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絵里奈の方が前のめりで良輔は絵里奈の若さと色気だけを求めてる⁉️ このシーンだけを見てたら凪子と不仲になりたいわけじゃないように見えるけど…男女の仲ははた目からはわからない🌀
二人は、良輔の車で『表参道モール』へ向かった。
『表参道モール』は、最先端のセレクトショップが集まった今最も注目されているショッピングモールだ。
ここに凪子達の会社の店は出店していないが、市場調査を兼ねて休日によく二人で訪れる。
あえて自社製品以外の服を見て回り、時にはその服を購入してみる。
そして実際に着てみて着心地を調べる。
これも大切な市場調査の一環だ。
ショッピングモールへ着くと、二人は早速店を見て歩いた。
「夏服が欲しいのか?」
「うん…去年あまり買わなかったから、今年は少し買い足したいの」
「じゃあ俺がとびっきりのを選んでやるよ」
良輔は楽しそうに言う。
(一体何を考えているの? 不倫をしているから後ろめたくて優しいの? それとも?)
凪子は戸惑っていた。
二人でいる時の良輔は、以前と同じように優しい。
凪子は良輔が何を考えているのか全くわからなかった。
二人は気になる店を、端からチェックしていく。
途中二人はファッションの話で盛り上がる。
同じアパレル業の仕事をしていると、こうした私的な買い物でも話題が尽きない。
凪子は付き合っている頃から良輔とのこうした議論が好きだった。
(会話がなくなるとおしまいって言うけれど、うちはどちらかと言えば話が尽きない夫婦なのに、一体何がいけなかったんだろ
う?)
凪子の頭にまたそんな考えが過った。
「これ、凪子に似合うんじゃないか?」
「どれ? 見せて!」
凪子は良輔が手にしていたワンピースを手に取る。
素材はまずまずだ。
そしてデザインは、大きな花が描かれたインパクトのある柄だったが全体的の雰囲気は上品でエレガントだ。
良輔は昔から品のあるエレガントな服を凪子に着せたがる。
このワンピースはノースリーブなので、
上に麻のカーディガンを羽織れば会社にも着て行けそうだ。
気に入った凪子は、
「着てみる!」
と言って、店のスタッフに声をかけた。
良輔は、まだ他にいいものはないかと熱心に店内を歩き回っている。
凪子は試着室へ入りワンピースを着てみた。
生地の基本色はシックなベージュで、その上にオレンジ系の花が大きく描かれていた。
所々黒や白でのポイント色が入り、全体を引き締めている。
その華やかな雰囲気は、凪子に良く似合っていた。
ワンピースのスカート部分は、細身のフレアーで、
歩くと裾部分が上品に揺れ、とてもエレガントだ。
良輔の服選びのセンスは、付き合っていた頃のままだった。
そして、きちんと凪子の好みも覚えている。
(妻への興味は失っても、妻の服の好みは忘れないのね…)
そんな考えがまた頭を過る。
そしてなぜか虚しさがこみ上げてきた。
心は離れているのに、仲の良い夫婦を演じているのがなんだかばかばかしくなってくる。
その時凪子は、不倫相手の塩崎絵里奈が着ていた安っぽい服を思い出した。
(昨夜良輔は、あの安っぽい服を脱がせあの女を抱いたの? 妻の服にはうるさいくせに浮気相手の服には無関心? 服なんて
どうでもいいっていう事は、あの女の中身を気に入っているっていう事? つまり本当に惚れてしまったの?)
そう考えると、凪子は泣きたい気持ちになる。
その時、試着室の外から良輔の声が響いた。
「凪子どうだ? もう一ついいのがあったぞ」
「お客様、いかがでございますか?」
良輔の後に店の男性店員の声が続く。
凪子はワンピースを着たまま、試着室の外へ出た。
すると、良輔と男性店員はワンピースを着た凪子を見て目を輝かせる。
「いいじゃないか!」
「お客様、とてもよくお似合いです。失礼ですが、もしかして奥様は以前モデルか何かをされていましたか?」
30代半ばの男性店員は、そう良輔に聞いた。
すると良輔は誇らしげに言う。
「ああ、うちの妻は昔モデルをしていたんですよ」
「ああやっぱり! どうりでとてもお美しい方だなぁと思いました。それにこのワンピースを見事に着こなしていらっしゃい
ます。この華やかなワンピースは、普通の方ではなかなかここまで素敵に着こなせませんから…」
男性スタッフは感心したように言う。
それを聞いた良輔は得意げな様子だった。
気を良くした良輔は、手にしていたもう一着を凪子に渡す。
「これも着てみろよ」
今度はフレンチスリーブの黒のワンピースだった。
スカート丈は先程と同じ長さで、
胸元が少し深めに開いている。
しかし、胸元と袖口が上品なレースなので、下品な雰囲気ではない。
タイトなスカートの裾にも、レースがあしらわれていた。
ちょっとしたパーティーなどにも着て行けそうで、一枚あれば重宝しそうだ。
「いいわね、着てみるわ」
凪子は再び試着室のドアを閉めて着替え始める。
着てみるとピッタリだった。
フレンチスリーブからは、凪子の白く引き締まった腕がスラリと伸び、
胸元は細い首と鎖骨を綺麗に見せている。
引き締まったウェストからヒップにかけては、上品な女性らしいラインが表れていた。
凪子は、長い髪を後ろで一纏めにすると上に持ち上げてみる。
(アップスタイルだと更にいいわね…)
凪子はそのままの姿勢で試着室を出た。