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日曜日、凪子は朝からショッピングへ出かけた。


まずはターミナル駅の前にある家電量販店へ行き、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、そしてテレビを買った。

その後はデパートや家具店を見て回り、ベッドとダイニングテーブルセット、それにソファーを新調した。

マンションを買う為に溜めていたお金を、ここぞとばかりに使う。


凪子は高校時代からモデル業をしていたので、おそらく30歳女性の平均貯蓄額よりも多くの貯金を持っていた。

結婚式の費用で幾分減ったが、それでも同世代の女性よりははるかに多いだろう。

だから凪子は思う存分買い物を楽しんだ。

これから毎晩身体を休めるベッドは、寝心地にこだわりセミダブルの少し上質な物を選んだ。


家具はどれもライトブラウンの天然木のものに統一した。

部屋の雰囲気は、温かみのある北欧風にしようと思っている。


幸い、今の時期は配送の車が空いているようで、家電も家具もその日のうちに届けてくれる事になった。


その他にも、調理器具や鍋類、食器等、とりあえず必要最低限のキッチングッズを購入した。

そして荷物を一度家に置くと、今度は偵察を兼ねて近所のスーパーへ行ってみる。


高級住宅街という場所柄物価はは少し高めだが、野菜も生鮮食料品も全て新鮮な物ばかりだ。

総菜類も、お洒落で美味しそうな物が何種類も並んでいる。

これなら、疲れた時は一人分買って帰れば楽かもしれない。


凪子はすっかりテンションが上がり、これから始まるこの街での生活に心を躍らせていた。


その日の夜は早速自分の為だけに料理をし、新しいテーブルで新居で初めての夕食を楽しんだ。


「ああっ、一人って最高!」


凪子は、あまりにも自由過ぎる生活に感動していた。


離婚すると暗い気持ちに押しつぶされるかもしれないと思っていたが、全くそんな事はなかった。

むしろこれからの生活にワクワクしている。


それに、凪子には仕事がある。

やりがいのある仕事を持ち、自分で稼ぎ、一人で生きていく力もある。

だから離婚によって困る事など何もないのだ。


(これからは大好きな仕事に打ち込める事に感謝しなくちゃね)


凪子はグラスに入ったワインを飲みながらフフッと笑った。



そして月曜の朝、会社へ行く準備を終えた凪子は新しいマンションを出て最寄り駅へ向かった。


(会社の近くで良輔にばったり会う可能性もあるから、気をつけないと…)


凪子は気を引き締めながら会社へ向かう。


しかしそんな予想に反し、凪子は何事もなく無事にデスクまで辿り着いた。

しかし同じフロアには、あの絵里奈がいる。まだまだ油断は出来ない。


始業開始まであと10分という時、凪子の肩を誰かがトントンと叩いた。

凪子が振り返ると、そこには江口がいた。


「凪ちゃん、ちょっといい?」

「あ、江口さんおはようございます。大丈夫ですよ」

「じゃあちょっと休憩室で話すか」


江口が歩き始めたので、凪子もその後を追った。


休憩室へ行くと、何人かの男性社員が朝食を食べていた。

その一番奥の隅の席まで行くと、江口が言った。


「座ってて」


江口はそう言って飲み物を買いに行き、凪子の分のカフェオレも買って来てくれた。


「ありがとうございます」


凪子は早速美味しそうに一口飲む。

江口もコーヒーを一口飲んでから凪子に聞く。


「で、その後どう?」


江口は若干ヒソヒソ声で話す。

凪子も声のトーンを押さえながら答えた。


「一昨日家を出ました。弁護士事務所からの内容証明はもう二人に届いていると思います。あっ、そういえば江口さんがくれた

写真、すごく役に立ちました。ありがとうございます。堀内部長にも先日全てをお話ししました」

「そうか…だからか。いや、この前部長に呼ばれてさ、僕を係長に推薦するって言われたんだ。おそらく良輔の代わりなんだと

思うけど」

「凄いわ! おめでとうございます」

「いやいや、まだ本決まりじゃないからさ。でも凪ちゃんのお陰かもしれない」

「そんな事ないですよ。江口さんが頑張ったからですよ」

「ハハッありがとう、お世辞でも嬉しいよ。でも、良輔はどこへ異動だろうなぁ? クビにはならないだろうけれど、果たして

上がどういう判断を下すのか見ものだな…」


江口はそう言ってコーヒーを一口飲んだ。


「自業自得ですから、同情の余地なしです」


凪子がクールに言ったので、江口は思わず声を出して笑った。


「さすが凪ちゃん。女の人はこういう時強いからなぁ…その点男はダメだね。あいつきっと往生際が悪いぞ」

「でも自分で蒔いた種ですから」


凪子はそう言って苦笑いをする。


「でもさ、本当に気をつけろよ。何もかも失った男は、追いつめられると何をしでかすかわからないからな。今後何か困った事

があったらいつでも言ってよ」

「ありがとうございます。弁護士の先生からも注意するように言われました。部長も心配してくれていましたし。でも何かあっ

たら江口さんにすぐ言いますね」

「うん。凪ちゃんには昇進の恩返しをしなくちゃだからなぁ」


江口はそう言って笑った。

それから少し世間話をした後、二人は自分のデスクへ戻った。



凪子が商品企画部のフロアへ戻ると、隅にいる絵里奈の姿が目に入った。

絵里奈はなんだかげっそりとやつれている。


(フフッ、どうやら眠れなかったようね。派遣の身に300万円の慰謝料はかなり衝撃的だったかな? 貯金で足りない分は実家

の親にでも頼むのかしら? でも一体なんて言って頼むのかなぁ?)


凪子はそう思いながらつい笑みがこぼれる。


(人のものに手を出した代償はちゃんと払って貰わないと)


心の中でそう呟くと、凪子は笑みを浮かべたままデスクへ戻った。

そんな優雅な凪子の様子を、絵里奈はもの凄い形相で睨んでいた。

その視線は、凪子の背中に突き刺さりそうなほど鋭かった。


絵里奈の視線に気づいた凪子は、


(おおこわっ! 呪い殺されないように神社でお守りでも買おうかな…)


その時アシスタントの真野が話しかけてきたので、凪子はすぐに気持ちを仕事モードへと切り替えた。

【ショートドラマ原作】マウントリベンジ

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