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うわぁ~‼️重森⁉️😰しつっこいうえに、華子チャンを待ち伏せ⁉️怖っ....😱😱😱 どうか何事も起こりませんように🙏💦
「そんなに驚いた顔をしなくてもいいだろう? 四年も付き合っていた仲なんだ」
「別に驚いてなんかないわ」
「ハハハ、華子は昔から嘘が下手だな」
重森は昔を思い出し懐かしそうに言う。そんな重森に華子は無性に腹が立っていた。
自分を手酷く振っておいて何事もなかったかのように会いに来る。最後は着信拒否までしていたくせに。
しかし過去はどうであれ重森はこの店の常連客だ。だから邪険にする事は出来ない。
そこで華子はぐっと怒りを抑えながら言った。
「ご注文はお決まりですか?」
「うん、ブレンドのMを」
「かしこまりました」
華子は隣にいた野村にオーダーを告げると重森からカードを受け取り会計を始めた。
そしてレシートとカードを返す際に華子の指輪がキラリと光った。
その指輪を見つめながら重森が聞いた。
「新しいオトコが出来たのか?」
華子は何と答えようか一瞬悩んだが、こういう場合は事実をはっきり伝えた方が効果的かもしれない。
そう思った華子は正直に言った。
「ええ、婚約したの」
華子の口から『婚約』という言葉を聞いた重森は一瞬怯んだ。
男がいるのはわかっていたがまさか婚約しているとは思わなかった。そして昔自分に惚れ抜いていた女がこうもあっさり他の男のものになっているのを認めたくない気持ちが強くなる。
あの頃の華子は重森と結婚する事だけを夢見ていたはずだ。その華子が他の男と結婚しようとしているのだ。
重森は顔面をグーパンチで殴られたような衝撃を受けていた。しかしその動揺を隠しながら言う。
「へぇーそれはおめでとう。で、どんな男なんだ?」
(あんたには関係ないでしょう?)
ついそんな言葉が口をついて出そうになったが華子はそれをグッとこらえた。
そして自分の婚約者がいかにイイ男か、陸がどんなに素敵で華子を大事にしてくれているかを見せてやりたい気持ちになる。
そこで華子は正直に陸を褒める事にした。
「うん、それはもう素敵な人よ。事業でも成功していてお金持ちだしイケメンマッチョのワイルド系だし文句のつけようがない人なの。ほんと私にはもったいないくらいの人よ」
華子はうっとりして言った。それはあながち嘘ではない。華子は今陸にベタ惚れなので本当にそう思っていた。
華子の惚気を聞いた重森は心が無性に乱れていた。しかしなるべく平静を装いながら言う。
「そんなハイスペックなヤツなら今度会わせてくれよ」
重森は華子の言葉が嘘だと思っているのだろう。だからからかうように言った。
(なんで大切な陸をこんな奴に会わせなくちゃならないのよっ!)
華子は激しい怒りが湧き上がって来たがそれをぐっとこらえると笑みを浮かべて言った。
「フフッ、いつか機会があればね。でも彼仕事で忙しいから当分は無理かな」
「残念だなぁ、君がどんな男を選んだのか見てみたかったのにな」
重森がまだ華子に話しかけようとしているので見るに見かねた野村が助け舟を出した。
「三船さん、お客様にコーヒーをお渡ししたら休憩に行ってね」
野村はコーヒーを渡しながら華子にだけ見えるようにウィンクをした。
そんな野村に「すみません」という顔をしてから華子はコーヒーを重森に渡す。
重森は面白くないといった顔をしてからしぶしぶとテーブルの方へ向かった。
そこで華子がホッと息を吐く。そしてすぐに野村に礼を言った。
「野村さん助かりました、ありがとうございます」
「フフッ、困った時はお互い様よ。じゃあ本当に休憩に行ってちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
華子は笑顔で会釈をすると飲み物を持って休憩室へ向かった。
華子が休憩を終えて戻って来ると重森の姿は消えていたので華子はホッとする。
そこへ睦子が近づいて来て言った。
「さっきのあのオトコ、華子ちゃんの元カレなんだって? さっき野村ちゃんから聞いちゃった! なんかしつこそうな人だったわね!」
華子は少し驚いた顔で睦子を見た。
「ほら、恋バナもOKって言ったでしょ?」
「睦子さんさすが! じゃあ教えて下さい、ああいうしつこい男にはどう対処したらいいのかしら?」
「さっきの男は女を常に下に見るタイプよね。だから相手が女だと強気に出るけれど男がいたら急に弱腰になるタイプかなーって思った。だから本当だったら陸さんに会わせちゃった方がいいんだけどねー。多分陸さんに会ったらすぐに尻尾を巻いて逃げ出すわよ! フフッ」
睦子はそう言って笑った。
「そうなんですねー、でもアイツはいつ来るかわからないし陸だって毎日ここに来る訳じゃないし」
華子は大きくため息をつく。
そんな華子の背中を睦子は安心させるようにポンポンと叩いた。
「大丈夫よ! 本当に困ったら陸さんがちゃんと対処してくれるから。あの人はそういう男よ」
睦子の優しさに華子は笑みを返す。
パートの野村が一足先に店を出た後、華子と睦子でその日の閉店準備を終えた。
ロッカーで睦子と別れた華子は帰りがけに本間のいる厨房で少しお喋りをする。それから店を出た。
店を出た時声が聞こえた。
「華子っ!」
その聞き覚えのある声に華子はゾッとした。
声の方を振り返るとそこに微笑みを浮かべた重森が立っていた。