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ヤンデレ公爵様は死に戻り令嬢に愛されたい

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ヤンデレ公爵様は死に戻り令嬢に愛されたい

65 - 【最終章】第5話 夢からの目覚め・前編(カーネ・談)

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2024年11月05日

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——“夢”だと思われるものから覚醒した瞬間、妙に頭の中がスッキリしていて驚いた。こんな感覚は初めての事だ。そのうえ、とんでもない内容の“夢”を見ていたという自覚まである。前半は過去の記憶に囚われ、その中を彷徨っていた様な感じだったのだが、それらは全て妙にリアルで匂いや感覚どころか……苦々しい事に痛みまで感じ取れた。後半部分は詳細まで覚えていたせいで頭の中が段々と混乱しだす。


(さ、さっきのアレって、えっと……)


動揺しながらも体を少し動かすと、こちらの様子に気が付いたのか、即座に「カーネ!目を覚ましたんですね!」と叫ぶシスさんの声が私の耳に届いた。視線を軽く声の方へやると、シスさんは酷くやつれた顔に安堵の色を浮かべ、ベッドの端に座っていた。『まさか眠らずに看病でもしてくれていたのだろうか?』と思う程に彼はくたびれた様子だ。

「もう大丈夫ですか?痛いところや、辛い箇所はありませんか?」

ベッドに手をつき、ぐぐいっとシスさんが私の方へ体を寄せる。“夢”の中で見た色気たっぷりなシスさんとは違い、心配性な姿に少しの安堵を感じた。これこそが私の知るシスさんの“あるべき姿”だと思えるからだろう。

「大丈夫です。——もしかして、シスさんが治療してくれたんですか?」

そう訊きながら上半身を起こそうとすると、シスさんが補助してくれる。「ありがとうございます」と伝えている隙に背中にクッションやら枕やらをすかさず置いてくれる気の利き様を前にして、今度は申し訳ない気持ちでいっぱいになってきた。


(本物のシスさんはこんなに優しい人なのに、私は何てとんでもない“夢”を見てしまったんだろう……)


「お腹、空いていませんか?」

一人ひっそり凹んでいると、シスさんがそう問い掛けてきた。頭はスッキリとしているし疲労感などといったものは無いが、言われてみるとちょっと何か胃に入れてはおきたい程度には空腹な気がする。

「言われてみれば、少し」

「……ですよね。だけど、四日間も眠ったままだったので軽い物にしておきましょうか」

「——え⁉︎よ、四日間も寝ていたんですか?」

驚きに目を見開くと、「外傷はすぐに治したんですが、どうやら精神的なショックが大きかったみたいですね」とシスさんに言われ、思い当たることしかなくて私は返事もそこそこに俯いた。


怪しい男性が金髪だったというだけで『メンシス様かも』と勘違いしてしまったせいで路地裏に連れ去られ、ちゃんとシスさんから警告されていたのに魔法の呪文を使ってしまったもんだから魔法を暴走させ、挙句気を失った先で見た“夢”の中では兄との最後の記憶に囚われたりと、一連の散々な流れを思い出して深いため息を吐く。


夢の後半は後半で、人には絶対に話せない様な流れになってしまっていたが、何はともあれ目覚める事が出来て本当に良かった。あのまま“夢”の中に囚われ続けていたら、現実では体が衰弱し、精神の方はアレよりももっと凄い淫夢に発展していただろうから。


「……顔が赤くなってきましたけど、熱でもあるんですか?」


俯いていた私の額にシスさんが触れてくる。ひんやりとした大きな手はとても気持ちいいが、キスでもしそうな距離にまで近づかれたせいで“夢”の中の彼と現実の彼とが重なって見える。そのせいでばくんっと心臓が有り得ない程に激しく高鳴り始めた。熱くてぬるりとした彼の動物的な舌の感触や、胸先をちゅっと吸われた感覚を勝手に体が思い出し、下腹部の奥がぎゅぎゅっと疼く。


(な、や、ちょ……っ)


早急に離れて欲しい気持ちと、もっと近づいてしまいたい気持ちとが胸の中でせめぎ合う。だが軍配は辛うじて羞恥心の方に上がり、私はそっと彼から身を引きつつ、「……大丈夫、です」と小声ながらも返す事が出来た。

「そう、ですか?」とシスさんが軽く首を傾げる。残念ながら本当に大丈夫であるとは流石に思ってくれてはいないみたいだ。

「何処も痛くありませんし、本当に、問題は何も無いですよ」

苦笑しながらも改めてそう伝えると、「……わかりました」と彼は渋々受け入れてくれた。


「じゃあ僕は、ご飯を作って来ますね。何かあったらコレに話し掛けて貰えますか?すぐこちらに駆けつけますので」

そう言って、シスさんが私の手の上に何やら小さな物をぽんっと渡してきた。薄っぺらい手の平サイズのそれは、簡略化された白猫の置物だった。ガラスで作られているのか半透明で、中にはふわふわと光の塊が浮かんでいる。

「可愛いですね、マジックアイテムですか?」

「そうです。このマジックアイテムは僕の手作りなんですよ。対になっているアイテムを持っている者を呼び出す機能付きです。使い方は簡単で、軽く握って僕の名前を呼んでもらえればいいだけです」

「わかりました」と頷き返す。するとシスさんはまだ心配なのか、後ろ髪を引かれる様な顔をしつつも寝室を後にして、食事の用意をしに行ってくれた。

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