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「まあ!お前達!」
華蓮が、腹心三人組を叱咤した。仮にも、一国の王に向かって行うことかと、息を荒げた所、丹厳《たんげん》の、興奮した声が、追ってきた。
「素晴らしい!華蓮様!素晴らしいです!」
池の中に座り込んだまま、丹厳は、にっこり笑うと、これですよ、と、言った。
池に落ちた、丹厳は、そこから見える、中庭の、瀟洒な造りが、まるで、華蓮のように洗礼されている、と、言い放った。
何が言いたいのかと、思いきや、表側の庭ではなく、この、小さな中庭で、茶会を開いてはどうかと、言い出したのだ。
もちろん、このまま、では、やはり、地味過ぎる。そこで、元の造りを生かして、飾りすぎない造園を行えば良い。
そこは、心当たりがあると言い切って、丹厳は、衣から水を滴らせながら、御免!と、姿を消した。
「確かに……まあ……」
「悪くはないのですが……」
「庭を使って……って、ありきたりでしょ?」
そこを、どうするか、なのに──。と、三人組は、ため息をついた。
「しかも、丹厳様に、任せてしまう。と、いうことですわよね」
「……大丈夫でしょうか?」
「危険な賭けだと思います」
あーー!勝算は遠退いたーーー!
と、三人組は、同時に叫んだ。
「確かに、あれこれ飾りたてるよりよいと思う」
華蓮は、どこか、ぼんやりとしていた。
「ねえ、不味くないですか?」
「ええ、かなり不味いですわよ」
「惚れ込んでしまった、って、顔つき。しかも、すべて、言いなり」
あーー!と、三人組は、ため息をつく。
「まあ!勝負は、もう始まっているのよ!皆、しっかりして!」
居る中庭を、見回しながら、華蓮は、言う。
「そうね、言われたように、この庭に、手を入れるのも、悪くないわ。ただし、少し、ひねりは、必要だけど」
華蓮なりに、何か閃いたのか、ふふふと、楽しそうに笑っている。
「では、主な造園は、丹厳様におまかせして、その間、お道具を選びましょう」
「華蓮様!」
と、マヤが、慌てた。
「仔細は了解いたしました。しかし、どのような、場、に、なるのか見えない状態で、茶器等の道具を選ぶのは……」
「選んだ道具に、合わせて、設えた庭を飾り付けるの。安心して、丹厳様にすべて、は、おまかせしないから。最後に、何か、物足りなさが、現れるはずよ」
言って、部屋へ向かう華蓮の姿に、いつもの主《あるじ》に戻ったと、三人組は、ほっとした。
そんな、一行を、見送るように、幾ばくか離れた回廊の支柱の影から、女が視線を送っている。
辺りを見回し、人気が無いことを確認すると、女は、小走りに、去った。
向かう先には、王太子妃、耀我《ようが》の城、後宮がある──。