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#アラスター
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放課後を告げるチャイムが鳴ると、教室は一気に騒がしくなる。 僕は、わざとゆっくりと筆箱をランドセルにしまった。
「A子、今日はあっちの道から帰るって言ってたよ」
隣の席の相談相手B子が、机を拭くふりをしながら僕にだけ聞こえる声で言った。 彼女は、僕が匿名A子の姿を無意識に目で追っていることを、誰よりも早く見抜いていた。
昇降口へ行くと、ちょうどA子が靴を履き替えているところだった。 僕は心臓の鼓動が早まるのを悟られないように、少し離れた場所で自分の靴を履く。
「あ、[ ]くん」
外に出たところで、彼女が足を止めて僕を見た。 「今日、一緒に帰る?」
その一言で、僕の放課後は特別なものに変わる。 僕たちは、いつもより少し遠回りになる「古い橋のある道」を選んだ。 学童までの距離を、少しでも引き延ばしたかったからだ。
道端に咲いている名前も知らない花を見つけては、彼女が立ち止まる。 僕はそのたびに、彼女の少し後ろで足を止めた。 「これ、なんて名前かな」 「わかんない。でも、綺麗だね」
そんな、中身のない会話。 でも、その時の僕にとっては、B子と練ったどんな作戦よりも、目の前で揺れる彼女の髪の毛や、アスファルトを叩く靴の音の方がずっと重要だった。
学童の建物が見えてくると、僕はわざと歩幅を小さくした。 彼女もそれに気づいているのか、いないのか、二人してゆっくり、ゆっくりと境界線へ向かっていく。
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