テラーノベル
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ミランダとレネーナの呟きに、フローチェは小馬鹿にしたように笑う。
「あら、ちっともご理解いただけないお顔をされておりますわね……。残念だわ。まぁ、定番ドレスを定型通り以下にしか着ることができない貴方達に、モードを語るのは無理がありましたわね。ごめんあそばせ」
暗に「あんた達、超ダサい」と言われたミランダとレネーナは、大いに自尊心を傷つけられ、鬼の形相でフローチェを睨みつける。
しかし彼女たちが最も得意とする罵倒は、一切出てこない。
それは仕方がない。だって彼女たちを小馬鹿にした相手は、普段着だというのに桁違いに奇麗で垢ぬけているから。
お洒落に無頓着なベルからしたら、ダサいと言われたところで痛くも痒くもないが、一般女性にとっては、かなり屈辱的なもの。
女のプライドを守ることを選んだミランダとレネーナは、尻尾を巻いて逃げ出すことしかできなかった。
「もう結構ですわ。失礼します!」
「こんなものを見せられて、大変不快ですわっ」
同時に言い捨てた二人の台詞は、まさに負け犬の遠吠えだった。
乱暴にソファから立ち上がると、出口扉に起立している未だ涙目のラルクを押しのけて、そのまま廊下に飛び出す。
開け放たれた扉から「お客様、出口はこちらでございます」というメイドの慌てた声と、「うるさいわねっ。そんなこと知っているわよ!」という義理の姉二人のコントのような会話が聞こえてくる。
聞くに堪えないやり取りにうんざりしたのか、ラルクはそっと扉を閉めた。
ドアノブを持つラルクがぐすっと鼻をすすりながら、目尻に溜まった涙を手の甲で乱暴にぬぐったけれど、ここにいる全員が見て見ぬふりをした。
──それから数分後。
サロンに戻ってきたメイドがミランダとレネーナが屋敷の敷地外に出たことをフローチェに報告した。
すぐにフローチェは、鏡に向かって声を掛ける。
「終わったわよー。ベルちゃん、こちらにおいでなさい」
鏡越しに呼び出しを受けたベルは、慌てて隣のサロンに移動する。
扉を開けると、大笑いしながらラルクの背中をバンバン叩くフローチェがいた。
「あははっははっはは。あーもー可笑しかったっ。ラルク、あなた最高だったわ! ねぇ、このまま軍人辞めて私の専属モデルにならない?給金は弾むわよ」
「……謹んでお断りします」
言葉遣いこそ丁寧であるが、ラルクは本気で怒っている。
きっとこれが上官の従妹ではなく、女神でもなく、美人でもなく、女性でもなかったら、それこそ張り倒していただろう。
「えっと……あの……ラルクさん、今日はありがとうございました」
フローチェを見ないようにして、ベルは身を挺してミランダとレネーナを追い払ってくれた勇者に頭を下げた。
しかしラルクはベルに目を向けることなく「ああ、着替えしてぇ」と呟くだけ。
確かにその通りだと思ったベルは、小さく「そうですね」と言ってラルクの言葉に同意した。
日暮ミミ♪
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コメント
1件
今回も笑わせてもらいました。ミランダとレネーナがあっさり尻尾を巻いて逃げる展開、痛快でしたね。何より全員がラルクの涙を見て見ぬふりする空気感が絶妙で、そこにフローチェの「モデルにならない?」が被さってくる滑稽さがたまらなかったです。最後のラルクの「着替えしてぇ」に、ベルが小さく同意するところでじわっと来ました。次も楽しみにしてます!