハルはサンプラーのボタンを叩き、あなたの今の不安な溜息を、なぜか勇気が湧いてくるような力強いドラムビートへと変えていきました。「あちゃー……相手の機嫌かぁ。それは確かに、下手に触るとハウリング(キーンという不快な音)しちゃうもんね」
リコは少しだけ真面目な顔をして、あなたの隣に座り直しました。今度は「巨大な耳の形をしたカチューシャ」を頭につけています。
「あのね、作者さん。ハルだって、機嫌が悪い時は信じられないくらい刺々しい音を出すよ。でも、私はそれを『嫌だな』って避けるんじゃなくて、『おっ、今日はパンクな気分なんだな?』って面白がることにしたの。 相手の機嫌が悪いのは、あんたのせいじゃない。相手の中で勝手に鳴ってる不協和音なんだよ」
ハルがキーボードの鍵盤を一つ、静かに叩きました。 「……無理に告白しようとするな。 音楽には『休符』が必要だ。相手の機嫌が悪い時は、曲でいうところのブレイクタイム(無音状態)なんだよ。そこで無理やりソロパートを弾き始めても、いいセッションにはならないだろ?」
ハルの助言: 「相手が機嫌悪い時は、ただ横にいろ。言葉もいらない。ただ、相手が出してる『ピリピリした音』を、同じ空間で聴いてやるだけでいい。 『今日はトゲトゲしてるね、何か美味しい音でも食べる?』って、コンビニの新作スイーツでも差し出してみな。告白のチャンスは、その後の『ふぅ……』っていう安堵の吐息が漏れた瞬間に来るんだよ」
リコはあなたの背中をバシッと叩きました。 「(泣)なんて顔しないで! 相手の機嫌を伺っちゃうのは、それだけあんたが相手の音を丁寧に聴こうとしてる証拠でしょ? それって、表現者としては最高の資質なんだよ。 今は無理でも、いつか相手が『ふっ』と笑った瞬間の音を逃さないで。その音が鳴った時が、あんたの『告白』という曲のイントロが始まる合図だから!」
二人の最終結論: 「今日は一旦、レコーダーを止めて寝な! 明日、相手の機嫌が少しだけマシになった時、あえて『機嫌悪かった時、怖かったよ〜』って弱音を吐きながら、どさくさに紛れて伝えてみるのはどう? 隙がある音の方が、相手の心にはスッと入り込むこともあるんだから!」
ハルは、あなたの「無理です」という弱音をサンプリングし、不思議と温かいアンビエント・ミュージックへと昇華させました。
「……焦るな。名曲は、一晩では完成しない」「……11ヶ月、か。アルバム一枚を最高のクオリティで仕上げるには、十分だけど……一生聴き続けるには、短すぎる時間だね」
リコは、机の上に散らばっていた駄菓子の袋を片付け、あなたの目の前に座りました。
「期限があるから怖いんじゃなくて、期限があるからその一音が愛おしくなるんだよ。 いい? 私たちの10年もそうだった。10年経ったら連れ戻されるって分かってたから、一食一食を、一秒一秒を、耳がちぎれるくらいの爆音で楽しもうとしたの」
リコの助言: 「11ヶ月しかないなら、相手の機嫌を伺って足踏みしてる時間はもったいない! 機嫌が悪い時のトゲトゲした音も、笑った時の柔らかい音も、全部この11ヶ月限定の『プレミア音源』なんだよ。 告白してもしなくても、時間は過ぎる。だったら、最後にその人と離れる時、『出し切った!』って清々しい顔でエンドロールを迎えたいでしょ?」
ハルが静かに、11ヶ月を刻むようなメトロノームの音を鳴らし始めました。
「完璧なタイミングなんて、一生来ない。 相手の機嫌が良い日を待ってたら、気づけば11ヶ月なんてすぐ終わるぞ。……いいか、不機嫌な音さえも、その人と一緒にいられる今しか聴けない音だ」
ハルの助言: 「告白ってのは、何も『付き合ってください』っていうゴールを決めることだけじゃない。 『あと11ヶ月しかないから、機嫌が悪い時も、良い時も、全部大事にしたいんだ』って、その切実なカウントダウンをそのまま伝えてみろ。その『必死さ』こそが、何よりも相手の心を揺さぶる一番のキラーフレーズになるはずだ」
リコがあなたの手を握りました。
「作者さん。11ヶ月後の自分に、どんな音を聴かせてあげたい? 『言えなかった後悔のノイズ』? それとも『ボロボロになったけど、全部伝えた出し切った音』? 私なら、絶対に後者を選ぶ。きな粉まみれで、不格好でも、自分の気持ちを響かせた後の静寂は、何よりも美しいから」
二人の最終結論: 「明日、その人に会いに行きな。 告白が怖いなら、まずは『あと11ヶ月、あんたと過ごす時間を世界で一番大事にするって決めたんだ』って宣言するだけでいい。 それは、告白よりもずっと重くて、素敵な愛の言葉(ノイズ)なんだから」
ハルはメトロノームの速度を少しだけ上げました。 それは焦らせるためではなく、あなたが力強く一歩を踏み出すための、新しいBPM(テンポ)です。
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